第81話 雪の日③
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「えっ、だれ?!」
基地の中には先客がいた。基地を知っている幼馴染ではない。むしろ、自分の村でも近所の村でも見たことのない子供が2人、基地の中で寝ていた。
しかも、よく見ると片方はただ寝ているだけに見えるが、もう片方は傷だらけだ。その中でも大きな傷があるのか、身に纏っているボロ布は血で染め上がり、乾いた部分が黒ずんでいる。呼吸はゼイゼイと苦しそうだ。
楓は訳が分からなくなった。なぜ自分と幼馴染しか知らない基地の中で、見たことのない子供が寝ているのか、そもそもこと2人は誰なのか、自分はどうすれば良いのか。訳が分からずその場に立ち尽くし、「あ」だとか「うあ」だとか、とにかく文章にならない声しか出ない。2人に話しかけて起こすどころか、この場から立ち去ることすらできなかった。
そうして何分がたったのだろうか。恐らく実際には二分とたっていないだろう。しかし、楓にとってはその何倍にも感じられた。ようやく体が動くようになり、そのままよろけて尻餅をついた。何度か立ち上がろうとするが、うまく出来ず、そのまま転がるようにして基地の外に出た。縺れる脚を何とか動かし、先ほど通ってきた道を駆け下りる。
山の麓が見え始めた頃、油断したのか自分の右足に左足を引っ掛けてつんのめり、顔面から雪に突っ込んだ。しかも、そのまま数メートル先まで滑り落ちた。
「いったあ……」
「何してるの楓、大丈夫? ほら、手貸すから立ちな。」
顔を上げると、目の前に幼馴染の秋津巳涼がいた。いきなり雪山から滑り落ちてきた楓を不審そうに見ている。楓は5秒ほど呆然としていたが、ハッと我に帰り目の前に差し出された涼の手首を掴み、そのまま引っ張って走り出した。
「えっ、何何何、どこいくの?! ちょっと楓?!」
「いいから!! とにかく来て!」
先ほど登った時よりもなりふりかまってなどいられなかった。何度も雪に脚を取られながらも、何も知らない涼を無我夢中で引っ張りながら基地を目指す。
一方で説明なしにいきなり雪山に引き摺り込まれている涼は、目に見えて動揺して訳の分からなくなっている楓に、自分は何か物凄く面倒なことに巻き込まれているのではないかと、不安に襲われた。
「わかった、ついてくから一旦止まれ! せめて事情くらい説明して!」
協力することをとりあえず承諾し、何とか落ち着かせようとしたが無駄だった。楓は返事をせず、どんどん山を登っていく。涼は何度も引き止めて楓に事情を聞こうとしたが、火事場の馬鹿力か止めることができず、気づけば麓が見えないほど山の中に入り込んでいた。
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