表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白狐の道行き  作者: 大和詩依
第8章 孵化
83/101

第81話 雪の日③

読んでいただきありがとうございます!

評価などお待ちしています!

「えっ、だれ?!」


 基地の中には先客がいた。基地を知っている幼馴染ではない。むしろ、自分の村でも近所の村でも見たことのない子供が2人、基地の中で寝ていた。


 しかも、よく見ると片方はただ寝ているだけに見えるが、もう片方は傷だらけだ。その中でも大きな傷があるのか、身に纏っているボロ布は血で染め上がり、乾いた部分が黒ずんでいる。呼吸はゼイゼイと苦しそうだ。


 楓は訳が分からなくなった。なぜ自分と幼馴染しか知らない基地の中で、見たことのない子供が寝ているのか、そもそもこと2人は誰なのか、自分はどうすれば良いのか。訳が分からずその場に立ち尽くし、「あ」だとか「うあ」だとか、とにかく文章にならない声しか出ない。2人に話しかけて起こすどころか、この場から立ち去ることすらできなかった。


 そうして何分がたったのだろうか。恐らく実際には二分とたっていないだろう。しかし、楓にとってはその何倍にも感じられた。ようやく体が動くようになり、そのままよろけて尻餅をついた。何度か立ち上がろうとするが、うまく出来ず、そのまま転がるようにして基地の外に出た。縺れる脚を何とか動かし、先ほど通ってきた道を駆け下りる。


 山の麓が見え始めた頃、油断したのか自分の右足に左足を引っ掛けてつんのめり、顔面から雪に突っ込んだ。しかも、そのまま数メートル先まで滑り落ちた。


「いったあ……」


「何してるの楓、大丈夫? ほら、手貸すから立ちな。」


 顔を上げると、目の前に幼馴染の秋津巳涼(あきづみりょう)がいた。いきなり雪山から滑り落ちてきた楓を不審そうに見ている。楓は5秒ほど呆然としていたが、ハッと我に帰り目の前に差し出された涼の手首を掴み、そのまま引っ張って走り出した。


「えっ、何何何、どこいくの?! ちょっと楓?!」


「いいから!! とにかく来て!」


 先ほど登った時よりもなりふりかまってなどいられなかった。何度も雪に脚を取られながらも、何も知らない涼を無我夢中で引っ張りながら基地を目指す。


一方で説明なしにいきなり雪山に引き摺り込まれている涼は、目に見えて動揺して訳の分からなくなっている楓に、自分は何か物凄く面倒なことに巻き込まれているのではないかと、不安に襲われた。


「わかった、ついてくから一旦止まれ! せめて事情くらい説明して!」


 協力することをとりあえず承諾し、何とか落ち着かせようとしたが無駄だった。楓は返事をせず、どんどん山を登っていく。涼は何度も引き止めて楓に事情を聞こうとしたが、火事場の馬鹿力か止めることができず、気づけば麓が見えないほど山の中に入り込んでいた。


読んでいただきありがとうござました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ