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白狐の道行き  作者: 大和詩依
第7章 山中の戦い
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第75話 脇差奪取

 刺した者は乱暴に刀を首から抜いた。


 花凛は時羽に駆け寄ろうとするも、後から来た四人に囲まれて身動きが取れない。


 ここに軍服たちがいると言うことは桜羽と草花が足止めを失敗して何人かこちらまで来てしまったのだろうか。


 そんなことは考えたくない。花凛にとって桜羽も草花も頼れる大人で、あとでまた会おうと約束をしたのだ。その二人だって約束をしているのだ。


 あの二人が負けるはずがない。


 ならば私たちが今するべきことは。


「時羽、敵は五人! 私が全部やるから回復するまで休んでて!」


「か、かりん、まっ、て」


 時羽は首を後ろから刺された傷が原因でまだうまく喋れない。無謀にも五人を相手しようとする花凛を止めようとするもうまく行かない。


 一方で花凛は怪我を負っている時羽を守ろうと戦う気は十分で、今すぐにでも相手の首を狙って飛び出しそうな勢いである。


「SN-002、WI-001戻りなさい。戻るのならば今ここであなた方をここで傷つけるつもりはありません」


「嫌だ、嫌だ、嫌だ! 絶対にあんなところに戻ってたまるものか! お前ら全員ここで倒して約束を果たすんだ!」


 軍服側から持ちかけた交渉は決裂した。ならばあとはもう戦って決めるしかない。


「総員戦闘体制、これより捕獲任務に移行する!」


 花凛も戦闘体制に入り構えの姿勢をとる。隙のない綺麗な構えだ。


 動いたのは同時だった。首を負傷している時羽には二名、花凛には三名が囲うように襲ってきた。


「時羽ごめん! そっちにも行っちゃったぁ」


「だいじょうぶ。うごける」


 ここで時羽と花凛が取った行動は回避だった。武器もない。大人もいない。なのに相手は大人で武器を持っている。このような不利な状況下では逃げるという選択肢を教わっていたのだ。


 ひょいひょいと小さな体を活かしてちょこまかと大人たちの攻撃を避けていく。軍服を着たものたちはただ避けているだけだ。いつまでも続かないと高を括っていた。


 だが子供という一見弱者にみえる相手だと、どうも隙ができてしまうようだ。花凛も時羽もそれを狙っていた。いや、正確にいうと隙を見てあるものを奪うことを狙っていた。


「こざかしい!」


 痺れを切らした一人の敵が力任せに大ぶりの一撃を放った方が、避けられて刀が地面を切っただけになった挙句、その刀身を駆け上がってきた花凛に顔面を思いっきり蹴られた。吹っ飛んだ同僚を見て驚いている別の軍服に隙ができた。花凛はその懐に飛び込んで脇差を奪取した。


 あるものとは軍服を着たものたちの腰に帯刀してあって使われていない脇差だっだ。太刀や打刀ならば大きすぎて使えなくても、脇差ならばギリギリ使えるのではないか。そう考えたのだ。


 時羽は上段から綺麗に切りつけてきたその斬撃を避けて、花凛と同じように懐に飛び込み、脇差を鞘から抜いて奪い取った。そして一撃離脱のようにすぐさま相手と距離を取った。


 これで必要なものは揃った。あとはこの邪魔者たちを倒して、集落まで進むだけだ。

お久しぶりです。読んでいたき、ありがとうございます!

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