第70話 狙われた子供達
その威力に息を呑んだのは草花だけではなかった。
槐と共に追撃に当たっていた部下たちもだ。槐は周りのことなんて考えず、ただ敵を屠ることのみに集中する。それこそ金棒に部下が当たってその臓物を潰そうが関係ない。
それを知っている部下たちは一目散に槐から距離を取った。そして、木の影に隠れて草花の奮闘を観戦していた子供達に矛先は向けられた。
「金髪は槐様に任せて俺たちは子供達を捕まえよう」
「槐様の戦いに参戦するよりもよっぽどましだろうさ」
「まて、あの妖力を見てみろ。あれは室長が言っていた藤宮じゃないか? 特徴が一致しているぞ」
「よく見りゃ極端な負の力と正の力だな。あれを捕まえれば大手柄だ! とっとと終わらせちまおう。所詮相手は子供だ!」
軍服の男たちは静かに移動を始めた。気取られないように。音を立てないように。まあ、それも無駄ではあったのだが。
「あーあ、私たち耳がいいから全部聞こえてるのにさ」
「ゆだんしてるならいいんじゃない。ぜんいんたおせばいいだけだし」
「そーだね。護身術とか関節の壊し方とか習ったもんね」
時羽も花凛も気づいてないふりをしながら、槐の部下たちの気配を探る。場所は今ある場所より少し後方に三人が現在読める気配である。
「気配は」
「こうほう、さんにん」
「私が読めたのも同じ」
「まんなかとみぎはわたしがやる」
「じゃあ私は左側ね。早く終わったら手伝うね」
子供達の打ち合わせは終わってしまった。それとほぼ同時だった。軍服の男たちが時羽と花凛に刃を向けたのだ。
「大人しく戻ってこいWI-001、SN-002」
「やに決まってんじゃん」
「いや」
拒否の言葉を皮切りに戦闘が始まった。そしてすぐに終わった。
勝負はたった数秒で終わったのだ。時羽が一人目の鳩尾を力の限り殴り、二人目の首を掴んで倒してから一人目と同じように鳩尾に肘を一発。その間に花凛は高く飛んで軍服の前で一回転し回し蹴りを顔面にお見舞い。そして顔を抑え睨んでくる軍服の股間。つまり男の急所に容赦ない蹴りを入れた。
子供達の道中の稽古で戦闘能力が上がっていたことに加え、子供だと侮っていたこともあり、軍服たちはなすすべなくやられてしまったのだ。
あまりの痛みにうずくまることしかできない軍服その一〜三までにくらべ、子供達は無傷だ。
「まだ生きてるし関節外しとく?」
という恐ろしい会話までしている。
「それでもうごくやつはいるよ。ねえ、あのはきものみて。ひもがある。あれでしばろう」
「いいねその案。採用!」
子供たちはすぐさま不思議な形をした履物を足から奪い取り、複雑に結ばれている紐を回収。その回収した紐で次々と蹲っている軍服の手と足を後ろでに縛り上げた。
「よし、あとは草花だね」
「さっきのところでみてよ。たぶんあとちょっとでおわる」
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