第65話 桜羽VS軍服集団①
「かかれ! ……ぐぁぁっ」
まるでこちらには攻撃は通らんと言わんばかりに余裕綽綽としていた奴等の顔色が変わった。桜羽は翼を持たないのに、跳躍力だけでいともたやすく司令の上をとり、その機動力を担っていた有翼族の翼をへし折ったのだ。
羽をへし折られた有翼族とそれに抱えられていた司令はなす術もなく地面に叩きつけられた。
「次」
空で構えていても一方的に追い詰めることは不可能であると分かった軍服連中は、地に降りることを選択した。次々と有翼族の腕の中から飛び降りる。桜羽の近くに飛び降りた者は落下時の衝撃を利用して攻撃を繰り出すが、全て避けられた。
天には有翼族。地には軍服連中。周りを囲まれ、上空も塞がれた。それなのに、桜羽の暴力的で野生的な笑みは崩れない。
「その程度で私を封じ込める事ができたとでも? はっ、舐められたものだな」
一瞬で目の前にいた軍服に詰め寄ると、その喉元を小刀で掻っ切る。仲間をやられて激昂した他の軍服が刀を振り下ろす。
それを、草花から借りた脇差でいなし、体制を崩したところを狙って首へ一撃。斬られたものたちが次々と倒れていく。深く一撃が入ったものの首は胴体と泣き別れだ。
「こいつ首しか狙わないぞ!」
「我らの仲間を殺して空いたところを一点突破する気か! 絶対に逃さん!」
急所に攻撃を喰らい、戦線離脱した者たちの穴を埋める様に陣形を変える。軍服の数が減るに連れ包囲網も小さくなってくる。
今のところ桜羽は地の軍服のみ相手をしているから、天の有翼族には最初にやられた者以外の被害は出ていない。地の被害は甚大だが、有翼族ははっきりと目で見た桜羽のその強さに畏れをなして手を出そうとは思わない。
彼らは仕事で今ここにいるが、その仕事は捕獲作戦への参加ではなく軍服を着ている者たちを標的のところまで送り届けることだったはずだ。
依頼主からはもし戦闘に参加したければ、参加してもいいと言われていた。久々に体を動かせると殺気だって見たものの、まさか相手がこんな致命傷ばかり狙ってくる化け物じみた強さの女だと知っていたらそんな好戦的なことはしてみたりしなかった。そう後悔している者は数多い。
「さっきお前らの大半はここが墓場だと言ったなァ私は。軍服ども。お前らは全員ここが墓場だ」
たいして大声を出しているわけではないのにどういうわけかよく声が通る。その場にいる生きた軍服は全員今ここで殺されると知っただろう。
恐怖に駆られる者、怒り震える者、そんなことできるものかと嘲笑う者、反応はさまざまである。
ぎゃあぎゃあ騒ぐ軍服どもの声など聴こえないとばかりに、今度は桜羽は有翼族に向かって声を発した。
「空から私を狙ってる有翼族共! お前らの墓場がここになるかどうかはお前ら次第だ! 逃げる奴は別に追わん。逃げたきゃ逃げな。こっちの仕事が減るだけだ」
「見逃してくれるのか……」
「逃げる奴はな。ただし、逃げない奴は容赦しない! 翼をへし折り首元掻っ切って墓場メンツの仲間入りだ。さァ選べ!」
「ふ、不公平だ! 俺らにだって生きる権利はあるはずだ! それなのに俺たちは皆殺し、有翼族は見逃してもらえる。そんなのがまかり通ってたまるか!」
お久しぶりです。読んでいただきありがとうございました!
久しぶりの掲載ですが、このまま連載できるかは微妙なところです。不定期になると思います。
また、この話はプロットもなく勢いで書き始めてしまったこともあり、話のテンポがあまり良くありません。改稿しつつ投稿していくので、いつのまにか章の順番が変わっていたりすることもあるでしょう。それでも読んでくださる方は、今後とも何卒よろしくお願いいたします。




