第61話 索敵結界
各話のタイトル思いつかないからマジで助けて欲しい
「うっえ、まず‥‥‥」
「これは、だいぶ、あれだな」
「随分と攻めたお味で」
「苦味がすげえな」
「……」
正直その場にいた誰もがこれは食用には分類されないものだろうと思った。花凛と桜羽が獲ってきた鳥はそれほどの衝撃をもたらしたのだ。
火を入れたその身は水分が飛びパサパサでおまけに筋が多い。噛めば噛むほど謎の苦味が口の中を満たす。贅沢なことを言ってられるような食糧事情ではないから我慢して食べているが、そうでなければ遠慮したい味だ。
それでも苦味に顔を歪ませながらも一口、また一口と肉にかぶりつく。食べることは生きることにつながると理解しているから、無心で食べ続けた。
「わたし次この鳥みてもぜったいつかまえない」
「賢明だな」
「それをお勧めしますね。ただこの世にはもっと美味しい鳥も鳥料理もたくさんあるんですよ」
同じ鳥という種類でもちゃんと食に適してるものはいる。今は焼くだけだが、煮込んだり、蒸し焼きにしたり調理の仕方も様々だ。
鳥は不味いものと先入観を与えるのは教育的にあまり良くない気がしてる。これを機に鳥に苦手意志を持ってしまったらもったいない。
「宗次郎、手紙は出せたのか?」
宗次郎は鳥が焼けた頃に帰ってきた。村までそこまで距離がないのに時間がかかっていたのは、何か問題があったからではないかと桜羽は少し心配していたのだ。
「珍しく従業員が出払ってたもんで。手紙を受理してもらうまでに時間がかかっちまったんだ。無事出せたよ」
「それは良かった。そうだ、途中で鳥型の使い魔を見かけたが、あれは草花のか?」
「いいえ。鳥型の使い魔はいますけど、今は一匹も使いには出していませんよ。まさか、それ別の追手じゃないですか? 私以外にも派遣された人員はいますから」
「索敵結界を張っているが、範囲内にそれらしきやつはいないぞ」
結界には守備用と索敵用の二種類が存在する。索敵用の結界では張った結界の中にいるものを感知することができる。もちろんどの程度の精度が出るかは使い手の技術次第だし、範囲は使い手のもつ力の量次第である。
桜羽は今最大範囲で索敵結界を張っている。その範囲は広大だ。仮にこの結界の中にいないものが範囲内に侵入してきて、桜花たち一行に危害を加えようとしても、辿り着くまでの時間に荷物をまとめてその場を立ち去るくらいのことはできるはずだ。
「使い魔に関しては一応警戒しておきましょうか。索敵範囲外に主人がいる可能性は捨てきれませんし」
「警戒するに越したことはないな。まあ、飯も食べ終わった。とっとと片付けてここを出るか。その方が安全だろう」
まずい鳥は食べ終わった。あとは体の栄養となることを祈るばかりだ。残った骨は穴を掘って埋め、焚き火の跡を消していく。
「っ! 全員逃げろ! 索敵結界に反応あり、おそらく追手だ!」
「なぜ急に?! 結界内に侵入してきたのならまだ余裕があるはずでは?」
「余裕はない。結界の中にいきなり反応が出てきた。おそらく瞬間移動かあらかじめ索敵結界を逃れるための術を使っていたのかもしれない。くそっ、使い魔を見た時点で一度見回りに出るべきだった」
焚き火の跡を完全に消すのは諦め、逃げる方に集中する。食事に必要なもの以外まとめてあった荷物に、雑に出してあった荷物を詰め込み、何が起きたのかよく分からず右往左往している花凛と固まっている時羽を抱えて集落の方へと走り出した。
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