第49話 襲撃①
息を切らしながら走り叫んでいるのはいくつか前の村で別れた宗次郎だった。その表情は必死で、今にでも地面のへこみに足をとられて転びそうな勢いで走ってくる。道行く人々はぶつかられそうになりながらも避けたり、避けられたりしている。
「もう近くまで来ている! 早く、子どもたちを連れて! 走れ!」
桜羽は反射的に手をつないで歩いていた時羽と花凛を両腕に抱え、地面を蹴った。瞬間、自分の横を通り過ぎ、前に躍り出る影を見た。その影が宗次郎が言っていた軍服ならば、なぜ宗次郎がここまで逃げてこれたのか不思議なくらいな速さで、戦闘特化の桜羽ですら陰でしか捉えることが出来なかった。
桜羽はぶつかりざまに斬りつけられることや、薬剤をかけられること、子どもたちを奪われることなどを警戒して、大きく高く飛んだ。これまで目立つことをして見つかることを恐れていたが、軍服らしき影はすぐ近くまで来ているのだ。もう構ってなどいられない。
空中で子どもたちを抱えた桜羽の体は、反転して頭が地面を向き、両の足は太陽の方へと突き上げられた。そのまま地面を見るとあまりの速さにただの影で陰であったものの正体がようやく見える。
この国ではほとんど見られない金色の髪、自分達を追っている忌々しい軍服。武器は手には愚か腰に刀すら佩いていない。この程度ならばやれる。例え子どもを抱えていたとしても。
着地と同時に一発重い蹴りをお見舞いしてやろうと瞳孔を細めた矢先、あり得ないが軍服から知っている気配がした。だがそれを感じた一瞬が蹴りの威力を下げるわけでもなく、容赦なく知っているであろう気配に空中で一回転して勢いをつけ、重いのをお見舞いした。
相手は吹っ飛んで道の端に並ぶ店に突っ込む。そう予想されたが相手も桜羽の目が捉えられない速度で移動した力量の持ち主だ。腕で受け止めた。まあ、吹っ飛ぶまではいかずとも大分元々立っていた位置からはずれてはいたが。
蹴られた腕の痺れが治った時、俯いていた金色の髪を持つ軍服はゆっくりと顔を上げた。そして重い一撃を打ち込んできた桜羽を見て叫んだ。
「桜羽様ー!! やっと見つけた。私を置いてどこ行ってたんですか! ずっと、ずーっと探していたんですよ!」
「?!」
宗次郎はその態度を見て、自分を追って来た軍服と本当に同じ者なのかと激しく疑い動揺した。自分が必死に逃げ回っていた軍服が自分に向けていた態度と明らかに違いすぎる。
「お前草花か!」
「はい! お久しぶりです、桜羽様!」
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