第36話 薬屋③
書きながら、次の章をもっと早くに入れておいたほうが、テンポが良くなるのでは?と思い始めた今日この頃。
とりあえず、次の章まで完成したら、章の入れ替えを行うかもしれません
やっぱり長編小説は難しいですね。未熟ですみません……
「あら、水が残り少ないね。宗次郎。家で魚の火加減見ながら留守番するのと、水汲みに行くのどっちがいい?」
「ちょっと落ち着きたいから水汲みに外出てくる」
ここらで見ることない髪色と顔立ちの、独特で生臭い匂いの怪しい薬屋。熊を仕留める必要性がなかったから、今まで知らなかった、熊を仕留められるほどの強さを持つと言う母の一面。一旦目の前のことから離れたくなった。
水汲みならちょうどいい。ついでに顔でも洗って少し落ち着こうと宗次郎は思った。部屋の隅に片されていた水桶二つと手拭いを持って直ぐにでも水汲みに行こうとする。
「私もついていっていいですか? 流石にこの生臭い箱にいつまでも薬草入れてるわけにもいかないので」
「おう。自覚があってよかった。ついでにお前さんの着物も洗ったほうがいいと思うぞ。古いのでよければオレの着物貸すから」
「いえいえ。そこまではお気になさらず。予備の着物を持っていますから」
薬屋は箱の外に括り付けられていた布を指差した。どうやらこれは、畳んだ着物を帯で結び、箱に括っているものだったようだ。
薬屋からは離れることはできなかった。それでも話好きな母親がいなければ、そこまで話も盛り上がらず、頭の整理はまあ出来るだろう。
「薬屋さん。川の場所はわかるかい?」
「ええ。数日滞在している間に薬草も探しに周辺も探索しましたので」
「そうか。なら詳しく説明する必要はないな。そろそろ行こうか。ここでのんびりしてちゃ、魚が先に焼けちまう」
案の定男二人、しかも出会って間もないとなると話題なんてあってないようなものだ。お互い無言で、ひたすら川に向かって歩き続ける。
無言なのはいい。供給過多だった情報を整理するには、雑音がないから思考が捗る。けれど、人がいるのに枝葉と土を踏み締める音と、風で森がざわめく音のみが聞こえるこの空間は、思考の整理が進んで余裕が生まれるにつれ、流石になんとなく気まずくなってきた。
この居心地の悪さをなんとかするべく、宗次郎は、薬屋にどうでもいい世間話を振った。
「なあ薬屋さん。お前さん、背負い箱に、全部荷物入れて、括り付けて肩は痛くならないのかい? うちの母ちゃんに頼めば、風呂敷の一枚や二枚譲ってくれると思うぞ」
「確かに、肩とか腰とかに負担はかかりますね。肩こりなんてしょっちゅうですし。でも私、手が塞がるのが苦手なんです。ほら、転んだりした時咄嗟に手が出なくて、顔面から地面に突っ込んだりするかもしれないでしょう。咄嗟に両手が使えないのはあまり好きません」
「確かに。顔面から転ぶのは怖いよなあ。運が悪けりゃ口の中に土入るしな」
「ほんとそれですよ。私、実は村に来てから一度だけ転んだんですよね。盛大に。その時は荷物は泊まっている家に置かせていただいてたので、何も持ってなかったんですけど、転んだのが数年ぶりだったもので、お腹の辺りからどしゃっと。ついでにその勢いのまま顔面もぶつけました」
「ははっ、それは災難だったな」
割と顔が整っているいわゆる美男子に分類されるであろう薬屋が、まるで子供のように転んでいる姿を想像すると、宗次郎は笑いが込み上げてきた。
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