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白狐の道行き  作者: 大和詩依
第2章 妖狐
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第21話 妖狐VS妖狐④

 今回花凛と少女を追い詰めていた軍服集団はただの人間のみで構成されたものだった。一方で少女たちを抱えて逃げた桜羽は妖怪だ。


 人間はこの世界において一般的に最も弱く、最も戦闘力を持たない生き物であり、妖怪や獣人、その他吸血鬼など所謂人外と呼ばれる者たちで人間の血が混じらない純血の者たちが最も強い良いものであるという認識である。


 人間と人外の純血の者たちの間にそれらが共生を始めたことによって生まれ始めた混血の者が存在するが、その力は人間以上人外純血以下程度の間で濃淡を成している。


 祓い屋や陰陽師の様に人外とも渡り合える者や、突然変異なんかで人外の力が強く出たことで、より血に混じり気のない者たちと渡り合えるもの、生活力を犠牲に割り振れる数値が戦闘力に全振りした者など例外的な存在もいるが多数派ではない。


 軍服の者達は逃走者側にとって運が良かったと言うべきか、紫苑以外の全員が持っている身体能力も戦闘力も桜羽とは月とスッポン、むしろそれ以上の差があったと考えるべきだろう。


「しかし、あれらは主人の持つ実験体の中でもかなり貴重なもの。逃がしたことが知れれば、責任に問われるのでは?」


 反する二つの指示に困惑した軍服の部下の一人が、勇敢にも上司の命令に疑問を呈した。


「無駄なことはしなくていいから。そんなこと私は知らないし、死にたいのなら勝手に行けば? あとこれ、室長に渡しておいて下さる?」


 部下の質問に投げやりに答えながら紫苑が渡したのは、「退職届」と書かれた封筒だった。こんな場でそれを手渡された部下は、本当に間違っていないのかと封筒と紫苑を交互に見る。


「私は元々中央所属よ。研究の場を失ったのなら、ここに用はない。どうせここでの研究だって最近停滞気味だったし。中央で仕事しながらさっさと別のを探すわ」


 もうこの場所への興味など髪の毛一本ほども存在しないとばかりに言い放ち、紫苑は桜羽たちが走り去っていった方向とは逆の森へと消えていった。

 

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