瑠璃色を綴ってfarewell…
全てが終わったのだろうか。
クラインで本を収納し、暗い森の中、私は空っぽの彼を担いでいる。彼は私のことを重いと言っていたが、その当人もわりかし重量があった。
歩く。
放浪の旅に出るまでも含めて、こんなにもこの森で長いこと暮らしてきたというのに、暗い木々は棒立ちの巨人のようで、怖い。
歩く。
私はあんなに得体の知れないものを心に示し、今の自分が存在していると納得できても、身近な木々に対する恐怖で心が揺れ動いている。
極限なし。
この星の夜は濃く、全ては0に収束すると思いきや、朝になれば、無限に発散するフリをする。
極限なし。
ふと見上げてみれば、宵は開け、空は丁寧に瑠璃色でペイントされている。
収束と発散の隙間、つまりは混沌の時間帯。
太陽が昇る前のちょっとした魔法みたいな時間。
「彼も、魔法みたく起きてくれればいいのに…」
叶って欲しいと言霊にする。
神様がいるのなら、私たちに祝福を。
「なーんてね」
もうちょっとで図書館にたどり着けるだろう。考えるのはやめて、とっとと惰眠を貪ろう。泥のように眠って、何もかも忘れてしまおう。
空の方を向いていた顔を、地面に縋って下にした。
じんわりと目が熱い。
肩も熱い。ん?肩も熱い?
「うそ…」
肩の熱源の方の正体は、空っぽのはずだった彼だった。ぬくもりと脈が戻ってきている。
担いでいたのをおんぶに変える。
しばらく歩いていると、あくびが聞こえてきた。目を擦っている。
「……ほんっとに貴方は人騒がせね」
さっきとは違う理由のせいで、目がもっと熱い。
だから、わざと彼の顔を見なかった。
彼は寝ぼけていたが、その震える声に眠気が吹っ飛び、完全に意識を取り戻した。
「迷惑かけてごめんなさい…なんて言えばいいか…」
それを聞いて、彼を背中から下ろす。
絶対に振り返らんぞという意志のもと、鼻声で言う。
「いい?そんなぐだぐだ懺悔する暇があったら、自分で歩い
てちょうだい!貴方重いんだから!」
よりそっぽをむいて、左手だけを後ろに伸ばした。
彼は頷いてその手を握った。
二人の先には立派な図書館が。
建物の背後に朝日が昇る。
あーさにはーきーえたーあのうたーごーえをいつまでーもkeyてーたー…ハッ!すみません。ちょっと夢中になって歌ってました。
これにて本編は終了です。読んでいただいてありがとうございました。オマケもありますので、どうぞ宜しく。
(特別誤訳:どろり濃厚ジュース飲んでみたいなって思います。売ってたら教えてください。翼を生やして高野山まで飛んでいきます。)