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魔導図書館のroundabouts  作者: 飯塚 喆
ボーナスシナリオ
11/15

朝の渓谷へドライブにでも。

 少人数パーティで活動する3人の若者たちがいた。

 それぞれ、真面目なグラディエーターのクロート、いつも元気なマーシャルアーティストのラケ、気楽な性格の魔導使いのアトロ。

 彼らは世界を旅し、あらゆる「価値」を探す。

 

 道中、うっかりによって(クロートがアトロに天真爛漫なラケが好きだがどうすればいいかわからないと相談してアトロの手元が狂って………実はアトロも最初は破天荒なラケのことが苦手だったが、少しずつ惹かれていた)、直前に入った国で忠告されていた森に迷い込む。

 名前はない。形容するだけで呪われると言われる黒い森。

 そこで獣とも似つかない大量の目が生えた“真っ赤に溶解した何か”に襲われる。

 手に負えないことがわかり、逃げる3人。

 とある廃屋を見つけて避難すると、そこは何十年も無人だったことがはっきりわかるほど朽ちた図書館だった。

 しかし、奥に進むと妙に魂弴力が強い部屋を見つける。

 硬いドアをなんとかラケの力でこじ開けると、その部屋だけ新品のように綺麗で本が整頓されていた。

 おかしなスペックの魔導書ばかりに興奮するアトロ。その間にクロートはやけに古ぼけた本を見つける。

 本の文字は読めない。

 開こうとすると本が持ち上がり、部屋の真ん中にあった「掌を前に差し出した女神の像」の手元に乗った。

 そして、3人の脳裏にテレパシーが送られる。

 

 テレパシーの中の老賢者はこう伝えた。


『ここを見つけた勇者たちよ。見事だ。だが、悪いことは言わない。今すぐ帰れ。ここに解き放たれたのは『死者の書』より出し、魂を喰らう獣。今は混沌に支配され、身体は溶け出し、無為に暴れておる。わしもこれまで。従ってここに来たものに忠告と手段を与えよう。帰ることを選ぶなら女神の右手を取り、握られた宝物を使い、結界で封じ込められたこの森から脱出を。こっちは禁断の選択肢。左。女神の差し出す元凶である『死者の書』を受け取れ。まだ本は開けてはならぬ。覚悟がなければ本と繋がった獣に喰われるのは必然。諸刃の剣である。時代が進み、この獣の主人がやってきて解決してくれるか、本を見ることの他に方法が発見されていることを祈る。そして、もし、もしもだ。封印が成功したのならここへ戻ってくるのだ」


 クロートは真面目だ。よって左を取った。

 彼らの覚悟を聞き入れた像は舞台装置のように床の下にしまわれた。

 

 こうして彼らの戦いは始まった。

 獣が寄り付かない廃墟を拠点とし、戦闘を続ける3人。獣の前では全てが無駄なように感じて、少しずつ心身ともに疲弊していく。

 この状況を作ったクロートのせいだとアトロ。

 喧嘩を止めるラケ。


「わかった。私だけで倒すから、二人は待っといてくれ」


 と、クロートは獣を探しにいく。

 しかし、クロートが探しにいっている間にアトロとラケは獣に襲われる。

 アトロのあらゆる魔術は効果を示さない。

 一方、ラケも懐に入って拳を叩き込むが、ゲル状の獣の体には効かない。カウンターをくらい、捕まって喰われかけるラケ。

 アトロは隠し技である、「味方に無敵透過を付与した後、対象の敵一体を自爆によって殲滅する最終奥義」をしようとするが、間一髪のところでクロートが帰ってきて止める。

 クロートは責任から、遂に本を開く。

 獣の動きが止まり、その隙にアトロはラケを救う。

 本を開いたクロートは一瞬意識を失い、すぐに意識を取り戻す。半狂乱の状態で。

 残った理性で彼はアトロに伝える。


「うっ…あがぁあああ!!ッ!はぁはぁっ…!俺は…半分魂を喰わ…封印…封印を…もう、だめだ。俺にはもう…だから俺の命、を代価にお前に託…すッ!」


「やめろ!!!!やめてくれ!!!!」


 アトロは叫んで、必死に回復をクロートにかけるが、もうクロートは人ではないものになっていたがために、無駄であった。

 クロートがアトロの肩を必死で掴んで力を送り込む。


 アトロに魔力と謎の魂弴力が流れ込む。

 泣きながら封印の術式を自身の血で描き、封印する。

 成功したが、クロートは骨も残らず、アトロは嗚咽を漏らす。そんな彼をラケは優しく包み込む。

 涙を拭き、立ち上がって廃墟に行こうとする二人。

 アトロの耳元でクロートの声がする。


「あいつ、本当は自分の弱さを見せたくなかったからあんなに元気ぶってるんだ。だからお前が護ってやれよ。」


 アトロは振り返るが、誰もいない。

 寂しく風が吹いているだけである。

 でも、その虚空に向かって震える声で返事をした。


「………うん」


 数年後。近隣国からの土地の所有権を認めてもらえたアトロは図書館と森の結界を改装し、ラケとの間に二人の娘をもうけ、幸せに暮らしていた。

 姉のテレスは穏やかな性格。逆に妹のアリスは、はっちゃけた性格で昔のラケによく似ている。

 テレスが16歳の時だった。

 ラケが突然倒れた。

 アトロは元々医療系魔術が得意だったので、何が起こったのか調べてみると、体の中が包帯になって解けていくという奇病になっていることがわかった。

 さらに詳しく解析すると、この病は上級の呪いレベルの魂弴力がかかっており、不治の病というべきだった。

 実は、ラケは本の中身を少し見てしまっていたのだ。魂が欠けたわけではないが、呪われたのは間違いない。

 真っ白なベットで横になるラケは泣きそうなアトロの頬をさすった。


「私、貴方とクロートのおかげで冒険できたし、今があるの

 よ。これ以上に幸せなことはあんまりないと思うの。あと

 ね、私がいなくなっても貴方はいつかまた私に会えるっ

 て。そんな気がするの。だから泣かないで」


 病気を治す方法は見つからず、倒れてから3年。体が全て包帯になって、妻は先立った。

 テレスは独立し、アリスは父との折り合いが上手くいかず、出ていった。

 しばらく一人で図書館を運営していた。そんな折だった。

 アトロは少しめまいがして、壁に寄りかかった。

 ゴホッ!と何かが口に出される。

 真っ赤な鮮血だった。

 己の血を使って封印をした彼は、魂のレベルで理解した。


 ()()()()()()()()()()()()()()()ことを。


 封印が不完全だったわけではなく、獣が成長している。

 さらに結界と封印術式の強化をしなければと、封印した場所へ向かう。

 現場では、術式が薄くなってきているのがわかった。

 自身の腕をナイフで傷つけ、血の量を増やす。それでも、ほんの少しの紛らしにしかならない。

 歳をくって全盛期よりも遥かに衰えているアトロは急に不安になった。

 まだ作業中だったために変に力が入る。負の魂弴力が混じってしまった。

 と、術式から魂が浮かび上がる。

 威厳のある純粋な魂魄。獣の本質。

 アトロは意識せずに図書館へ走り、人間の身体の生成書を引っ張り出して製造し、そこに魂を封入した。

 本来はこんな非人道的な、いわゆる黒魔術は行うことは決してないが、そうしなければならないような気がしたのだ。

 青年の形をした人間のようなものは、とても獣とは思えないほどに無邪気だった。

 アトロは彼になんとなくでルーインという名前をつけた。

 教えたことはすぐに覚えてくれるし、何より一緒にいて楽しかった。

 アトロは彼に対して息子のように接した。

 ある日、また血を吐いた。

 ルーインはアトロに向かってこういった。


「図書館は大切ですが、自分のしたいことをした方がいいと思います。僕は父さんが無理しているようにしか見えない。前言ってた放浪している娘さんを呼び戻して継がせましょう。貴方はもう十分やりきった。だから、どうか自由でいてください。封印はもう意味のないもの。僕という存在がどうにか今、本体と拮抗しているだけです。いざとなったら娘さんを逃します。ので…」


 最初は断った。ルーインもアリスも死なせたくはない。

 なんなら、自分が犠牲になればそれで…

 そう…思っていた。

 だがある時、夢を見て気が変わった。


 夢の中で妻の…声がした。


「貴方、約束の時が来たのよ!迎えに来て!」


「でも封印が…」


「大丈夫よ!あの二人のことならきっとどうにかなるって信じてる。呪いは信じることで打ち破れるわ。」


「……………」


 念のために封印の同期をルーインが引き継ぐと申し出た。

 あれは体力を削るものなので渋ったが、ルーインの押しが強く、仕方ない引き継いでもらった。

 そして、どうにか娘と連絡がつき、図書館を託した。あのルーインがいるから大丈夫だと信じて、アトロは妻を探す旅に出る。

 



 森の外に出ることはないことはなかったが、冒険なんて数十年ぶりで、ところどころ地形すら変わっている場所があった。

 正直、はっきりとした妻の居場所はわからない。

 だが。

 魂の赴くままにひたすら地面を踏み続ける。国を超えては山を抜き、川を横切り、海を渡る。

 月の美しい夜に、連なった島を風に任せて進めば、地の果てともいえるのであろう、イグサの生える野原へと辿り着く。

 そこは、本来ならば絶対に人のまま立ち入ることはないはずの平和の葦原。無限の霊界。

 魂を喰らう獣が封じられた奇跡によって紡がれた運命の糸と因果。

 

 ……向こうから。誰かがやってくる。


 白いベールに身を包み、聖なる気配を醸し出している。

 透き通る肌に銀の髪。

 

 誰だ?

 

 もちろん、僕は知っている。知らないはずがない。

 容姿は全く違っても、魂が記憶している。


 (ラケ)だ。


 彼女は僕が何か言い出す前に笑って言った。


「帰ろっか!」


 僕の手を引っ張って野を後にする。一瞬の出来事でびっくりしたが、僕も笑みが溢れ、彼女に追いつく。

 残ったのは、綺麗なイグサの大地と月だけ。

 

 それから、また1年くらい経った。

 封印がやはり心配なので図書館に戻ろうという考えもあったのだが、ルーインに止められた。

 危険な森には入らずに、どこかの安全な国で家族水入らずで過ごしてほしいとのこと。

 テレスには会いにいったので、事情は理解してもらえたのだが、アリスにはいつ説明したらいいかな…

 あ、そうそう。やはりラケ曰く、クロートはあの場所には探しても見つからなかったそうだ…

 そして、唐突だが新しい家族ができた。息子だ。

 初めて顔を合わせた時、確信した。

 彼の生まれ変わりというか、魂の残滓というものを感じた。彼が最後に僕に託した魂弴力のカケラがまだ生きていたのだ。

 当然、ラケも気が付いていたようで二人で顔を見合わせ、名前を与えた。

 

 「クロート。それが名前。」


 ラケは人間だった時と性質が変わったようで、生まれた息子にもそれが引き継がれていた。というのも、たった2年で人間でいう7歳程度の成長をしていた。

 とても好奇心旺盛で元気あふれるいい子だ。

 いろんな話を聞かせて!とねだってくる。昔話とか絵本を読んだり、あとは…今は遠くにいるお姉ちゃんのこととか…

 まぁ結果としてお姉ちゃんに会いに行きたいと言い出す羽目になった。

 テレスは前に合わせていたが、アリスはまだ合わせていなかったのでアトロは息子とおよそ4年ぶりに森へ赴いた。

 ルーイン曰く、封印は強化したのであと数ヶ月は持つらしい。ちょうど所用でアリスは外出しており、妻を一人にすることもできなかったので、ルーインに息子を預けて帰った。


「じゃ、いい子にしてるんだぞ!迎えにくるからな!」


「うん!パパつれてきてくれてありがとう。あとさ、なんかよくわからないけど、今までママのことまもってくれてありがとう!」


「……っ…………」


 アトロは息が詰まりそうだった。表情を見られないように息を殺して、何も言わずに背中を向ける。後ろは振り返らない。ただ、息子とルーインに挨拶がわりのサムズアップだけをして帰路についた。


 アトロが去ったあと、ルーインとクロートは会話を重ねて仲良くなっていく。

 数時間して、アリスが帰ってくる。

 ルーインはサプライズとしてクロートに図書館の裏の離れに隠れてもらい、いつもと同じ様子を取り繕う。だが、合図をしに離れに行こうとした時、お客さんが来てしまいタイミングを逃してしまう。

 やがて辺りが暗くなり、クロートはルーインが合図を送ってくれないので、気になって外に出ると…

【あぶれちゃった本編設定】

・本編(roundabouts)では最初にアトロが森に足を踏み入れた時よりも結界自身も弱っており、図書館も獣に襲われた。

・ルーインは結界強度をちゃんとあげていたが、獣の成長スピードが早く、完全に彼の誤算だった。

・なんかよくわからんが生まれ変わったラケは強力な未来視を持ってる。だから、本編でフツーに息子が危険な目に遭うのを知ってたが、図書館行くのオッケーした。

・他にもいっぱいあるけどわざとカットしてます。

【執筆誤記】

チープな感じでごめんなさい。品質向上は無理だ。頭ン中に細かい情景描写はありましたが背景を伝えたかっただけので、ほとんどDieジェストなのと説明や心情の書きが不十分です。ま、この作品見終わった人へのオマケシナリオなので許してちょ。

→ To be Continued(嘘) ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃちゃん♪ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃちゃーん♪環状交差点になる〜♪

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