青い虎
青虎
「……?」
「大丈夫!何も持ってないよ。怖くないよ。
ほーらほらほらおいで!」
何も持ってない事を示すべく
手をグッパーと握る。
それでも虎はこっちに来ない。
何でだろ?折角の虎なんだから触りたい。
一回触ってみたかったんだよねー。
にしてもこの虎別嬪さんだなー。
綺麗な毛並みが光に反射してキラキラしていて
触り心地が良さそう。
青虎
「ガルルルルルル…ッ」
ガルルルって言ってて可愛いー!
喉鳴らしてるのかな?
あっもしかしてこっちに興味があるの?
私もあるよ!
だからおいで!
「可愛いねー!もふもふだねぇ。
触らせてー!」
青虎
「……。」
いくら言っても来てくれない。
んーやっぱり野性の虎っておやつないと来ないのか。
「もー。なんでこっちに来てくれないの?
私から行っちゃうよ?良いのかー?」
手をワキワキすると
虎は前屈みになった。
おっ逃げると思ったけどこれはこっちに来てくれるかな?
よく虎って頭撫でて欲しい時とか
こうなるよねー。
……あれ?それは犬だったっけ?
まあでも犬も猫も関係無いよね~。
可愛いから。
よしじゃあ触りに行こう!
としゃがんだ体勢から立った時。
何処からか人の声が聞こえた。
?
「お前は馬鹿か!!!」
その声と同時に虎がこっちに
襲い掛かってきた。
その瞬間私の目の前に誰かの背中があって、
驚く暇もなく森中に獣の声が響いた。
青虎
「ギャオンッ!」
その声を最後に辺りは静まり返った。
……えっ…、何が起こったの?
目の前に居る誰かの高い背中の横から
前を覗きこむとさっきの虎が倒れていた。
うわでっっか。何この虎。
どっから来たの?
ここは動物園だっけ。
あれ?いや、私今動物園に居ないよ。
あれ?
少し混乱していると
目の前の男性が振り返った。
うわ、美青年だ…。
その青年はこの世のありとあらゆる美を
詰め込んだかの様な美青年だった。
凄い。頭痛と目眩がする程の
美青年今まで見たこと無い…!もしや芸能人!?
でも見たこと無い人だなあ…。
こんなにイケメンなら有名な筈なのに…。
美青年
「っっの!馬鹿!!
魔獣に手招きする馬鹿が何処にいんだよ!!」
耳がキーンと成る程の怒声が
頭に響いた。
凄い。ここまで美形になると
顔を見るだけで耳も痛くなるんだ。
「イケメンしゅごい」
美青年
「…はぁ?………お前顔真っ赤だぞ。」
顔真っ赤?
そりゃそうだよイケメンが前に居るんだよ
誰でも顔は赤くなるよね。
?
「アルラ!いきなり走り出さないでくれ!
只でさえ広いのに見失ったら……。
そこの女性は……。」
と、今度は左からイケメンがやってきた。
そっか。ここはホストか。
料金いくらだったっけ。
手持ちいくら持ってるっけ。
凄くイケメンだから指名料高そうだなあ…。
?
「…そうか。もうアルラも22だものな…。
女遊びも良いが、お前にはフィアンセが
居るんだ。バレない様にしろ。
ましてや今回の様にギルド任務中に
逢い引きする等、もうしてはいけないぞ。
今回は見付けたのが俺だったから良かったものの…。」
アルラ
「ちげーよ!!!!
逢い引きなんかするか!!
この女がブルータイガーに
襲われそうだったのを助けたんだよ!!」
あぁ?なん、だろ。
イケメンが、歪み倒す??
なんかイケメンだから顔がスマッシュしてる……。
ここ冷蔵庫だっけ。なんか寒い。
もう冬か。冬眠しないと…。
頭がグラグラして痛くなって
目の前が歪む。
回って回って………気持ち悪。
そこで私の視界は真っ暗になった。
?
「…ブルータイガーが倒れているし本当の様だな。
すまない勘違いをした。
そちらの女性も_」
ードサッ
?
「っ!?どうした!!」
アルラ
「あ゛あ!?おい女!!
大丈夫か!起きろ!!」
眼鏡を掛けた男性が少女を抱き起こし
額に触れた。
?
「…異常に熱い…。これは熱中症だな。
早く涼しい場所へ向かうぞ!」
アルラ
「ああ!」
そうして少女は
抱き抱えられ、この森を去った。
自分が何のために
ここに来たのかも知らぬまま。