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チェス盤の準備その2

「爺が死にやがった」

 見るからに軽薄そうな黒髪の耳にピアスを付けた男はそう言うなり、手にしていた携帯電話を黒革のソファーに投げ捨てた。

「いきなりリーダーを失ったということか。忍姉がどんな顔するか…」

 男は学生らしく制服姿だった。ソファーに腰掛けると、天井の明かりを見上げながら目を細めた。


 この戦いで俺は全てを手に入れる。爺は死んだ。ざまあみろだ。元より天上に到れるのはたった一人だ。厄介な相手が消えてくれてラッキーだったぜ。男はそんなことを頭の中で呟きながら携帯の着信を確認した。


「忍姉はまだ部活か…」

 男が両手を上げて欠伸をしていると、そこに一人の線の細い少年が現れた。背丈は男よりも少しだけ高く、肌は色白で、まるで女のようだった。しかし、骨格は男子のソレだったので、遠くで無ければ、それが少年であることは容易に検討が付く。


「ロキ…」

「圭一よ。何を落ち込んでいる?」

「貴様には関係ない」

「いや、あるだろう。私と貴様は言わば運命共同体だ。私が死ねば貴様も死ぬ。貴様が死ねば私も死ぬ。全く呪われた因果よなぁ」

「俺は隠れているから死なないし、お前は最強の神様なんだろ。死ぬはずは無い」

「最強か、そんなもの私には興味が無い。強さを競うのは下賤の者の特権だ。私はただそう言った連中を愛でるだけ」

 

 ロキは自身の白い絹のような前髪を手で軽く触れた。

「既に役者は揃いつつある。南西に2体、北東に3体、神の気配がある」

「忍姉の召喚したアテナと爺のオーディン、竜禅神社の神主が呼び出した神が一体いるはずだ。透と由香はまだ呼び出していない筈だから、残りは敵だな」


 圭一は言いながら、内心ロキを忌々しく思っていた。獅子身中の虫とはこういう男を言うのだろう。別名トリックスターと呼ばれるこの悪神は万事気紛れで行動する。臍を曲げられれば殺されるのは自分かも知れない。そう思うと彼は恐ろしくて仕方が無かった。反面、頼もしくもある。


 彼の所持している神器はいずれも一級品であるばかりか、他の神が持っている神器も彼が作成したものが殆どである。己が生み出した神器が己自身を滅ぼすことは無い。彼は無敵だった。


「おい、お前の渇望を聞かせろよ」

「渇望?」

「ああ、あるんだろ。じゃなきゃ召喚に応じたりはしない。お前は自分の運命に満足していないのさ」

「私に渇望は無い。だがそれでは貴様は納得しないだろう。だから教えてやる。楽しむためだ。貴様ら下賤の者共が神々をパーツにしてつまらぬ計画を立てているようだが、その幼稚な計画の末路を見届けてやることだ」


 ロキの言葉に圭一は苛立ちを隠せなかった。封神計画は一族の悲願である。神々同士を戦わせ、敗れた神々は封神台に収められ文字通り「封神」されるのだ。そして己が契約した神を除く全ての神々を封神した時、封神計画は完了する。その先に何が待っているのかは分からない。一度足りとも儀式が成功した試しは無いからだ。


 圭一の祖父鳳仙の話によれば、封神計画が成功した暁には人は天上に至り、契約した神は己が願い、つまり渇望を叶えられるという。しかしそれは一族を焚き付ける為の嘘かも知れない。未だに誰も封神計画を完終できていないのだから、そう考えるのも無理は無いだろう。



 

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