爺と勝負!
「誰じゃ?」
扉の奥から歳をとった爺さんが出てきた。
「あ?ああ、俺は神木隆二だ。」
「むっ。お主何者じゃ?その手の形、確実に強者じゃなあ?」
ぎくっっ!この爺、ぱっと見でわかるなんてプロじゃねえか。
「今はそんなこといいだろ。とにかく勝負しろ。」
「ほっほっ。舐められたもんじゃ。いいだろう。ただし、怪我しても知らんぞ。」
鉄剣を渡された。剣を持ってないことを察してくれたんだろう。
この爺、殺気込めてやがる。殺す気か?
「それじゃあ行くぞ。」
「縮地。」
爺との間合いを詰める。まだ相手の剣は動いていない。微かな殺気を感じてるのか。
「二連撃!」
二つの刃を爺に向けて放つ。爺との距離は近い。これは防げないだろう。
「はっ!」
「なっ!」
あの距離で刃を弾く!爺、めちゃくちゃ強いじゃねえか!
「四連撃!六連撃!八連撃!」
合計十八連撃。でもこれじゃあ駄目だ。もっと速く!力強く!
「最大連撃二十四連撃。」
連撃はとても体力を使う技。これが限界だ。
初めの合計十八連撃は難なく防がれた。二十四連撃を放った時は驚いたようで一連撃だけ爺に当たった。
「ぐっ。小僧のくせにいい筋しておる。一撃一撃が重い。」
連撃は攻撃力が低くなるにが普通だが、修二にとってそんなことは関係ない。
「わしもちょいと力を出さんとなあ。梅乱流 乱れ咲」
爺の剣が見えなくなる。
速い。何かが来る。体がそう本能を告げる。
突然、目の前に刃が見えた。その数、200。
二百連撃?嘘だろ?
「くそっ。重い、速い。もっと、もっと、もっと速く剣を振り捌く!」
とたんに、スピードが上がった気がした。
(行ける!)
「うおおおおお!」
刃の数は減っていく。でもその分、また新しい刃が出てくる。
(もっと、もっと俺に力を!)
さらに剣捌きスピードが上がる。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
どんどん刃の数が減っていく。
「これを全て捌くとはなんて強者。」
「あんたも強えだろ。」
「ははははは!面白い。」
ちっ。このままじゃあ負ける!
「精神集中 我流 超連撃」
コンマ数秒で五百連撃を作る。異世界に来てから筋力が上がったためか、めちゃくちゃ速く剣を振り捌くことができるのだ。
「は?おいおい、そんなことしたらわしが死んじまうだろ!」
そんなこと言ってる間に刃の数は増えていく。
「じゃあ必死で守れよ。」
「奥義 二百連撃」
「遅え。もっと速く捌け」
爺の剣捌きはだんだんと遅くなっていった。
「お主、強いのこりゃそろそろ本気ださんとダメじゃな。乱れ桜 奥義 瞬刃」
は、速っ!コンマ数秒どころじゃねえ。数ナノ秒のレベルだ。
くそ!どうする……対抗できる技…そんなものはねえ!模擬するしかねえか
深く息を吸え……相手を見据え……剣を振る
刃が目前まで届いた。
「瞬刃!」
「は?お主、見ただけで!」
行ける!でも少しでも失敗したら確実に死ぬ。同じだけ刃を作って爺の刃にぶつける。爺の力より弱かった時点で俺の体に刃が刻まれるだろう。殺意を極限まで高める!
「その殺意の濃度の高さ!わしの全盛期より強い!」
もっと、高める。
親父が言っていた。
「もう立派に剣を使えるのか!凄いなあ!」
「なあ、父さん。もっと強くなりたいんだ。どうすればいい?」
「うーむ。もうその域に達したか。それでは教えよう。よく見ておけ。」
「え?な、な、何………これ?」
全身に恐怖感が走り回った。
「これは殺気というものでな。闘う気がとても強くあれば出すことができる。」
「へー。」
「あと、これはとても重要なことだが、殺気を極限にまで強めると死神の域に入ると言われている」
「父さんは出来るの?」
「残念ながら出来ないんだ。でもこの家系の初代当主は出来たらしいぞ!初代当主の強さはおかしかったらしいぞ。」
「俺はその域に入ってみせる!父ちゃんを初代当主を超える英雄になる!」」
「お!その勢いだ!頑張れな!」
………殺気を極限まで高める………
「ふー……」
(こいつに勝ちたい。見たところ、本当の実力はまだ隠しているようだ。)
極限状態………殺気を高める…………
小さい頃の夢だった「英雄」。困っている人を助けたい。その一心だった。俺はこんなとこで倒れちゃダメなんだ!どうにかして現実世界に戻る!そのためには強くならなきゃだめだ。昔、手を差し伸べ無くて助けられなかったことをまた繰り返すのか!
強くなる……強くなる……
「おぬし、どこまで殺気を強める気じゃ!そこまで行くともう、神の域に達しているでは……な、いか!」
「一撃で仕留める!」
地面を蹴って走った。
「見えない!なんてスピード…」
(この小僧、ここまで極限状態に深入りするとは。禍々しい力を胸の奥に感じる。しかもこの力が解放されたら、この国なんてこの小僧たった一人で滅ぼされるだろう。)
「うおおおお!」
「「「カキーーーン」」」剣の鉄が擦れ合う音がこだまする。
「ぐぬぬ。こんな小僧に負けたくはない。だがおぬしはわしよりつよい。わしの負けじゃ。」
爺は深々とおじきをする。
「ほー。やっと勝てたぜ。なかなかしぶといなあ。」