漫才「屋上」
漫才19作目です。どうぞよろしくお願いいたします。
この作品は、youtubeにも投稿しております。
ビルの屋上。ドアを開けて客が屋上に出て来る。
客 「矢印に従って進んで来たら、とうとう屋上まで来てしまったけど」
辺りを見渡す。
客 「あっ、あったあったコンビニだ。嘘じゃなかった、本当にあったんだ」
店の中へと入っていく。
客 「こんにちは」
店員「いらっしゃいませ」
客 「一階でコンビニの看板を見かけたのでビルの中に入ってきたんですけど、まさか屋上まであがってくることになるとは思いませんでした」
店員「他所ではなかなか見かけないでしょう」
客 「初めてです。なんでまた屋上で? コンビニといえば、一階で営業するのが一般的ですよね」
店員「ここは一等地ですからねえ、一階は家賃が高くて入れませんでした」
客 「多少家賃が高くとも、一階のほうがお客さんの入りがいいと思いますけどねえ。お客さんたち、屋上まで来てくれます?」
店員「エレベーターを乗り継がなければなりませんから、途中で引き返してしまう方も多いようですね。やっとたどり着いたお客さんも、二度といらっしゃることはありません。一回で懲りてしまうんでしょうね」
客 「それじゃあ商売にならんでしょう。いくら安いといったって、家賃を払うためには稼がなくちゃなりませんよね」
店員「もちろん稼ぎはあります。商売になるからこの場所で続けていられるんです。オープンして二年になりますが、売り上げは上り調子でして」
客 「それはすごい」
店員「ほら、あっちにヘリポートが見えますでしょ。あそこを利用するお客さんたちが、お得意さんになってくれているんです」
客 「ヘリポート・・・いったいどんな人たちがやってくるんです?」
店員「自衛隊の人たちが多いですかね。演習の帰りにここに立ち寄ってから基地に戻るんだそうです」
客 「帰り道と言えば、まだ任務中ですね」
店員「ええ。使用した弾薬や備品を補充するのが目的です。ロケットランチャーが売れ筋になっているコンビニは、うちくらいのものでしょうね」
客 「普通はドリンクか軽食が主力商品ですよね」
店員「もちろんそういった商品を購入くださるお客さんもいます。ロッククライマーの方々なんかがそうですね」
客 「外壁を登ってくるということですか? まさかそんなことはないですよね、 ははは」
店員「このビルが練習に丁度いい高さらしいんですよ。水分と栄養補給をしながら上り下りをしていますね」
客 「あっ、なんか飛んできましたよ」
店員「ドローンです。どこから飛んでくるのかは知りませんが、おそらくはこのビルの下の階とか、近隣のビルのお客さんのものだと思います」
客 「はあ」
店員「ぶら下げられた籠に、買い物メモと代金が入っていましてね。品物とお釣りを乗せてあげると、帰って行くんです」
客 「驚いた。屋上でも、なんとか商売になるものなんですねえ」
店員「これは穴場でしたね。むしろ繁盛しているくらいなんですから」
客 「日向ぼっことか、洗濯物干しとか、利用方法が限られていましたからねえ。家賃を抑えたい場合には利用する価値ありですね」
店員「そうですよ。ほら、あそこに交番があるでしょ。やはり地べただと家賃が高いからということで、ここに移ってきたんですよ」
客 「なるほどね」
店員「来月には立ち食い蕎麦屋がオープンすると聞いています」
客 「ほお、飲食店までもが・・・」
店員「だって都心は地べたも地下も開発が進んで、すでに飽和状態でしょ」
客 「確かにそうですね。これからは屋上の時代になるのかあ」
店員「いずれ、地下鉄やデパ地下も屋上へと進出してくるんじゃないでしょうか」
読んでいただき、どうもありがとうございます。