巨乳美少女に斜位を告げる①
視力測定。
それはあくまで目の足りない能力、過剰な能力を補うための測定作業になります。
少し乱暴な物言いをしますと、服の丈を詰めたり生地を足すための採寸作業.......ということらしいです。
マスターが言うには、手足の長さなどを計るのはだれでも練習すれば簡単だけど、そこからどれだけお客様の要望に合わせられるかが経験.......だそうです。
残念ながら...私にはまだ難しいです。
「リコくん。検査のコツは、人と違うってことと人と同じってことを理解することですよ」
朝の勉強でドヤ顔のマスター、生粋のメガネバカでいらっしゃいます。
「マスター.......そういう物言いは胡散臭いです」
「えっと、そうですね。お客様が他人だから大丈夫って決めつけたり、自分と同じなら大丈夫って思い込みが危ないといいますか.......」
「.......つまり?」
「みんな違ってみんないい!です」
「マスター.......おっさん臭いです」
たまに物言いが理解できないのは、育った環境と言うよりマスターが変人だから.......と言うのが私の見立てです。
なんにせよ実践あるのみなんだと思います。
「リコくん? 涙腺がね? 年齢と共にゆるくなりますからね? ほら.......目から汁が」
「無闇に粘膜から体液を漏らしてるんですね。汚らしいですね」
「言い方ッ!!?」
何やら禅問答の様な話に私は混乱させられますが、教えられた視力測定の流れを確認しますと。
1 裸眼の視力を確認。
2 片目の大まかな度数をかけて、次にブレ(乱視)の測定から改めて片目の視力を決める。
3 反対の目を同様に測定。
4 両目で視力を確認
5 両目で視力が上がるか確認し問題なければ、それを完全な矯正とする。
そこからお客様の要望に合わせて調整をするらしいのですが、残念ながらまだここまでしか私はできておりません。
今度ココを捕まえたら練習台にしましょう。
ただ、せっかく私もやる気ですのに、今朝からマスターを2度ほど練習台にしたあと、今はお昼の買い出しに出て行かれました.......つまらないです。
「誰か良い練習台は来ませんかね」
嘆いても誰も来ないのは仕方ないのないことですね、マスターの椅子に三角の角材でもつけて簡易三角木馬でも用意しましょう。
幸い眼鏡屋はネジには困らないことですし、女子力アップのために巷で噂のDIYという行為ですね。
DEVIL (悪魔) INJURY(怪我) YIELD(屈服)の略だと思われますが、世に言う女子力の研鑽に手は抜けません。
特に男性を手玉に取る女子力の高い女性を「男殺し」と言われるそうですが、そこまで私はたどり着けるのでしょうか。
いえ、弱音は吐きません。
マスターの見ていたブログにも、日々の努力が大事と書かれていましたからね。
今日も1日手が抜けません。
そうこうしていると、店の扉のすりガラスに人影が.......
マスター.......ではないようですね。
何やら話しこんでいる.......座りましたね。
あっ立ち上がりました。
3名様のようですね。
お1人が逃げようと.......捕まりました。
..............そろそろお出迎えしましょうか。
そう思い、私は店のドアを開けてお客様を招き入れることにしました。
「いらっしゃいませ、フクロウ堂へようこそ」
.......デカいです。
扉を開けたら、また扉かと思ったほどの巨体。
「あら、オンクさんじゃないですか」
「あぁ、リコちゃん。おらもお店にお邪魔してええか? 」
顔を上げると単眼巨躯の牛乳屋のオンクさんでした。
「えぇ、どうぞ。こちらの方はお連れ様ですか? 」
「あぁ、そうだ! おらの兄のドンタクだ」
紹介されると、扉より一回り大きい三目は軽く会釈をされたので、私も腰を深く折りお辞儀をさせていただきます。
「それで、このちっこいのが妹のナルンだ」
「初めまして.......」
「.......は、初めまして.......」
.......大きいです。
2人の巨人の後ろから見えたのは、身長も年齢も私と同じくらいの人間の様な少女でした。
ダークブラウンのボブヘアーに、膝下までのズボンの可愛らしい方ですが.......胸が凶悪です。
「ビックリしたろぉ、うちのナルンは小せぇからなぁ」
.......いえいえオンクさん、あなたの妹のナルンさんは驚異的な.......あとで、大きくする秘訣でも聞きましょう。
「立ち話もなんですから、店内へどうぞ」
少し窮屈そうですが、3名様をテーブル席に案内させていただきました。
椅子も4脚ですが、私は改造椅子を壁に寄せて立つ羽目に、仕方ありません。
「それで、今日はどうされたんですか? 先日は市場にも来られなくて、心配しましたよ」
「あぁ、すまなかっただ」
オンクさん達の集落は、この海沿いの街セアポリスより少し離れた山の麓にあります。
酪農を生業とされていて、私たちもいつもお世話になっていたのですが、ここ数日は市にも来られてなく、気にはなっておりました。
「いづも妹が世話になっでまず。」
三つ目のお兄さまのドンタク様ですが、オンクさんと同じ巨体に三つ目、初対面なら間違いなく食べられるかもと身構えてしまいそうです。
実際、そう言った外見の勘違いからの軋轢を避けるために離れた地域で住まわれる心根の優しい方々なんですが.......
「それでな、リコちゃん。今日は妹のナルンのこどなんだが、メガネを作ってくれねぇか?」
ドンタク様はまた黙ってしまわれ、オンクさんが話を初めました。
オンクさんが仰ることには、ご兄弟のご両親は父がホビット、母がギガントと異種婚をされたらしく、ナルン様はお父さん似だったものの、小人と巨人のちょうど間で人間サイズになられたそうで、れっきとした肉親だそうです。
ただ、家業を手伝っていたものの、やはり人の大きさのナルン様は、巨人と比べては作業の効率がよくなく市への出店をナルン様に代わり、オンクさんが家業を手伝うと話し合いをしたそうなんですが.......
「実は遠くがよく見えてなかった.......と」
ナルン様はこくこくと頷いておられますが、ドンタク様は心配そうにされてます、顔は怖いですが家族思いの方のようですね。
「んだ、帰りなんか暗くなったら、おら心配でな。それを悩んでたら、昨日ココちゃんが家まで牛乳買いに来て、リコちゃんに相談しろって言ってくれてな」
なるほど、そういうわけですか。
ただココも吸血鬼なのにサングラスを手に入れてから、日に日に行動範囲が広くなって.......そのうち国内八大都市全て周りかねませんね。
「そうですね、ではナルン様。あちらの測定室で視力の測定とお話をさせていただきますね」
「あ.......はい...」
オンクさんとドンタク様はテーブルでお待ちいただいて、ナルン様を測定室へ案内するのですが、立ち上がるだけで存在を主調する胸部.......牛乳の力でしょうか。
冗談はともかく、ご兄弟で1つ目2つ目3つ目と違うのは珍しいですが、巨人族の方は容姿に対しては無頓着というか大らかなので、大抵は気にしないようです。
そもそもご兄弟でのスケール感も違われますが、お父さまがホビットなら.......それこそ手乗りサイズになりそうですが、生命の神秘ですね。
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測定を進めたところ、目は並の近視に弱度の乱視.......これなら私でも調整できそうと思います。
ナルン様は恥ずかしがられて反応が分かりづらいですが、それでも答えていただけるので大した苦労にはなりませんでした。
「そうですね、これで左目が1.0.......よく見えてらっしゃいます」
「はい、すごい綺麗で.......」
「ナルン様は矯正するだけで視力がよく出てらっしゃいますから.......片目でもキレイに見えるのでしょうね」
私がそう伝えましたら、ナルン様は私に指を向けてらっしゃいます。
「? 」
「.......よく見えるようになって.......あの、リコちゃんさんが、お姉ちゃんの言ってた通り本当に美人で」
.......素直な方だと思います。
一瞬理解に時間がかかりましたが、抱きしめて差し上げたいです.......我慢しますが。
「ありがとうございます。ナルン様も可愛らしいですよ」
「へぁ!? .......え.......あ.......そんなこと」
真っ赤になってらっしゃいますが、本心ですのに.......それはそうと、視力測定を続けませんと、
「それでは、両目で見ていただきますね」
彼女の検査枠の遮蔽板を取り除き、両眼で視力表を見ていただきます。
「見え方はいかがですか? 」
両目になった瞬間、ナルン様は少し目を閉じて恐る恐る両目を開けられました。
「あ.......はい」
初めてのメガネに戸惑っておられるんでしょうか? 少し反応が鈍いです。
今回のご要望は「遠くがよく見えるもの」なので、あまり調整で度数をゆるめる必要はないのですが、望遠鏡を作るわけではないので、かけて過ごせるほどには調整しなければなりません。
もちろん、一切調整しない方が合う方もいらっしゃるので、まずはそのまま立っていただくことにしました。
ナルン様は少しヨタヨタとふらついていますが、慣れれるでしょうか?
「いかがです?」
「あ.......よく見えます」
まだ少し緊張なさってるようですが、喜んでいただけてるようです。
テーブル席からはオンクさんとドンタク様が心配そうに覗きこんでらっしゃいますし、手早く終わらせましょう。
「慣れれそうですか?」
「はい!.......あ、ありがとうございます」
特に問題も無さそうなので、練習していた通りにナルン様には慣れていただくためにも、メガネをかけたままテーブル席へ戻っていただくことにしました。
「どうだっただ? リコちゃん、大丈夫か」
予想していた通りオンクさんは心配されておりました。
当然と言えば当然ですね。
「はい、視力もしっかり出てますし、両眼で1.0ですね。平均的な数値で近視と乱視を合わせました」
「平均かぁ、なんもなくて良かっだなぁナルン」
「本当だ、ごれで安心でぎるなぁ」
ナルン様は照れくさそうに、キョロキョロとしています。
とりあえず問題が無さそうなので、彼女の決定した度数を用紙に書き写すことにします。
これがメガネの設計図代わりになるので、ちゃんと書かなければメガネが作れません。
右目が視力1.0左目も1.0で両目が1.0、度数差もほぼなし.......と
「ね、ねぇお姉ちゃん」
「ん? なんだナルン?」
よく見えるようになって、見慣れない店内にナルン様は違和感があるようです。
「ん、と、景色がね、全部2つ見えるんだけど.......普通かな? 」
.......景色が2つとは、どういうことでしょうか。
乱視のレンズに慣れて無ければ伸びて見えることがあるとか、そういうことでしょうか。
ナルン様の見てる視界が共有できれば、仰られてることも分かるかも知れませんが、そんな魔法の様なこともできませんし.......
「そら、おめぇは目玉が2個あんだ。なんでも2個見えるわ、なぁドンタク兄」
「いや、俺わ目玉3個あっが1個しかねーもんが2つ見えるなんてこどねーぞ」
「え、これ普通なのかな.......リコちゃんさん.......私、おかしいですか」
原因は.......メガネに頭が慣れてないからと思うのですが、乱視の矯正に慣れてないからでしょうか? まずは乱視を抜いて試してみるしか、
私がナルン様のメガネから、乱視のレンズを外すと、彼女はまたキョロキョロと周囲を見渡して笑顔になられました。
「少し楽になりました! 」
彼女の言葉にドンタク様とオンクさんは胸を撫で下ろし、私も安心しました。
乱視のレンズの調整は様々だと教えられましたが、これもそうなのかも知れません。
自分で決めたことなのに、少し不安になりつつ笑顔を保っていましたら、入口の扉のすりガラスにまた人影が写りました。
「今日はカボチャが買えましたよリコくん! これだけ大きければ色々できま.......あ、お客様ですか。いらっしゃいませ」
マスターです!「助けてください」と言葉を飲みこんで、検査結果の紙をマスターに駆け寄って渡しました。
たぶん、これで理解してくれるだろうと.......
検査結果を眺めてから、目をしばたたかせるナルン様と机に置いてる私の外した乱視のレンズを見て、マスターは私にそっとカボチャを持たせました。
「すいませんナルンさん。度数をゆるめた際の視力だけ確認したいので、もう一度測定室にお願いします」
あくまで確認と、マスターは自然にナルン様をご案内されて行かれました。
マスターには何が見えてるのでしょうか。