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 夏に交通事故に遭い私は、入院した。その影響で一部の記憶がなくなった。とても大切なものだったはずなのに忘れてしまった。

 そして、木々が鮮やかな色に染まった頃に私は、退院し休んでいた大学にまた通い始めた。

「あいつを待っているの?」 

図書館入口のベンチで本を読んでいるとそんな声が降ってきた。顔を上げると草加君が立っていた。本を閉じ、少しずれて彼が座るスペースを作る。

「うん。井之原教授の手伝いをしているみたい。それが終わるのを待ってるの」

ふたりの間に柔らかな風が吹き抜ける。

「……俺、謝らないから。そりゃ、嘘をついたことはいけないことだけど好きなことは今も変わってないから」

「わかってるよ。私が傷つかないようにしてくれたんだよね。でも、どんな結末が待っていても私は、逃げないよ」

私は、しっかりと草加君の目を見つめ言った。

「やっぱ、柊さんは変わった。明るくなったし、強くなった」

破顔した草加くんは、こう続ける。

「あいつのお陰なんだろうなー」

うな垂れて頭をガシガシと掻いた。図書館から出てきた人影に気が付くと、立ち上がった。

「じゃあね。あ、俺あの小説の終わり方、嫌いじゃないよ。むしろ俺は、そうなることを希望する」

私が、きょとんとしていると草加君は手を振って去っていった。

「蒼依。待たせた」

横を見るとジンが、立っていた。

「ううん。本を読んでいたし草加君と話してたから」

さっきまで草加君が座っていたところにジンが座る。

「なんの話をしていたんだ?」

「小説の話。でも、なんの本かな。草加君は、終わり方が嫌いじゃないって。そうなることを希望するって言ってた」

「それじゃないのか?」

ジンは、私が先ほどまで読んでいた本を指さした。

 私とジンが出逢ったきっかけになった本。アンドロイドと女の人が恋をする話。

「そういえば、ジンにこの本どう思うか聞いてなかったよね。どう思う?」

「僕は……」

顔を近づけ、耳元で囁かれそのくすぐったさに体を縮こませた。

その答えを聞き私は、思わず顔を緩めて同じようにジンの耳元で私の想いを伝えた。

【参考文献】

「アンドロイドは人間になれるか」石黒 浩著 文春新書

「僕がロボットをつくる理由 未来の生き方を日常からデザインする」石黒 浩著 世界思想社

「人工知能と友だちになれる?」子どもの科学 誠文堂新光社

「ロボットが家にやってきたら… 人間とAIの未来」遠藤 薫著 岩波ジュニア新書

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