草加 彰典的考察
やっぱりあの男は人工知能型アンドロイドだった。確信があったわけじゃない。俺たち人とどこも変わらない。だけどよくよく観察してみるとどことなく人と違う。感情がない。心がここにない感じがする。
このこと、柊さんは知っているのだろうか。
彼女のことは、大学に入ってから目をつけていたとは聞こえが悪いが気になっていた。
いつもひとりでいて、大抵は図書館にいる。教授が来るまで本を読んでいて、講義が終わるとすぐ教室から出ていく。話しかけるなオーラが漂っていた。
見た目からしてチャラい俺にとってはまさに高嶺の花。だからこそ気になった。
図書館や入口のベンチで楽しそうに男と話す彼女の姿を見たときに俺にもその顔を向けて欲しいと柄にもなく初めてそう思った。今までに付き合ってきた女とはタイプが違う。どう攻めていけばいいのか全くわからなかった。
こんなこと誰かに相談してもからかわれるのがオチだ。だからといって悟られたりして変に気を回されたりしたら彼女に警戒されかねない。
ひとつ気になるところが見つかればそれだけで十分だった。気がつけば目で追っていた。だから気がつきたくないことに気がついてしまった。
彼女は、あの男のことが好きだということに。
彼女の気を少しでもひきたくて、友人の目を盗み慣れない図書館にも通った。雨の日の図書館では、俺のことを知ってほしくて少し声が大きくなってしまったのは失敗した。
学食で珍しく食べている彼女を見つけたときは、嬉しくなって思わず話しかけてしまった。ここに友人がいなくてよかったと心から思った。意を決して、話しかけたら驚いていた。どうやら俺は、認識されていなかったらしい。でも、これから知ってもらえばいい。
柊さんにあいつとの関係を聞いてみると読書仲間と教えてくれた。二人がまだその関係だという事実に希望が見えた。
弁当を食べ終えたら、読むつもりであろうカバーの付いた本が目に入った。聞くと人間とアンドロイドの恋の内容だという。柊さんは、あいつのことを知っていて読んでいるのだろうか。
「この想いは残酷だね」
見た目は、チャラい俺だけど人の心を傷つけたり弄ぶような行為は、好きじゃない。
柊さんが好きで読んでいるものを否定したかったわけじゃないけどそう口にしていた。
俺は、なにも言い返さない柊さんに別れを告げて食堂を出ていった。
「草加、おまえどうしたんだ?」
食堂を出るといつもつるんでいる友人のひとりが声をかけてきた。
「どうしたってなにが?」
肩を組まれた腕をやんわりとはずしながら聞き返した。
「今にも泣きそうな顔してる」
思ってもいない言葉だった。
報われることのない想いをしている彼女を思ってのことなのか彼女を傷つけてしまったことへの後悔のせいなのかわからないが顔に出ていたらしい。
「別になんでもねーよ」
心を痛めたであろう彼女の元に行ってあげたい気もしたがこいつになにを言われるかわからないから後ろ髪をひかれつつ少し早いが教室に行くことにした。




