掌の上には太陽
畳の上には「死んでいただきます」の文字
襖の向こうには斜めに傾いたエデンがあって
かつて見た愛慕の名残を香らせている
絶え間なき淫夢のあとには
滑稽なアルレッキーノのお喋りが広がり
答えのない数式が積み重なる
かのアベルが殺められる時まで
愛を語り合ったつもりが
憎しみの裏路地へと通じ
刺激だけを求める目玉が 見失った獲物を探している
水浸しになった着物は泥の汗で汚れ
罪過の大きさを語り尽くす
カインの視界は広がり 庭園の蛍が照らす月を見据える
血がたぎる両腕に抱え込まれたのは 痛ましい思い出で
残酷なまでに彼我を傷つける
悔いるは目に宿る蛇だけ
雨降りの宵が過ぎた後で
屏風に墨で描かれるのはアベルの死体
骨身だけになったカインの視線 その先には
激情と激昂がほとばしり 掌の上には太陽