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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
そのとき、それから
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5、それから~トリスの場合 4~


5、そのとき〜トリスの場合 4〜





 酷く、ゆっくりと時間が流れている様な気がした。



 何故、彼が目の前にいるのか、全く理解出来ない。

 混乱する私に、声が届いた。



「トリス。私はお前に言わなければならない事がある。」



 耳を振るわす、愛しい人の声。

 何時までも、聞いていたい、と願った、愛しい愛しい人の、声。




 頭が意味を理解できず、私は彼の言葉を繰り返した。



「言わなければ、いけない事、ですか…?」





 声が、震える。





ドクン。



 また、心臓が高鳴る。



「そうだ。トリス。私には、お前が必要だ。」




 アリ君は、目をさ迷わせながら、迷う様にゆっくりと、語って聞かせた。




「お前が居ないと、私の調子が悪いんだ。」




 ドクン、ドクンと高鳴る鼓動。




「つまりな、私は、お前の事が好きだ。勿論、妹としてでは無いぞ。傍に、居てくれないか?」




息が、詰まる。



 はくはくと、言葉にならない、息が漏れる。


 顔が赤く染まる。



 フワリ。


 と、暖かな想いが胸の奥から溢れ出し。




パリン。




胸の奥で、休眠プログラムの壊れる音が、克明に響いた。




「…いいんですか?アリ君。私が、貴方の傍に居ても…。」



 震えながら、アリ君に確認する。




「こちらからお願いする。私の傍に居てくれ。頼む。」




 そう言ったアリ君の言葉に。



 ポロポロと、頬を熱い滴が伝う。



「…はい…。はい。アリ君。私は、傍に、居ます。」



 やっとの想いで、返事を返した。



 涙の止まらない私に、アリ君はそっと寄り添ってくれて。




 緊張の糸が途切れる様に、私は、意識を手放した。





『合格です。トリスさん。お幸せに。』




 意識を手放す瞬間、どこか遠いところで、スサノオ君の優しい祝福の声を聞いた気がした。







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