4、それから~トリスの場合 3~
4、そのとき〜トリスの場合 3〜
ドクン。
鼓動が一つ、大きく跳ねた。
スサノオ君が、スサノオ神が、口を開いた。
「トリスティーファ・ラスティン並びにアリス・トートス。両名とも、取り敢えず、席に着きなさい。」
有無を言わさず、差し向かいで席に着かされる。
喋る事が出来ない程の威圧感を感じる。
間を置かず、式神によって、玉露とお茶請けが並べられた。
スサノオ神は、ニッコリ笑い、私に言った。
「時が来ました。己の心に偽る事なく、選ぶべきを選びなさい。内と外、そのどちらからも惑わされず、真に望む未来を掴み取りなさい。私からの試練です。いいですね。」
続いて、スサノオ神は、アリ君を見て言った。
「為すべきを為しなさい。運命は、君の手で回すものです。」
そして、私とアリ君を交互に見たあと、スサノオ神は告げた。
「ここからは二人の時です。ゆっくり向き合いなさい。」
スッと障子が閉じる音がして、スサノオ神は出ていった。
静寂の中、コンッと、鹿威しの音が室内に響く。
お茶を一気に飲んで、アリ君が何か言おうとしている。
息も吐けずに、ただただ、アリ君を見詰める。
(嘘、でしょう?)
信じられずに、瞬きする。
(何故、彼がここに居るの?)
カラカラに乾いた喉が、こくりと鳴る。
(私は完璧に彼の前では『いつも通り』に振る舞えてたはず。不自然な所は、出さない様にしていたのに…。)
ただただ、驚愕で。
震えそうになる身体を強張らせて、アリ君を凝視する。
それ以外、私に出来る事は何もなかった。