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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
そのとき、それから
96/151

3、そのとき~トリスの場合 2~

短いです。


3、そのとき〜トリスの場合 2〜






 スサノオ君のお屋敷の、一際豪華な一室。桜の花の綺麗な、お気に入りの一室。鹿威しの音が、静かな中に色を添えている。


 儀式の間からスサノオ君に案内されたのは、私が好んで使わせて貰っていた、その部屋だった。

 私は、鹿威しの音に耳を傾けながら、はらはらと乱れ散る桜の花弁を数える。



(いつ見ても、美しい景色ですね…。時を留めているなんて。いつか目覚めても。きっと、この景色は変わらないのでしょうね。)



 穏やかに時を数えていた私の耳は、聞き覚えのある、けれど、今まで聞いたことの無いほど乱れた足音を拾う。



(何故…アノヒトの足音がするのかしら…?これは、幻聴?この期に及んで、今更私は後悔しているのかしら…?いいえ。きっと、儀式のを中断する事で、スサノオ君は、私の心を試しているのね…。惑わされない。私は、休眠するの…。だって、決めたもの。)



 ここは、神の家。



 感覚を惑わす位、当たり前に出来る場所。

 だからきっとこれが、スサノオ神の言っていた、試練。


 幻聴なんかに惑わされない。


 細波の立ちそうな心。


 幽かな胸のざわめきを、思い出の中のアリ君への想いで塗り替える。


 一つ一つ、彼との思い出を振り替える度に、心は百年先の未来を向いて、平静さを取り戻して行く。



(なのに、何故…?アノヒトの足音が近付いてくるの…?次は、幻影でも見せるのかしら?ふふ。スサ神の試練は、容赦が無いですね。でも…。揺れ動く心なんて、あの日、あの人の下へと預けてきたもの。私にあるのは、あの人の残した軌跡を護るという、未来への希望だけ。さあ。眠りに就きましょう?)






 目を閉じて、自分の心に向き合っていた、その時だった。




 スッと障子が開き、スサノオ君が室内に入って来た。後ろに、居るはずの無い、アリ君を連れて。








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