8、試練~彼の場合7~
八話目です。
8、試練〜彼の場合 7〜
トリスさんの活動停止まで、後2日。
僕は念の為、歴戦の戦士であるアーサガ・オニッツに連絡を入れておいた。
「期限が、迫っている」
と。
アーサガさんは
「猶予は?」
とだけ、短く聞いた。
何の事か言わなくても通じる経験深い戦士は感じ方が違う。
僕は内心ほくそ笑み、
「後2日。」
とだけ、伝えた。
世話の焼ける友人達だが、神として手伝えるのはここまで、かな?
そして、また僕は、外視鏡の様子に目を戻した。
※※※※※※※※※※※
湧水亭。
アリさんは目を覚ました。
「カイル!何してくれやがんだ!」
バシャッ。
勢い良くかかる冷水。
「落ち着け。アリ。一応言っとくが、謝らねぇぜ?俺の矜持の問題だからな。」
仏頂面で、カイルさんが告げる。
「…。すまない。後生だから、トリスの向かった先の情報を教えてはくれまいか?」
「トリスは、『器』を保管するのに適する場所を探してるって言ってたから、教会と、他国の力の強い神の祀られた神殿、って教えたよ。」
項垂れながら、カイルさんが告げる。
「有難い。教会は、エステルの情報から考えても、有り得ん。という事は、他国、か。」
ぶつぶつ呟くアリさんに、
「おい!軍師アリ。」
突如、黙っていたアーサガさんが告げた。
「後2日だ。」
ハッと顔を上げ、アリさんは、
「助かる。恩に着る!」
と言って、清水亭を後にした。
※※※※※※※※※※※
上手くいった様だ。
ほっと胸を撫で下ろし、トリスさんの様子を伺う。
もうすぐ、休眠に入る事に対する、トリスさんの精神状態は、御祓を終えた巫女の様に、細波一つない見事な凪の状態だ。
時折、全てを愛しいむ様に儚く微笑むのが印象的である。
アリさんは、間に合うのか。
アリさんに会ったトリスさんは、今度こそ、『活きること』を選べるのか。
僕は、今度こそ、友人達の行く末を見守る事にした。