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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
決意
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1、決意~帰還~


【第七章 決意】





1、帰還





 個人的に、色々と思う所のある終わり方をした、北極からの帰り道。

 

 その旅もいよいよ終わりの地、学園への帰還を残すのみとなった。



 長いようで短い間だった、半年間だった。


 感慨深い思いで、港に入る。


「ジェラート船長。ここまで運んで下さってありがとうございました。お陰様で、無事に学園へ帰れそうです。」



「うちも楽しかったのう。また何かあったら、声を掛けてくれたら嬉しいのぅ。」



「私も、楽しかったです。もしもの時は、宜しくお願いします。」



「任せておくのじゃ♪」



 そうして、学園へと向かった訳だが。

 学園に着いた途端。



「トリスティー・ファラスティン様ですね。貴女宛の御手紙が届いております。」



と、受け付けで、手紙を渡された。



 以前、私宛の手紙をなかなか読まなかった為に、問題が長引いてしまった過去がある。

 その事実を思い出した私は、グリーンヒル先生に帰還の挨拶をする前に、真っ先に手紙を読む事にした。

 私も学習するのである。



 手紙は、先に戻ったお兄様からだった。


 内容は一文。



【至急、家に戻る様に】



 という、簡潔なものだった。


 アリ君とカイル君に手紙を見せる。



「取り敢えず、帰った事を報告する時間位はあるんじゃないか?」



「挨拶は大事だよな。」



 という有難い助言に従い、私は帰還の報告をすべく、楊先生、グリーンヒル先生、ジョン先生合同の研究室へと足を運んだ。



コンコン コンコン。



ドキドキしながら、研究室の扉を叩く。



「どうぞ。開いてるよ。」



 懐かしい、楊先生の声がした。



「失礼します。トリスティー・ファラスティンです。」



 ガチャリと扉を開いて中に入る。



「只今、ロカンドロス様にお会いする旅より、帰還いたしました。誰も欠ける事無く、また、怪我をする事無く、様々な体験をして参りました。」



 中にいた、グリーンヒル先生達に報告する。

 先生方の目を見て、冒険してきた事の旅路に誇りを持って、はっきりと告げる。



 私の態度を見て、グリーンヒル先生が口を開いた。



「うむ。良く戻ったな。」



 …。そう言うと、グリーンヒル先生は、じっと私を見詰めて言った。



「少しは悩みが晴れた様だな。まだまだな部分もあるが、決意を感じる目をする様になった。良くやったぞ!」



「せやな。存在感がちぃと増したんやないか?ええ傾向やと思うで?」



 ジョン先生も、うんうんと同意してくれた。



「で、どんな旅路を辿って来たんだい?」



 楊先生の言葉を受けて、私達3人は、語りだした。

 北極での冒険の数々と、海路での帰り道についてを。





 話が終わると、三人の先生方は、それぞれに嘆息した。



 グリーンヒル先生が言った。



「密度の濃い旅だった様だな。お前みたいに昨日、旅から帰って来た奴がいる。お前よりも先に旅に出た、ロイドだ。」



 パンパンと、グリーンヒル先生が手を鳴らすと、ロイド先輩が現れた。


「お呼びですか?グリーンヒル先生。」



「おぅ。ロイド!お前に続き、トリスも戻ったからな。二人とも、闘技場に来てもらうぞ。久しぶりの手合わせだ。」




「え?グリーンヒル先生、私、実家から呼び出しをされているのですが。」



「旅の成果の確認までが、課外活動の一環だ。いいな?」



 …。私の旅は、まだ終わっていなかったらしいです。

 これは逆らえません。

 何故なら、恩師(グリーンヒル先生)のお言いつけなのですから。




 そんなわけで、それぞれに帰還を果たしたグリーンヒル先生の二人の弟子は、学園内にある闘技場に相対していた。




「それでは、手合わせ、開始っ!」


 審判役のグリーンヒル先生の号令の下、



「「宜しくお願いします!」」



という挨拶を交わす。



「よぉ。トリス。兄弟子として、全力で行かせて貰うぜ?」



「ロイド先輩っ!私も、相対する以上、全力を出し切ります!行きますよっ!」



 そう言うと、先手必死とばかりに、私は魔剣を浮かせ、上から二本の剣を速さにモノを言わせてロイド先輩に降り注がせた。


 ロイド先輩は、強い。

 今まで勝てた試しがない。

 そして、彼は、重戦士である。

 軽戦士の私とは、大変相性が悪い。

 だから、殺られる前に殺らないと、私に勝ち目は無いのである。




 そんな思いに後押しされて、私はパンドラを適宜変形させ、自分の生命力を力に、ロイド先輩に斬りかかる。

 右から、左、下から上へと、斬撃を次々繰り出す。だが、その多くは、いなされ、跳ね返され、大したダメージには繋がっていないかに見えた。


 しかし、ジリジリとロイド先輩のHPが減って行く。

 それに気付いて、勝てるかも、と思い、血気に逸った私のミスもあるが。


 やはり、ロイド先輩は強かった。


 生命力を削って、攻撃力を上乗せた私の必殺の一撃を、ロイド先輩はパンダ型エルスに防がせ、反撃に打って出たのである。



 そこからのロイド先輩の猛攻の前には、私は成す術が無かった。



「参りましたっ!」



 それから、5分と持たずに、私は敗北を認めた。



「そこまでだっ!勝者、ロイド!」



 グリーンヒル先生から、手合わせ終了の号令が掛かる。



「「ありがとうございました!」」




 終了の礼を取り合い、総評を伺う事になった。


「ロイド。使い魔(エルス)の使いどころが上手くなったな。」



「グリーンヒル先生、ありがとうございます。」



「トリス。血気に逸った行動は見られるが、以前にはない闘争心が芽生えつつあるな。大変よろしい。このまま、自分を大切にするための行動を取れるようになる事を、先生は期待しているぞ。」



「はい。ありがとうございます。」



「二人とも、合格だ。更なる高みを目指して、今後も励むように!尚、課外授業に関してだが、終了時期は各々で決める事とする!以上だ!」



 こうして、学園での手合わせは終わりを告げた。




 そして、再び、楊先生の研究室である。


 私は実家からの手紙を先生方に見せた。



「課外授業の件ですが、私は、自分を自分で支えられる様になった時を、終了時期に定めたいと思います。そして、今は、大至急、実家で起きているらしい事件の解決を優先させたいと考えます。」



「トリスの意思を尊重するぞ。行ってこい。」



 グリーンヒル先生はあっさり認めてくれた。



「仕方ない。もう暫く、お前の冒険に付き合ってやるか。」



「俺も、同行するぜ♪」


 アリ君が、カイル君が、同行を申し出てくれた。



「ありがとうございます。」



 私は晴れやかにお礼を告げた。






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