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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
帰路~セリカ~
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3  帰路~セリカにて.2~

難産でした。


3、セリカにて 2






 クレアさんに質問攻めに合いながらも、猫手飯店のご飯は絶品だった。


 麻婆豆腐、エビチリ、回鍋肉、唐揚げに黄金炒飯、天津飯、フカヒレの姿煮、北京ダック、叉焼、ワンタンメン、青椒肉絲、回鍋肉等々、運ばれて来る端から口に運ぶ。

 その勢いは衰えず、最後には動けなくなるくらい、一気に食べきった。


「美味しくて食べ過ぎました…。」



 動けないくらいに豪快に食事を摂る私達に、店主、コロンさんは、特殊なデザートを出してくれた。


「ほほ。良い食べっぷりじゃったな。最後はこれじゃ。飲めば、後五分程もすると、爽やかに動ける様になるはずじゃ。」



と、出されたのは、白い粒々の入った、スープ状の甘い飲み物だった。


「何だ?これ。」


 カイル君が疑問を口にするが、既にコロンさんの美味しい料理に信頼を寄せていた私は、その質問を無粋だと感じた。



「こんなに美味しい料理を振る舞って下さったんですよ?疑うのは無粋だと思います。ですから…。」



いただきます、と、私はそのスープに口を着けた。


 そんな私を見て、コロンさんは、フォッフォッフォッと笑うと、



「薬膳料理の一品じゃ。今のお前さんらに合うように調整してある。特別じゃよ。」


と説明してくれた。

 それは、コロンさんの心尽しの一品だったのだと思う。何故なら、それも美味しく完食すると、苦しかったお腹はあら不思議。スッキリとして、全身に力が満ちてきたからだ。


「コロンさん、とても美味しかったです!素晴らしい腕前ですね。体調も一気に良くなったきがしますよ!何か秘訣でもあるんですか?」


しっぽをパタパタさせて、コロンさんに聞いてみた。


「そうじゃな。視るに、お前さんらの氣の巡りはちと滞っておたからの。腹から氣の巡りを高める料理を出しただけじゃ。」


 コロンさんは、聞き慣れない単語を口にした。

 私は、今までの経験で嫌と言うほど見に染みて知っていた。『知りたければ、自ら聞かなければならない』、と言う事を。だから、躊躇わず疑問を口にした。



「『氣』ですか?それは、この土地ならではの考え方なのですか?」



 この質問をしたところ、意外な処から答えが返ってきた。

 ジェンユ君である。


「あ、そうか。姉ちゃん達、セリカは初めてだったな!じゃあ、まずは『氣』について説明するぜ!」



 そうして、ジェンユ君が話してくれた事を纏めると。



 セリカと言う国には、【万物には『氣』が宿る。『氣』とは『力』である。その『氣』が正しく流れていれば、『陽』の氣が、滞れば『陰』の氣が、それぞれ強くなる。身体の内を巡る氣や、身体の外、つまり自然界にある氣を活用する術もある。『陰』の氣と『陽』の氣とに善悪の差はなく、バランスが大切である。】と言う考え方があるのだそうだ。



 子供であるジェンユ君が知っているくらいに、この国では基本的な考え方らしい。



「でも、『氣』の扱いは武術の達人や仙人様でないと出来ないっていうのも、この国では常識なんだけどな。」



「「つまり、コロンの婆ちゃん(コロン婆さん)は、武術の達人である、と言うことか?教えてくれっ!」」


 カイル君とフォルフェクスさんが、ジェンユ君の話を聞いて、目を輝かせて言った。



スコーン!



「誰が婆さんじゃい。無礼な奴らじゃな。小僧ども、お主らは技量や覇気はあれども、礼儀がなっとらんのぅ。悪いことは言わん。観光だけにして、この国の武術には関わらん事じゃ。」


 コロンさんは、カイル君とフォルフェクスさんの座っていた椅子の足を杖で薙ぎ、そう言った。

「うわっ!」


「うおっ!」



二人は揃って尻餅をついた。


「いってぇ…。何しやがんだ!うわっ…」


 見事に転がされたカイル君が文句を口にした途端、コロンさんから容赦ない杖による足払いが繰り出される。


 カイル君が転がされるのを察知したフォルフェクスさんも、素早く起き上がろうとした。

 だが、コロンさんの杖の動きの方が速かった。

ガツン!


と、フォルフェクスさんもまた、地べたに転がされる。



「ほれ見ぃ。まだまだヒヨッコじゃな。その腕前では話にならん。儂から武術を習いたくば、出直して来るんじゃな。」


 私は感心しながら、言葉を紡いだ。



「お強いですね、コロンさん。貴女みたいに強くなるには、どうしたらいいんですか?『氣』の扱い方を覚えられる場所とかってあるんですか?自信を着ける手助けに、色々経験を積みたいのです。」



「そうじゃのう。嬢ちゃんは、礼儀はなっとるようじゃな。覇気や闘気は足らんが。そうじゃの。この国には、何人か、『氣』の扱いに長けた者がおる。何人か紹介してやるから、見て回って見るのも良いかもしれんの。習得出来るとはかぎらんが。それでもよいかの?」


「勿論です。ありがとうございます。」




 コロンさんは、私達の状態を見て、『氣』なるモノの流れを正常にする食べ物を出してくれただけでなく、新たな出会いを助ける情報までも提供してくれた。



 私達は、コロンさんに、丁重にお礼を述べると、店を辞する事にした。






 一度船に戻ると、ジェラート船長から、お話があった。


「すまんがの、お主ら。暫しこの国に滞在するぞ。この国の技術は、ハイルランドとは比べ物にならんくらいに進んでおる。儂の船をより速く走らす為のバージョンアップをするのじゃ♪これは決定事項じゃからな。先に帰りたくば、儂以外に頼むといい。」


 ジェラート船長は、つれなくもそう言った。


「いいえ。ジェラート船長。私は、船長の船で旅がしたいのです。幸い、この国は広大です。整備が終わるまで、観光しようと思います。」



「ほぅ。ありがたいの。では、この河(長江)の河口の街のドッグで整備しとるからの。一月程したら訪ねて来るがいい。待っとるぞ。」


と、セリカの技術で船をバージョンアップするため、暫くセリカから離れられない事、短くても一月ほどかかる事、一月後に、長江の河口の街まで来てくれたら、必ず乗せてくれると確約してくれた。

 そこで、私達は、セリカの国を満喫する事にした。




「というわけで、ジェンユ君。セリカの主な観光地を案内して欲しいんですが、いいですか?」



「え?でも、おいら、荊州から出たこと無いぜ?」



「構いません。お願いします。君の行ってみたい所でも、有名な所でも、何だって構わないのです。楽しくこの国を見て回らせてください。」



 ジェンユ君は暫く考えた後、


「分かったよ。おいらのできる範囲でがんばるよ。」


と、案内役を引き受けてくれた。




「取り敢えず、コロンさんの教えてくれた人物でも訪ねるか?」


 アリ君の一言で、行き先が決まった。



セリカでの旅が、始まったのである。





更新がゆっくりで申し訳なく思います。

なるべく週2~3回投稿出来るようにがんばります。

お読み頂き、ありがとうございました。


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