1 帰路~南下~
短めです。
【第6章 帰路】
1、南下
賢者ロカンドロス様にも無事にお会いし、北極点も拝んだ私は、北から帰還すべく、南下する事にした。
この時代、ハイルランド(真教)の常識として、地上は平らで、不動であり、天が動いて月日が運行するものであるとの考え方が一般的である。
(私としては、実際に調べたり確認していないので、天が動こうが、地が動こうが、日が廻るのであれば、どちらでも不都合はないのではありますが。)
つまり、天が動いて月日が廻るのならば、北の果てから南下する場合、何処から南下しても、ハイルランドに着くはずである。
という理屈が成り立つだろうと、私は考えた。
なので、ジェラート船長に、棒を倒した先である進路を示して、南下してもらう事にした。
そうして、南下する事、凡そ5日。
右手に陸地らしきものの稜線が見えた。
「おい!陸地が見えたぞ!上陸すべきじゃないのか?」
「俺もアリの意見に賛成だぜ!」
「ジェラート船長。陸地が見えます。上陸地点を決めるのに、コレ(木の棒)を用意して見たんですが…。」
私が、何時もの様に棒を取り出すと、バッと横合いからそれを奪う手があった。
「いい加減、コレはもう勘弁してくれ。頼むから!」
アリ君である。
うんうんと、カイル君も激しく同意していた。
私は、二人の剣幕に、
「分かりました。コレは諦めます。」
しょんぼりしながら承諾した。
だが、譲れない一線は主張する事にした。
「私としては、なるべくハイルランドに近い地点で上陸したいです。船長の意見はいかがですか?」
と、意見をジェラート船長に投げたのだ。
ジェラート船長も、
「ふむ。うちも、行けるところまで、右手に陸地を見ながら進もうと思うておるのぅ。」
と、同意してくれた。
私とジェラート船長は、二人で顔を見合わせると、
「では、決まりですね。」
「決まりじゃのぅ。レッツゴーなのじゃ♪」
意気投合した。
「船長の指針ならば仕方あるまい。いいだろう。文明圏に着けただけでも御の字だ。」
そして船は、陸地を右手に見ながら西へと進路を変えたのである。
北極点から南下して、陸地が見えなかったら、最悪南の果ての海の端に着くだけだと腹を括った私達一行は、幸いにも、進路右手に陸地を確認した。
そして、なるべくハイルランドに近づくべく、陸地を右手に見ながら、行けるところまで西へと進路を変えることにした。
「しかし、小島一つ見えぬ海じゃのぅ。水平線が見えるのぅ。じゃが、潮流は此方から来とる様じゃの。トリス、このまま行けるところまで流れを逆しまに進んで構わんかの?」
慎重にジェラート船長が聞いてくる。
「勿論ですよ♪何処の港に着くかは船長の腕次第だと思っていますので、ジェラート船長にお任せしますよ♪」
順調に西に進んでいるので、何ら不満もなく同意する私。
「分かったのじゃ。しかし、対岸が見えんのぅ。」
「?海なんだから、当然じゃないですか?」
「そうじゃのぅ。島などあらば対岸が見えると思うたんじゃが。」
そんな話をしているうちに、カイル君が何かを発見した。
「おい!トリス!見ろよ!白い魚が跳ねたぜ!群れで居るみたいだ。」
それを確認したアリ君が、
「カイル。あれは白いイルカでは無いのか?」
と、意見を述べる。
「そうなのか?でも、可愛いじゃねぇか。トリスも見てみろよ!」
そんな話をしながら進んで行くこと数時間。
ジェラート船長から、乗員に通達があった。
「全速力で進んで来たのじゃが、残念なお知らせじゃ。」
ごくりと息を飲んで身構える一同。
「燃料がそろそろ尽きそうじゃ。近くの港に停泊する事にするのじゃ。」
「上陸ですね!了解です!」
「どんな所か楽しみだぜ♪」
「やっと文明圏か…。長かった…。」
そうして、私達は未知の港へと船を停泊させる事となったのである。
「「「もう一度、教えてくれるか(頂けますか)(貰えるか)?」」」
港に着いて、情報収集をした私達3人が同時に口にしたのが、上記の台詞である。
船の整備などがあると言うことで、ジェラート船長から船を降ろされた私達は、現地が何処なのかを知るために、情報収集を開始した。
そこで、私達は、驚愕の事実を知る事になる。
「だから、なんども言っているだろ!ここは、絹国(セリカ)の荊州(けいしゅう)ってんだよ!更に言うなら、その河は長江ってんだ!海じゃネェよ!」
どうやら、私達は、大河を遡上していた様です。
ありがとうございました。