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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
教皇庁と私
33/151

15  教皇庁と私~狂える機械人形(クレアータ)~

よろしくお願いします。


15、狂える機械人形クレアータ




「行きます!」


 目を閉じ、私は意識を自分の魔剣に分散させた。


ブォン。


 私の愛剣、ケルバーソード『ナーズィル・イェーガー』が宙を舞う。



 その横では、フォルフェクスさんが、


「変身!」


と、光の渦に包まれ、ライダースーツの様なモノを身に纏っていた。

 異様な風貌に早変わりして、力の波動が彼を包んでいるのを感じた。


カイル君も、


「行くぜ!」


と、呟き、その剣を宙へと浮かべた。


 アリ君は、『調停する者の王錫』を手に構え、パーティーメンバーへの指揮を執りやすくしていた。それからクレアさんも、『勇気を与えしの剣』という魔法道具で、皆が怯まない様に準備してくれていた。



「いいか、皆、作戦を伝えるぞ?今回、我々には回復役が居ない。いいな。つまり、勝つための策は一つ。速攻だ。支援は我ら二人が受け持つ。お前らは、全力で突っ込め!以上だっ!」


 名将アリ君の指揮と激励と、


「あんたたち、やっておしまい!」


という、姉御・クレアさんの応援のおかげで、私達は、これ以上に無いほど、活力に満ちていた。


 素早さに自信のある私は、ゲンスルー閣下のデータを調べあげ、その上で、最大火力の一撃を叩き込んだ。

 次いで、フォルフェクスさんが、自分の人間らしさをガリガリと削りながら、新技の射撃武器を撃ち込んだ。その軌道は、見たことのない、強烈な光の筋となり、爆音と共にゲンスルー閣下に直撃した。


「ぐあっ!」


 フォルフェクスさんが放った一撃を受けたゲヒルン卿の影に、二重に為るように別の陰がゆらりと蠢いた。

 だが、その陰も直ぐにまたゲンスルー閣下と一体化してしまった。



「貴様ラ許サン。我ヲ怒ラセタノダ。滅セヨ。」


ザザッ



という雑音混じりに、ゲンスルー閣下がそう言い放った途端、カッと閃光が辺りに煌めいた。

 そして、周囲全体に無数の剣先が凪ぎ払らわれたかと思ったら。


「させるかよっ!」


 カイル君が、自身の身体を盾にして、皆を庇った。

 そして、彼はニイッと笑うと、


「さぁ、反撃の時間だな!受けたダメージ、還させてもらうぜ!」


と、光の刃を輝かせ、一気に重い一撃を撃ち込んだ。


 今度は、影は揺らめかなかった。


 不思議に思った私は、ゲンスルー閣下の陰をサーチしてみた。

 すると、なんと、「フォルフェクスさんが放つ、『人間らしさを削る一撃』で倒すと、『陰で操る者』にダメージが入る」、という、特殊な因縁が明らかになったのだ。

 私は皆にその事を伝えた。

 すると、アリ君が、


「では、ゲンスルーの体力が3分の1になった所で、フォルフェクス、お前が止めを刺せ。他はサポートにあたるぞ!」


との指事をだした。



その時だった。



シュッ。


「させないわっ!」


天井からそう声がしたかと思うと、


カッカッカッ


と、一筋の銀光がアリ君の足元に突き刺さった。

 ナイフが放たれたのである。



「!貴様っ誰だ!」



 バッと音のした方を見る。フォルフェクスさんは、そこに居た人影を確認すると、二の句を告げられずに口をパクパクさせた。



 なんと、天井の梁にノノさんが居たのだ。


 ノノさんの出現した一瞬、私達の注意がそちらに逸れた。その隙に、ゲンスルー閣下の陰がまたも揺らめいていた。

 そして、意外にも冷静で暖かみのある男の声が響いたのだ。


『いいんですよ。ノノ。私はそこの青年に、少々興味があります。貴女の役目はここまでで構いませんよ。退きなさい。』


「ちっ。仕方ありませんね。」



 フッと、ノノさんの気配が消える。




 ゲンスルー閣下の陰が、ぬっと、凝って、人影を形成すると、ソイツは優雅に一礼した。


『初めまして。ご機嫌如何かな。諸君。私は、ブラックファントム首領をしている者だ。トリスティーファ・ラスティン君、君のご両親には色々世話になっているよ。気が向いたら、君も我が組織に属してみないかね?悪い様にはせんよ。』



「誰が道具になんかなるものですか!」


 私は目一杯陰に向かって剣を投げ付けた。


 陰はゆわんとたわんで、私の攻撃は無効化されてしまった。



『仕方がないねぇ。君らの攻撃は、私には届かないんだよ?』



「そんなの、試してみなきゃ分かんねえだろっ!」


カイル君がゲンスルー閣下に向かってつばめ返しと怒りを籠めて斬りかかった。



「グワッ」



ゲンスルー閣下の体力は、みるみる削れていく。だが、肝心の陰、ブラックファントム首領は、ぴんぴんしていた。



『ははははは。だから言ったろう?効かない、と。そうそう。フォルフェクス君。君の賞金の額は面白いね。そんなにあちこちから付け狙われたら、生活も立ち行かんだろう。どうだね?我が組織の幹部にでもなってみんかね?』



「おい。ブラックファントム首領とやら。覚えておきな。俺はな、確かに使われてなんぼな者だがな?掌の上で転がされるのは大っ嫌いなんだよ!だぁれが転がされるもんかってんでい。後な、高見の見物しながら盤面を眺めてるつもりだろうが、そうはいくか。覚悟しやがれ!!!」



 フォルフェクスさんはそう言うと、ありったけの力をベルトに込めてジャンプした。


そして、


「ゴルドスマッシュ!!!!!」


という叫びと共に、ゲンスルー閣下の陰が凝った人影に浮かぶ、金色の○と、○の中にXのマークへと向かって光のオーラを纏った蹴りをぶちかました。



『ぐぉぉぉおぉぉお。まさか、こちらにまで攻撃を届かせるとはっ!忘れないぞ、フォルフェクスっ!』



 チュドーンと言う爆発を伴い、ゲンスルー閣下は消し飛んだ。

 ブラックファントム首領の陰も、そんな言葉を残して消えて行ったのだった。




こうして、私達は、ゲンスルー閣下を裏で操っていたブラックファントム首領を撃退したのだった。



 その後、ゲンスルー閣下はと言うと。繕いのゲンシュフライスさんと傾向のゲンシュフライスさんを始めとした技術者の皆さんによるメンテナンスを受け、無事に元の職場に復帰した。


 この時の、ゲンスルー閣下への直接の攻撃行為により、フォルフェクスさんの賞金額は、1000クラウンという、史上最高額にまで達したのである。



 そのフォルフェクスさんだが…。


「クレア、聞いて欲しい。俺、あんたみたいな気っ風のいい女が好きだ。俺と、結婚を前提として付き合って欲しい。」



と、何かに観念したように、クレアさんに告白していた。

 クレアさんは、というと、


「仕方ないわね。フォルフェクス君に免じて一度に付き合う男は1人にしといてあげる。フォルフェクス君は、そうねぇ、キープでいいかしら?」


と、流石のお返事をしていた。

 フォルフェクスさんは、それでも構わないのだそうで。

 …。クレアさんの魅力の高さは凄いと思った。




 尚、ブラックファントム首領とノノさんは、というと。

 次元を超えてダメージを受けたブラックファントム首領は、その後、3日程動けないくらいの重症だった様だ。動ける様になって、手持ちのクレアータ群を確認したところ、全体の3割を何者かに奪われていたらしい。 2日後には、その全てを買い戻した、という噂が流れていた。

 そして、その、クレアータを奪い、売り払ったのが、誰あろう、ノノさんではないかと言われている。何故なら、この時期を境として、彼女は、出所不明な巨額の資金を元手に、コンツァルタントとして、独立開業しているからである。





 私達は、事件の無事な終了を祝い、大学で、盛大に打ち上げをした。

次なる冒険への英気を養い、また、自分の旅を続ける為に。


 そんな時だった。


バサバサバサッ。


コンコンコン。


 校舎の三階にある、楊先生の研究室の窓を、郵政局ギルド・通称『ミールック便』の職員が叩いたのは。


「ミールック便です。トリスティーファ・ラスティンさんに郵便です♪」



新たな、旅立ちの知らせが届いた様だ。






ありがとうございました。

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