14 教皇庁と私~ゲンスルー閣下の下へ~
身近な人にも警戒しましょう♪
14.ゲンスルー閣下の下へ
私達は、決戦に備えて綿密な計画を立てることにした。
具体的には、私が譲渡された《対グリーンヒル先生直通・トランシーバー》を使い、大学の先生方及び、仲間の皆に連絡をとったのだ。
相手戦力の把握には、アルヴィン君とリースさんが、各ルートの布陣は楊先生とアリ君が各戦力に指示を出した。
そして、アリ君は更に、エステルさんとランスロットさんに、ある指示を追加で出していた。
それは、一般の信者や、関係のない一般人等、非戦闘員を侵入ルートに近付けない事。
つまり、出会った者は全て敵。叩き斬る、という状態にしておく、という事である。
他にも何やら事細かに打ち合わせていた様だが、アリ君はそんな事をおくびにも出さずに、私に言った。
「トリス、ゲンスルーの元まで一気に行くぞ。お前は、何も考えなくていい。とかく、全てはゲンスルーに対峙してからだ。」
こうした、私の気付かない場所での、色んなサポートを受け、私達は決戦の地へと足を運んだ。
ギャリギャリギャリギャリギャリ!!!!
キャタピラを軋ませて、戦車の様な異形が現れた時は、
「デヴィル メイ クライ」
と、突如上から飛び降りてきたダンテさんが両手に銃を構えながら、
「お嬢ちゃん、こいつは俺の獲物だ。先に行きな!」
と、その相手を引き受けてくれた。
ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ!!!!
昆虫と節足動物の複合態の様なクリーチャーが現れた時は、
「邪教の悪魔を滅するのは、我らの役割。後は私とエステルが引き受けます。ゲンスルー閣下の下へ急いで下さい。」
と、聖騎士ランスロットさんとエステルさんが、その相手を引き受けてくれた。
こうして、敵が現れる度に、一人、また一人、と徐々に人数が減っていった。結局、ゲンスルー閣下の部屋の前まで辿り着いた時には、私、アリ君、カイル君らフォルフェクスさん、クレアさんの5人にまで、その数を減らしていた。
はあはあはあ…。
走ってきたので、息が上がっている。
すぅっ と息を整えて、ゲンスルー閣下の居る部屋の前で、私は立ち止まった。
そして、徐に右手を挙げると、
トントン、トントン。
と、軽快な音を高らかに立てて、扉をノックした。
「なに用だ。」
中から返事があった。
私は、きちんと答える事にした。
扉を開け、一礼して、
「失礼します。わたくし、トリスティーファ・ラスティンと申します。この度は、ゲンスルー閣下に『私』という『神の器』を諦めて頂く為に参りました。これ以上の無駄な戦闘は望みません。私を狙うのを止めてください。」
と告げる。
ゲンスルー閣下は、一応は、私の言葉を吟味してくれた。
だが、返ってきた言葉は。
「魔神に使われるより、唯一神の為になる方が、真教徒としては正しいと思わぬか?神の御為の礎となるが良い!」
という、話の通じない様子が、どこか堕ちた者特有のものだった。
「やはり、聞き入れては頂けないのですね?」
心底残念に思いながら、私は最終確認をした。
「当たり前であろう。その意識こそ、神の御為には不要なもの。排除する。」
「解りました。説得は、無意味な様ですね。」
「そも、人の子による世の中こそが、既に破綻しておろう。全てをクリアにするのが、我が役目なり。」
狂える機械はそう言った。
そして、殺戮の宴が開始された。
ありがとうございました。