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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
教皇庁と私
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10  教皇庁と私~更なる刺客~

よろしくです。

10.更なる刺客






 何処までも続く水平線。

 今、私達は、ジェラート船長の愛船で、ブリタニア港を目指している。

 船長のこの船は、非常に性能が良く、帆船であるだけでなく、スクリューを搭載した、蒸気船でもある。

 その平均速度はおよそ毎時30km。

 更に、蒸気の副産物として、お風呂が完備されているのだ。

 私は船には詳しくないが、兎に角居住性と性能が破格に良い事は理解出来る。

 勿論、交代で見張り等を行わなければならないのは、旅の常なのだが。


 さて、夕暮れも近づき、そろそろ料理の準備をしようとしていた時だった。


 見張りをしていたカイル君から、船内に非常事態を告げる警告が告げられた。


「船後方の海中より、未確認の巨大な影が接近中!念のため、皆警戒してくれ!」



 これを聞いたアリ君から、矢継ぎ早に指示が飛ぶ。


「ジェラートは船の操縦を、フォルフェクスはノノを守れ。ノイマンとカレンは船長の警護を固めろ。トリス、クレアは私と共にカイルと合流。甲板で戦闘に備えろ!」


 船内で、右往左往しかかっていた面々は、冷静なアリ君の指示のもと、混乱もなく、事態を受け入れた。


 私達がカイル君のところにたどり着き、迎撃の準備をして、五分後。



 ザパーッと海中から姿を現したのは、奇妙な蛸型の、見たこともない人工物だった。



姿を現した人工物は、8つのうねうねした管を触手のように動かしながら、どういう原理かは解らないが、器用に水面に浮いていた。


「諸君らがトリスティーファ・ラスティンの一行かね。いや、そうに違いない。ひひひ。その甲板に居るのが姿絵にあった娘さんじゃものなぁ。私の事は、プロフェッサー。プロフェッサーDとでも呼びたまえ。」


その機体(?)の中から、拡声器で拡大された様な声が響く。


「ゲンスルー四天王のお一人ですか?確かに私がトリスティーファ・ラスティンで間違いありません。ですが、私は、戦闘はしたくないのです。お引き取り願えませんか?」


「いひひひひ。閣下の命じゃからな。無理じゃ。あるとしたら、お嬢ちゃんが一緒に来てくれれば、争いはせん。――このオクトパス1号の性能は試させて貰うがのっ。」


 このオクトパス1号とやらには、拡大鏡だけでなく、集音器も備えているようだ。


「つまり、トリスを案内はしても、我々には危害を加えるのだなっ。」


アリ君が確認する。


「なぁに、軽い性能テストをするだけじゃ。」


ふひゃひゃひゃひゃと笑い声が甲板に響く。


「うちの船に傷を付けようというのじゃな。許せん。アリ、トリス、カイル、クレア、遠慮はいらんっ。やってしまうのじゃ!!!!」



 どの道、愛船を実験道具にすると言われたジェラート船長は、爆発的に切れた。

 勿論、大人しくついていっても、仲間を実験道具にすると言われた私も、切れた。


「私の大事な人達に悪戯に危害を加えるですって!?許せません!」


「どっちにしても、トリスの敵は俺の敵!」


勢いなのか、カイル君や、


「危ないわねっ。何をするつもりなのよっ!」


自身の身を案じたクレアさん、


「私の大事な妹分に何をするつもりだ。許さん。」


私の存在がすっかり『妹分』として定着したアリ君も、こぞって敵意を剥き出しにした。



「許さんのは結構じゃ。儂の愛機オクトパス1号ちゃんの実験の糧となるだけじゃからなっ。まずは運転性能のチェックからじゃな。」


ふひゃひゃひゃひゃという笑い声と共に、不吉な事を言うプロフェッサーD。


「いかんっ。乗員、何かに掴まるのじゃ。全速力でブリタニア港に向かう。奴を振り切るぞ!アリ、暫し、アレの動きを抑えられるかの?」


ジェラート船長からの指示が、船内に響く。


「わかった。船僑のメンバーで、あの蛸にダメージを与えてみる。いいな、トリス、カイル!」


「はいっ!やりますっ!アリ君!」


「イイゼ、アリ!」


戦闘態勢を整えた私達。

その時、


「そうは行くかいの。ほれ、ポチッとな♪」



 オクトパス1号とやらから、何やら楽しげに謎のボタンを押すプロフェッサーDの声がした。

 すると、うねうねとした触手状のパイプ?が船に巻き付こうとしていた。


「させませんっ!」


私は浮かせた魔剣を射刀術で飛ばして、3本の触手を斬り落とした。


「でぇいやああああ!」


カイル君は、烈拍の気合いを込めた斬鉄剣(その名の通り、剣で鉄を切り裂く技術)で、残りの触手を斬り落としてゆく。

 それでもまだ残った2本の触手は、クレアさんの応援によって気合いを振り絞った私の、二刀流の技により、何とか斬り離す事に成功した。


「よくやったの。今じゃ!」



 ご機嫌なジェラート船長の声がした。次の瞬間、ゴゴゴッと言う音が響き、船が軽く浮上した。そして、帆が回転したかと思うと、一番風を受ける位置にその向きを変えた。更に、ブォンブォンと海中から音がしたかと思うと、目に見えて、船の速度が上がって行った。

 小さな岩礁や、潮目を巧くよんで、右に左に小刻みな進路変更を繰り返しながら、ジェラート船長の船は進む。


後には、


「ふむ。改良の余地があるのぅ。何にせよ、よいデータが録れたわい。重畳重畳♪」


という呟きと、沈みゆくオクトパス1号が残された。







 プロフェッサーDの攻撃を防ぎ、その後は何事もなく無事にブリタニア港入りを果たした私達。


 え?ジェラート船長の船がどれだけ速かったかって?


 定期便なら4日の日程が2日程に縮まる位ですよ?



 結果として、船酔いの激しかったメンバーは、や宿屋で部屋番をする事になった。

 例によって、フォルフェクスさんは、ノノさんと共にレクスギルドに情報収集に行っていた。

 私達は、せっかくなので、街を散策する事にした。

 アリ君とカイル君は男同士で何やら行くところがあるとかで、私はクレアさんと、ショッピングである。

 私は、かねてよりクレアさんにお聞きしたい事があったのだ。


「クレアさん。あの、凄く聞きにくい事を聞いてもいいですか?」



 ごくり。と息をのんで、勇気を振り絞る。


「ん?いいわよ?何かしら?」


 私は、クレアさんの耳許で囁いた。


『私、さらしを巻いてるんですが、正しい下着って何処で購入したらいいんでしょうか…。胸の傷を隠せる様なデザインがあるとこ、知りませんか?』


真っ赤になって聞くと、クレアさんは驚いた様な顔になり、次いで、ガシッと私の両肩を掴んだ。


「トリスちゃん。それは良くないわ。急いで揃えに行きましょう。女として、放っとけないわ。」


 今まで見たことの無いくらいの真摯な瞳で断言したクレアさんに連れられ、私は下着屋さんへと足を運ぶのだった。


「こんにちは。店主はいるかしら?」



 可愛らしいデザインの店舗に連れて来られた私。

 バクバク高鳴る鼓動に、逃げ出したくなるが、クレアさんにしっかり手を捕まれていて、それは叶わない。


「はいはい。只今~♪どんなご用意かしらねぇ?」


 青い顎をした、くるくると綺麗にセットされた金髪の、アイメイクの濃いオネエさんが出てきた。


「お久しぶりね、店主♪今日はこの娘のランジェリーが欲しいの。許せない事に、この子、さらしを使ってるのよ!?」



「あらん。それはいけないわ。そんなモノを使ってると、全く育たないか、逆に育ちすぎるかの二択しかないのよ?」



 くねっと腰を横に曲げて、店主は言う。


「この子は後者よ。」



 クレアさんが楽しげに伝える。


 私は、恥ずかしい気持ちになりながら、


「最近、さらしがキツくて。後、胸に傷があるので、それを隠したいのですが…。」


と、弁明する。


「あらん。それは大変ねぇ。でも、きちんとサイズのあった下着を着けるのは、とても大事な事なのよん?詳しくサイズを測りましょうね♪私がやると抵抗があるでしょ。クレアちゃん、測ってあげて頂戴。」




 しばし後。私のサイズが判った。(トップ98cmアンダー70cmウエスト64cmヒップ92cm)立体的に詳しく測られた。


ぐったりする私。






 でも、そのお陰で、店主自らの手によって、ぴったりサイズで、傷を隠せるデザインのものを作製して貰える事になった。

 上下セットで、数種類。


 出来上がりまで、2日ほどかかるとの事なので、その間は、この街に滞在したい事を伝えないといけないなぁ…と考えていた帰り道。



 人気の無い公園に差し掛かった時の事だった。

メキメキっと音を立てて、木々が薙ぎ倒されていく。


そして、


「ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!お嬢ちゃん、儂の愛機スパイダー2号ちゃんの性能もチェックさせて貰えんかいのぅ!行くぞ!ポチっとな♪」


と言うプロフェッサーDの声と共にヤツが姿を表した。


爛々と輝く赤い八ツ目。ギチギチと鳴る鋭い顎。器用に蠢く八本の脚。まぁるく膨らんだ腹部から、粘着質な糸を、今にも吐き出しそうにしている。


そんな様子を一瞬で把握した私は。


「イやああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 辺りに憚る事なく絶叫を上げ、ケルバーシールドとバスタードソードを駆使して、一心不乱にヤツに襲いかかった。


 ヤツへの拒否感で、私の尻尾と耳の毛は逆立ち、瞳孔は縦に開いていた。


「えっ!?ちょっ?まっ…」


 プロフェッサーDが何か言い掛けていた気もするが、知った事ではない。






 私は、鉄屑になるまで、攻撃を止めなかったらしい。


「…ち……!ちょ…っ…ちょっと!トリスちゃんってば!!」


 気付いた時には、私はクレアさんに、必死で呼び掛けられていた。足元には、元蜘蛛型クレアータが、鉄屑となって転がっていた。因みに、プロフェッサーDの姿も消えていた。


「トリスちゃん、遣り過ぎよ。大丈夫?」



「はっ!クレアさん…。私は一体…?」



「覚えて無いなら、仕方無いわね。またプロフェッサーDが襲って来たのよ。トリスちゃんが撃退しちゃったけど。取り敢えず、疲れたでしょう?皆のところへ戻りましょう?」



 クレアさんに連れられて、私は一度皆のところへ戻る事にした。






 夕食を囲みながら、私は徐に口を開いた。


「あの…出発なのですが、2日程猶予を頂けませんか?」


 真剣そうな私の発言に、視線が集まる。


「どうしたんだ?何かあったのか?」


 心配そうに、カイル君が聞いてきた。


「大したことでは無いのですが…備品の調達に時間がかかりそうなんです。」


 ね?とクレアさんに首を傾げる。


 それを受けて、クレアさんが援護してくれた。


「ふふぅん。女の子にはね、男には無い苦労があるのよ。ってことで、いいわね?カイル君、アリ君、フォル君。」


半ば強制的な物言いで、言い渡してくれた。


「ノノに依存が無ければ、俺は構わないぜ?」



 フォルフェクスさんが、依頼人であるノノさんに確認をとる。


「私も大丈夫です。ちょうど見に行きたい所があったんです。フォルフェクスさん、お相手お願いします。」


 ノノさんは、恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「ふむ、では、明日は自由行動で、明後日、出発するぞ。いいな?」


「了解です、アリ君。ありがとうございます。」


「では、会議はこれで終わりだ。」


 ちょうど皆の食事も終わり、会議は解散の運びとなった。

 各々が、部屋へと帰って行く中、私はアリ君を呼び止めた。




「アリ君、ちょっといいですか?」


「何だ、トリス。」


「一応、伝えておいた方が良いかと思いまして…。」



「ちょっと待て。カイル。クレアも、ちょっと集合。」


「何故、彼らを呼ぶのです?」


「今までの傾向と対策から、お前の話は共有しといた方がいいかと思ってな。ついでに、明日の行動方針も話しといた方が良いだろ?フォルフェクスはノノと一緒に行動するだろうからな。」


 さぁ、話せ、とばかりに、アリ君は私を見た。

 実は…と、私は昼間、プロフェッサーDのアレに襲われた事を伝えた。そして、クレアさんが補足する。彼が去り際に残した、「まだまだ改良の余地がある」という発言を。


 それを聞いたアリ君は、暫し何事かを思案すると、


「クレア、明日は付き合ってくれ。」


と、彼女を誘った。


「あら、デート?いいわよ?」

それに乗っかるクレアさん。


「トリス、じゃあ、俺らもデートしようぜ♪」


更に乗っかるカイル君。


「えっ?」


 私は状態に付いていけず、一瞬フリーズした。


「あら、じゃあ、ダブルデートね(笑)」


茶化すクレアさん。


「なっ…違うぞ?私はだなっ」


アリ君が、慌てて訂正しようとする。


「固い事言わないの。決定よ♪」


が、クレアさんの押しの一手で、皆仲良くお出かけする運びとなった。



 翌日。

 ノノさんとフォルフェクスさんが出掛けた後。

 組み合わせ的には、アリ君とクレアさん、カイル君と私の二組で、昨日プロフェッサーDに襲われたのと違う、郊外の公園へと向かっていた。

 途中、皆で摘まめる軽食の類いを買うのも忘れない。


「クレア、私は本来、パーティーの連携について打ち合わせをするために、お前を指名したのだが、何故、ダブルデート等と言うものになったのだ?」


「あら?嫌ねぇ。あんまりにも甲斐性が無いから、ちょっと練習くらいした方がいいと思ったからよ?あなた達二人とも。」


「今は、そんな事より事件の解決の方が先だろう。」


「これだから戦術馬鹿はっ。いい?こういう事にタイミングなんて関係無いのよ!」


「時間の無駄だな。」


「なあ、アリ、クレア。俺はトリスと模擬戦でもしておくから、二人はその間に作戦会議でも何でもすればいいんじゃないか?」


「ああ、それなら、ダブルデートっていう理由が分かりました。アリ君とクレアさんの二人で恋愛的なデートをなさるのかと思ってましたよ〜。」


「仕方ないわね、そういう事にしておいてあげるわ。」


 私達3人の、あんまりにも残念な反応に、クレアさんが折れた。



 そんな雑談を交わしながらも、郊外の公園に着いた。公園、といっても、キャンプをしたりも出来る、自然公園である。


 私とカイル君は、せっかくなので、火を起こし、軽いキャンプベースを作ると、夕飯用の狩りをする事にした。勿論、鍛練の意味合いも兼ねて、競争である。


 そして、ベースキャンプから、獲物の気配を探ろうとしていた私は、意外な物音を耳にする。


「…という訳ですの。フォルフェクス様。」


 なんと、別行動をしていたハズの、ノノさんと、フォルフェクスさんの密談っぽい声である。

私は、急いで、かつ静かにクレアさんに報告した。


「なんですって?そんな面白そうな事、見逃しちゃいけないわっ。アリ君もカイル君も、トリスちゃんも、こっそり着いてらっしゃい。」



 そうして、クレアさんに半ば強制的に、私達は木陰からノノさん達の様子を覗き見ようと身を潜めた。


 ノノさん達の近くの繁みに近づきかけた、その時である。


バサバサバサバサッ


 多数の鳥が、一斉に羽ばたき、飛び立った。

そして、あの声が、辺りに響き渡ったのである。


「ふひゃひゃひゃひゃ。嬢ちゃん達、皆お揃いのようじゃのう!儂の可愛い愛機・バード3号ちゃんの実力を受けてみぃ!改良に改良を重ねた自信作じゃ♪」


ギェギェ〜…


と、鳴き声の様な怪音を発し、全長15mはあろうかという巨体が宙に浮かび上がっていた。その姿は、さながら鳥の様な、首の鱗が蛇を思わせる、なんとも歪なものだった。


「何の騒ぎだっ。無事かっ?」


 ザザッと茂みを抜け、今来ました、という体でもって、私達4人は、フォルフェクスさん達と合流する。


「おう。こっちは大丈夫だっ。」


 何の疑いもなく、フォルフェクスさん達は私達を受け入れた。



「ヒェッヒェッヒェッ。よそ見はいかんよ?嬢ちゃんや。今回は今までの様にはいかんぞな!ポチッとな♪」



 またも、プロフェッサーDは、怪しげなボタンを押した様だ。


ヒュルルルルル


という音と共に、怪鳥の口から石榴が飛んできた。



危ない、着弾する、



 そう思って身構えた私だが、思わぬ援軍によって、爆発は防がれた。


「危ねぇ!!!」


 何と、私達のグループの前に立ち塞がり、爆風を防いでくれたのは、ノイマンさんだった。

 どうも、戦闘を求めて、私達を追ってきていたらしい。


「ノイマンさん、ありがとうございます。大丈夫ですか?」


 だが、本来、攻撃タイプの戦士である彼は、無理矢理私達を庇ったらしい。頭からは、どくどくと血が滴り、その他にも多数、傷を負っている様だ。


「庇いきれずに済まねぇな。俺が今回手助けできるのはここまでだ。後はお前らで何とかしてくれ。何。俺の事は心配要らねぇ。優秀な副官が手当てしてくれっからよ。」


カラカラと笑いながら、ノイマンさんは言った。


「分かりました。怒りましたよ。今回で、あのプロフェッサーDとやらは、きっちり絞めますから。」


そう請け負って。

私は、キッと怪鳥を睨み付けた。




 一方、ちょっと離れた場所では、


「変身」

という呟きと共に、フォルフェクスさんを中心に、目映い光が放たれていた。

 そして、爆撃からノノさんを庇う様に立ちはだかていた人物。


 その姿は機構馬に乗るときの革スーツの様なモノを全身に纏ったスタイルに代わっているが、立ち位置から考えて、あれはきっとフォルフェクスさんだろう。

 彼らも安全は確保した様だ。



 その様子を確認して、私が、


「いきなり何をするんですかっ!?」


と怒りの声を上げる。

 プロフェッサーDは、悪びれもなく、


「勿論、性能テストじゃ♪飛行性能はまずまずじゃな。次は高所からの攻撃じゃな♪」


愉しげな声で答えた。


「いい加減にしてください!人を勝手に実験材料にしないでくださいっ!!!」



「知らんのう。ほれ、ポチッとな♪」


 プロフェッサーDは、又も怪しげなボタンを押した様だ。


クケェェェェ…


 怪鳥が鳴き声を上げて羽ばたくと、脚を使って引っ掻き攻撃をして来た。


「させるかよっ!」


カイル君が身を呈して、私達のグループを庇う。そして、お返し、とばかりに、受けたダメージを上乗せして叩き込む。


ガィィンッ


 金属的な音を響かせて、カイル君の剣は怪鳥に命中した。


 これ以上、攻撃させてはいけない、と、私も上空にいる怪鳥目掛けて剣を投げ付ける。

 浮かせた魔剣を立て続けに浴びせかけても、びくともしない。


「俺に任せろ。」


 フォルフェクスさんが私の肩に手をかけ、後ろへと下がらせる。


「地獄で後悔するんだな。」


 そう呟くと、彼は上空高くにジャンプした。

何やらベルトに力を込めると、円錐形の光の渦が、怪鳥の心臓辺りにその陰を照らした。

 そして、一直線に足先からその円錐形の光の渦を目掛けて飛び込んだ。


 後には、〇にχのマークを付けた怪鳥が残った。



一瞬の後。



チュドーンッ…。



という音と共に、怪鳥は爆散した。


 その、操縦席と思しき頭部が、爆風をものともせず、


バッシャーン


と水柱を上げながら川に着水した。


「儂は、まだまだくたばらんからな〜!ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ…」


 不吉な声を残して、下流へと流れて行ったのだった。



私と、プロフェッサーDとの戦いは、フォルフェクスさんのお陰で、ようやく幕を下ろしたのだった。






ありがとうございました。

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