27、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)第13階層 2
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27、『アルゴス』さんへ~幽世第13階層 2
かつて、唯一神・《アー》は世界を創り、己が権能を分け与えた22の御使いを創りたもうた。《アー》は、彼等に自由意思を与えた。また、《アー》は、『闇の鎖を覗くべからず。覗けば、闇に囚われん。』と宣いて、地上の管理を、これら22の御使いにお任せになった。22の御使いは、自らの手足となるべく、数多の使者を創り、母なる《アー》の教えを、これ等にも守らせた。22の御使いの創りし使者にも又、自由意思が与えられていた。彼らは、各々が判断で、地上に秩序をもたらそうと躍起になった。少しずつ光の届く範囲を広げていくと、彼等は異変に気付いた。闇が統べる地上には、既にヒトが居たのである。彼等、使者達の一部は、他の異変を事前に見つけ、解決するために、母なる《アー》の言い付けを破り、闇を覗いてしまった。そうして、最初に闇を覗き、闇の鎖に囚われ、闇に堕ちたモノ達が、原初の魔神達である。その、リーダーたるモノが、《魔神・シャハス》である。彼等は、光たる唯一神・《アー》やその眷属たる22の御使い達に、反旗を翻した。これが、神話にある、天地大戦である。長く激しい戦いの末、光は闇に打ち勝ち、 《魔神・シャハス》の精神と肉体を分離。その肉体を12に分け封印し、精神を、虚無が支配する『奈落』へと追いやった。闇に連なるモノ達は、《 魔神・シャハス》を魔王に、10柱の上位魔神、12柱の上級魔神、その他下級魔神と、序列を成しつつ、 闇の勢力拡大を謀っている。闇の勢力は、幾つかの派閥を形成し、互いに争いながらも、現世への侵攻を目論んでいる。幽世とは、現世へのフィルターであり、『奈落』に近づく程、魔神の力の増す世界でもあるのである。
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なんて真教の知識が頭を掠める程に、今の状況は、危うかった。
10柱神クラスの力ある魔神が、同時に二体も、魔神本来の力を曝した状態で敵対しているのだ。
しかも、話し合いは無意味と言って差し支えない。
私は、自分達の不利に、眩暈すら覚えた。
頭の中で、戦力を分析する。
幾つもの魔神を屠ってきたダンテさん。
鬼にあっては鬼を斬り、神にあっては神を斬り、目の前に立ち塞がる壁は力ずくで踏破してきたルミラさん。
実力は知らないけれども、異国の神々を使役する業を持つ雷号さんと相棒の轟天号ちゃん。
弥都トップクラスの武神スサノオノミコト様。
そして、アリ君の居ない状態の私、トリス。
全力で戦うことは、端から当然。
一体であれ、実力は相手が上。
だからと言って、私は…、私には、負ける気が無かった。
だって、約束したから。
生きて、あの人の元に戻ると。
だから、丹田に力を籠める。
負けない為に、帰る為に。
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スサノオ君が、宣言した。
「皆さん、僕が、武神として、加護を約束します。貴女方の力は、八割増しだと考えてください。」
続いて轟天号ちゃんが言った。
「《電脳神・ゼウス》とやらは、俺らが担当するゼ!雷号の式神は、強いからな!」
「OK!さぁ、やるか!」
ダンテさんには、不安の色は見えない。
「ワクワクするゾ♪」
ルミラさんは、戦闘モード。
私は、ふぅ。と肩の力を抜いて、虚空を見上げた。
そして、大きく息を吸い込んだ。
切り札を切るのは、今しか無い。
此処が、最高のタイミングだと、本能が警鐘を鳴らす。
「助けて!!!アリ君!!!」
本能に従い、心の底から、愛しい名を呼ぶ。
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それは、私が叫んだ途端の出来事だった。
空が割れ、虚空から轍をなぞる鉄の箱…馬の居ない馬車の様な物体が、プァァァァンという音を鳴らして私達の前に飛び出して来た。
そこから降りて来たのは。
私の最愛。
私の最高の軍師。
アリ君こと、アリス・トートスその人だった。
ネタをばらすタイミングが難しいです。
やっと合流させられました。
次こそ、格好いいアリ君を書けると良いのですが。
私は、その為にこの文章を書いていると言っても過言ではありませんから(笑)。
お読み頂き、ありがとうございます。