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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
『アルゴス』さんへ
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26、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)第13階層 1

遅くなりました。

よろしくお願いします。

26、『アルゴス』さんへ~幽世かくりよ第13階層 1








「雷号、轟天号。このあとはどうするのです?」


スサノオ君が、庵を収納しながら雷号さん達に聞いた。



「直ぐに報告に上がりたいところですが、我々の修練がてら、更に幽世かくりよ深部へと潜る積もりです。中々来れる階層でもありませんし、式神の一つでも手に入れたいですね。」




察するに、彼らの行き先も、私達と被るらしい。否好意で着いて来てくれるみたいである。

指摘しようとすると、轟天号ちゃんに睨まれた。


「嬢ちゃん、勘違いしちゃあいけねぇぜ?俺らは、あんたの為に行くんじゃねぇ。俺らの為に行くんだ!」



とんだツンだった。黒猫に睨まれて、心が和む。萌えるなぁ。とか考えてたら、轟天号ちゃんは、雷号さんの肩にストンと飛び乗って、私から見えない位置に移動してしまった。残念。





****************



「良いですか?此処から先が、13階層への入口です。準備ができたら、突入しましょう。」



スサノオ君が、幽世かくりよの境の壁に穴を開けて、道を創る。


いよいよだ。


ドキドキしながら、私は足を踏み出した。




ぐにょんとした、独特な感触を潜り抜けると、辺りの風景が一変した。

うっすらと一面に輝く、蒼白い地平が、広がっている。空中には、キラキラとした細やかな欠片が、宙を舞っている。何処か幻想的で、でも無機質な、そんな空間だ。



「漸く来たのね。ロスタイムが多すぎるんじゃないの?遅刻よ遅刻!!遅すぎだわ!せっかくご招待したのに、レディを待たせるなんて不届きよ!!私を待たせる罪と、私の幽世せかいを乱した罪は重いんだから!あんた達は、私、『ナビ子』が、電子に代わって成敗しちゃうんだから☆」



見慣れた緑色のショートカットの髪型、そして、聞き慣れたハイ・トーンの声。少女の形を模した姿が、目の前に現れた。




「貴女の幽世かくりよを乱す積もりは無かったのです。それに、貴女に招待される覚えも、私達には無いのですよ。」



第9階層で、ナビゲートして貰って以降、『ナビ子』には、お世話に成りこそすれ、彼女の邪魔をした覚えも、彼女の招待に応じた覚えも、私には無かった。

だが、彼女(ナビ子)にとっては違ったらしい。


「整然とした電子配列の支配する世界で、外から紛れた異分子、神々の欠片を宿せし者(ピース・ホルダー)。通称、バグ。汝等は、この私の幽世せかいでは、『悪』その物。確実に排除出来る領域で、我が力と成す事は、正義!!」



ナビ子の感情?が高まるに連れて、幽世せかいにノイズが走る。ザザッ。ザザッ。と、砂嵐の様な不快な歪みが、ナビ子の姿と形、存在を変質させて行く。



蒼白い世界が、赤く染まった。



『アラート!!!アラート!!!』




けたたましい警報音が鳴り響く。




『警告シマス!主神《電脳神・ゼウス》ノ、疑似人格《なび子》ノ変質ヲ確認。主神《電脳神・ゼウス》モードヲ起動シマシタ。』


いつか何処かで聞いた様な、理知的な電子音声で、事態を告げる警告が鳴る。



警報音が止み、砂嵐が治まると、其処には、黄金色の巨大な球体が出現していた。


此方が事態を把握する前に、目の前に現れた、元『ナビ子』だったモノが、おもむろに口を開いた。



『我が名は偉大なる《電脳神・ゼウス》!神々の欠片を宿せし者(ピース・ホルダー)どもよ、我が力となれ!!!此度は虐殺の宴なり!』



その男とも女ともとれない声には、『ナビ子』だった時の怒りの感情が溢れんばかりに籠っていた。そんな様子を察知したのか、先程の理知的な電子音声が、穏やかに告げた。



『《電脳神・ゼウス》ノ過剰行動ニヨル負荷ニヨリ、幽世かくりよ順行システムダウン。自己防衛システム《電脳神・クラスター》分離、自律行動ヲ 開始シマス。然ル後、ばぐノ排除ヲ実行シマス。』


ピコン。

と、甲高い音がした後、現れたのは。

巨大な黄金色の男性の頭部。

第9階層で助けてくれた、情報管理システム《クラスター》だった。




「成る程ナ。今回巡ってきた幽世かくりよは、同質世界を構成する多重層的構造の一連世界なのダナ。最下階層から上階層へと幽世せかいを侵攻してきていたのか。で、その首魁が《電脳神・ゼウス》なる存在で、《ナビ子》の人格は、ソイツの隠れ蓑なのダナ!ここに来て、素が出てきたと見えるゾ!」


ルミラさんが、嬉々として状況を語る。


「そうか!主神格の《ゼウス》とやらのサポートが《クラスター》である、と。なぁ。ルミラ?これは、不味くないか?」


パチンと指を鳴らして、ダンテさんも状況を理解した模様。



「不味いナ!でも、幸運とも言えるゾ♪幽世かくりよからの異世界侵攻を未然に防げるんだからナ!それに、あれらを屠れば、強く成れるゾ♪」



あははははは、と、楽し気に嗤うルミラさん。



「いいねぇ。滾るぜ!!!」



ダンテさんにも、戦闘のスイッチが入ったのが分かった。


そう。この第13階層の幽世かくりよの主は、二柱の、超上位魔神だったのである。














ありがとうございました。

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