18、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)第9階層、9
17、『アルゴス』さんへ~幽世第9階層 9
「これから、どうするんですか?」
活動資金の目処も立ち、私は途方に暮れていた。
銀行を出ると、辺りには人工物ばかりが目に写り、自然が好きな私の心に、落ち着かない焦燥感が広がる。
マナ…自然界に満ちている筈の魔力とでも言うべき力が、この幽世には感じられないのだ。
否、感じられない、というよりも、極端に希薄な感じがするのである。
「資金も手に入ったし、情報を集めるのが良いだろうナ♪『ナビ子』の情報によると、ホワイトエリアと呼ばれる場所にある大図書館で、ある程度の情報は、閲覧が可能な様だゾ!市民ランクが高い程、開示される情報も多いらしいナ♪但し。Xランクの情報は無いらしいゾ。考察するに、Xランクとは、市民権を持たない、管理外の存在、という事になるのではなかろうかと、ワタシは思うゾ♪因みに、Xランクの者はブラックエリアに住んでいるらしいナ!」
ルミラさんが、謎の言葉を話し出した。
正直、私には、彼女の話している事のほとんどが理解出来なかった。
だが、ダンテさんには理解が出来たらしく、
「成る程な。大図書館とやらで情報を引き出すか、ブラックエリアに出向いて情報を漁るかってところだな。正直、俺は管理された情報ソースを当たるより、管理されてない生の情報を探す方が性にあってるな。」
と、納得の御様子。
「えっと…つまり、どういう事なんですか?」
おろおろとする私を見て、二人は言った。
「「どうやって情報を集めるか、って話しだな(ダゾ♪)。」」
二人は声を揃えて教えてくれた。
でも、理解の及ばなかった私は、重ねて、
「つまり…?」
ごくり。と、息を詰めて尋ねた。
左右から、ダンテさんが、
「Xランクがいるというブラックエリアに行って、この幽世のルールとルーラー…この場合魔神等だな…が、何処に存在しているか聞き出すか、」
と、ルミラさんが、
「ホワイトエリアにあるという大図書館で、この幽世世界の情報を引き出すかって話しダゾ♪」
と、分かりやすく答えてくれた。
「だがな、ワタシは、大図書館で、情報を得るのは、最後が良いんじゃ無いかと提案するゾ!」
ルミラさんがそう言うと、合点した、という様に、ダンテさんがパチンと指を鳴らして続けた。
「成る程。大抵の場合、ルーラーは、権力者か、犯罪者…この場合は反社会主義者か…であることが多いからな。監視者の目に留まるリスクの少ないブラックエリアから当たるのは、理に敵った考えだな。」
ルミラさんの発言に、納得するダンテさん。
「そういうモノなのですか?」
ここの流儀が今一分かっていない私には疑問しか無かったが、
「そうダゾ♪」
…そういうモノらしい。ルミラさんに断言された。
「とりあえず、『ナビ子』で場合の確認だけでもしてから、行き先を決めませんか?」
旅の基本である、目的地の情報確認をする事を、私は提案した。
何故なら、ルミラさんとダンテさん、両者のどちらの言い分にも納得できる部分があり、どちらの事を
優先するか、悩んだからだ。
「そうだナ。トリス、頼んだゾ。」
ルミラさんの発言を受け、私は起動している『ナビ子』に話し掛けた。
「『ナビ子』、ブラックエリアと大図書館は、どちらが此処から近くに有りますか?」
『はいはーい♪ナビ子ダヨ♪近いのは、大図書館だね♪ブラックエリアへの立ち入りは、ホワイトエリアへの帰還が不可能になるから、オススメしないヨvvv』
矢鱈とテンションと、キーの高い女性の声が、そう言った。
「何て言っているんだ!?」
はっきりとした、耳が痛い位に耳障りな音声なのに、ルミラさんとダンテさんには、聞こえていないらしい。
「…聞こえていないのですか?」
「ああ、さっぱりだな。」
「聞こえないゾ!」
私の疑問に答えて、
『当方は、ご主人様の秘密を守る、忠実なるナビゲーションシステム『ナビ子』です★リンクをしていない方との通信は不可となります☆ミ』
『ナビ子』が答える。
取り敢えず、私は、『ナビ子』の言った事を伝える事にした。
「どうやら、ブラックエリアに入ると、ホワイトエリアには入れなくなるみたいなんで、大図書館を先に調べないとお話にならない様です。」
私の言葉を聞き、二人は頷いた。
「なら、行き先は決まったナ♪大図書館だゾ!」
「分かりました。『ナビ子』、大図書館に向かいたいんだけど、どう行ったらいいのでしょうか?」
私の問いに、『ナビ子』が、
『はいはいはーい♪では、大図書館まで、ご案内しまーす♪』
ピコン!と言う音と供に現れ、中空に地図を映し出す。そして、現在位置と、目的地迄のルートが、現在見えている道の上にも表示される。不思議な事に、他の人には、このナビゲーションは見えていないらしい。
『ナビ子』の案内に導かれ、私達は、大図書館へと足を運んだ。
ありがとうございました。