16、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)・第9階層 7
ご無沙汰しています。
短いですが、宜しくお願いします。
16、『アルゴス』さんへ~幽世第9階層 7
ガシャーン!!!!!!!
物静かな室内に、ステンドグラスが割れた時の様な破砕音が響いたのは、私達が、ナビ子の案内によって、窓口へと足を運ぼうとした、正にその時だった。
ルミラさん、ダンテさん、そして私の3人は、その瞬間、弾かれた様に、武器を預け入れたボックスへと駆け寄っていた。
ビービー!ビービー!
けたたましく鳴り渡る警戒音。
事態を把握しようとざわめき出す銀行内。
厳ついデコデコとした鉄パイプ状の、恐らくは、『火炎の杖』と思われる武器を所持した連中が、50人ばかりの集団で、室内へと侵入して来る。
周囲を威圧しながら踏み入って来る混乱に乗じて、私達は、相棒たる武器を手にするべく、素早くボックスを叩き壊す。
侵入者の動向に、注意を払いながら。
そんな私達の行動を知ってか知らずか、
ダダダダダダダダダダダダダダダッッッッッッ!!!!!!
乾いた爆音が鳴った。
「フリーズ!!動くんじゃねえ!!!!動いたら、無事じゃ済まさねぇぜ!!!さぁ、命が惜しかったら、言うことを聞いて貰おうか!!」
ホールに大音声が響く。
爆音に驚いた人々が静まり返ったおかげで、犯人の声が、朗々と聞こえた。
もうもうとあがっていた砂煙が晴れる。
既に自分たちの相棒を取り戻していた私達は、カウンターを盾に、武器を構えて、様子を伺う。
目視で、侵入して来た連中が、犯罪者だと認識した私達は、小声で、執るべき行動方針を確認する。
「大した敵じぁねぇなぁ。ルミラ、俺は右を貰うわ。」
「おう。ダンテ。ワタシは左に行くゾ♪」
「あの、私は…」
「「トリスは、万が一ワタシ(俺)が打ち漏らしたら、ソイツを頼むゾ(ぜ)」」
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結論から言うと。
ルミラさんやダンテさんは、あっという間に犯罪者を制圧してしまった。
それこそ、ものの数瞬で。
私の出番は、まるっきり無かった。
瞬く間に鎮圧したその行為は、立派な正当防衛であり、犯罪を未然に防いだ英雄的行動として褒められるモノである。但し、現世に於いては。
では、この、幽世第9階層では、と言うと。
1、私達は、民間人である。
2、民間人は、武装はしていないハズである。
3、武力による犯罪を、武力で解決できる民間人=テロリストである。
と言う事になるらしく。
「警察だ!!動くな!」
…私達が、公的機関に、指名手配される事態になってしまったのだった。
年末年始は、更新が難しいかと思います。
ご了承ください。
ありがとうございました。