15、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)・第9階層 6
15、『アルゴス』さんへ~幽世第9階層 6
「ここか…。」
空の見えない程高い四角い建物(ビルと言うらしい)の中でも、一際大きな建物の前に、私達は居た。この街には沢山溢れているピカピカ光るネオンは、極々少なく、大きな建物の割に、他者を受け付けない、硬いイメージを受ける建物である。
中を伺い知る事の出来ない、玻璃の様な扉の前に立つと、シュンっと音も無く、扉が消えた。
「!?」
私が驚きに目を見張ると、こっそりルミラさんが呟くのが聞こえた。
「ふむ。扉の前にナビ子を起動させた人物が立つと扉を解放するオートメーションシステムか…。ワタシのラボでも研究してみる価値はありそうダナ。」
ルミラさんが、何を呟いているのか、理解が出来なかった。そこに、ダンテさんから助言が入る。
「ルミラの事は放っておけ。技術者としての、研究者の血が騒いでるだけだろう。後、扉は上に上がって行っただけだ。目視出来たからな。扉が閉まらんうちに、行くぞ。」
ダンテさんに急かされる様に中に入ると、入り口のところで、警備クレアータが寄って来た。
『ココカラ先ハ、武器類ノ持チ込ミヲ、オ断リシテオリマス。武器類ハスベテ、一時的ニ、金庫二オ預ケクダサイ。』
「参考までにお聞かせ願えますか?預けないと、どうなりますか?」
『指示ニ従ッテ頂ケナイ場合、強制排除ノ対象ニナリマス。従イマスカ?』
「…預けます。何処に置けば良いですか?」
『コチラノ台ニオ置キクダサイ。ボックスニシマイマス。』
警備クレアータの誘導に従い、私はザラザラと武器類を取り出してゆく。
(いざとなったら、この鞄で変形出来ますものね。)
こんもり山となった私の愛用の武器類を見て、ダンテさんとルミラさんが口を揃えて言った。
「相変わらず、凄ぇ量だな。」
「トリス、相変わらずの量だナ。流石だゾ。」
『コレデ全テデスカ?』
私は少しだけ考えた。
(パンドラは武器にもなるけど…分類は鞄よね。)
そして、ニッコリ笑って、
「全部です♪」
と答えた。
ルミラさんは、
「生身は武器類にカウントされないよナ?」
と警備クレアータに確認を取っていた。
『身体ハ武器ニ分類デキマセン。』
「有り難う。なら、コレだけダゾ♪」
ダンテさんは、苦悩した後、観念した様に、銃器をゴトリゴトリと置いた。
『金属反応アリ。武器類ノ提出ヲオ願イシマス。』
「~…。分かった。」
渋々と承諾して、ダンテさんも、遂には勧告に従い、暗器の類いを置いた。