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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
『アルゴス』さんへ
129/151

13、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)・第9階層 4

大変申し訳ありません。

筆者のミスで、1話抜けておりました。

投稿後ではありますが、追加でアップしました。

既に御目を通されてしまった方には、お手を煩わせてしまぃ大変恐縮ですが、前話からお読み頂けますと幸いです。

13、『アルゴス』さんへ~幽世かくりよ・第9階層 4






ダンテさんが掴んだ情報を元に、連れて来られたショップは、幾つもの路地を曲がった先にある、入り口の見つけ辛いお店だった。しかも、何やら壁にカード状のものを差し込む窪みが、巧妙に隠されていた。

入店手順は、予め調べてあったらしく、ダンテさんは、慣れた手付きで隠し扉を開けた。


「急げ!」


ダンテさんに急かされるままに、私達は素早く店内に入った。

入ったと同時に、後ろで扉の閉まった気配がした。


薄暗い室内の奥から、タキシードを身に纏った初老の好紳士が、音もなく姿を現した。


「いらっしゃいませ。お客様。本来ならば、一見さんはお断りなのですが…間違えもせずに入店していらしたからには、大事なお客様です。何をお求めで?」


カウンター越しに、此方を伺いながら、接客してくる。人目が苦手な私には、値踏みでもされているかの様な視線は気になって仕方ないのだが…。そんな事は意にも介さず、ダンテさんは、皮袋に入ったクラウン金貨や、現世で買ったと思しき宝石類を、無造作にも、ジャラジャラとカウンターの上に載せた。


「これで、身分証と衣類を買いたい。3人分だ。」


おや、と目を見張った店主だったが、素早く損得勘定に目処が立ったのだろう。威圧感をふっと消して、



「自然素材の衣服に、天然の鉱物、ですか…。成る程。詮索は無用ですな?どういったランクでの身分証をお望みで?」



金貨や宝石類を手に取り、ルーペみたいな何かで品定めしながら聞いてきた。

ダンテさんは交渉を一手に引き受けてくれる様で、私達に『黙って任せろ』と目配せして続けた。



「金貨をこの街で使える様に換金するのに、不自然のない位の身分がいいな。その宝石類を持っていても不思議じゃない位なら尚望ましい。可能か?」



男はにやっと笑うと、



「報酬さえ戴ければ、黒も白に変えてみせるのが、ブラックマーケットの基本、でございましょう?」


と答えてみせた。


「ふっ。当然だろうな。だからこそ、この店にしたのだから。勿論、秘密厳守で頼むゼ?」


ダンテさんが念を押す。


「ええ。商売は、信用第一、でございますからねぇ。此方から話すことはございません。」


「更に金を積まれない限り、か?」



「おや。心外な。損があれば、得もある。という事でございますよ。」



「対価は何だ?」



「そうですね…天然素材の服3人分、と、言った所でしょうかね。金や宝石より、そちらの方が宜しいですな。それで手を打ちましょう。」



ダンテさんが此方を見て言った。


「という事らしいが、予備の服との交換、だか…大丈夫か?」



「勿論だぞ♪ワタシは色々持っているからナ!構わないゾ♪」


「私も大丈夫です。パンドラ(鞄)に色々詰め込んでいますから。夜会用の高級ドレスから鍛練着、おねえさまに持たされた軽装まで、数着持ってますから、一着くらい平気です。」



それを聞いた店主は、笑みを深くして、


「それは宜しゅうございました。」


と、パチン。と指を鳴らした。


すると、音もなく壁に3つの扉が現れた。


「それぞれ別々にお部屋へお入りください。衣服が用意してあります。先ずはお着替え願います。」



私達は、それぞれ別々に、部屋に入って着替える事になったのである。




****************






(ひゃー…下着から着替えるんですね…。)


個室に入り、用意されていた衣服を広げて、私は顔が赤くなるのを感じた。

しっかり下着が用意されていたのだ。


見た事の無い素材の衣服は、不思議な手触りをしていた。薄そうで頼りないが、この世界に紛れるためには着るしか無い。

そう思って、ある程度薄着をして、上着だけ、羽織ってみたのだが…。鏡に映る姿は、とても歪だった。

なんというか、全体に、モゴモゴしたフォルムになるのだ。身体にピッタリとフィットし損ねている感が半端無いのである。それにも関わらず、外装は一瞬で硬さ(防御力)を備えている事が感覚的に判った。



(…そうですよねぇ…。確かに、こちらの技術では、下着から変えないと不自然さは出てしまいますもんね…。この着方では、不恰好過ぎて、目も当てられませんね。)



私は観念して、下着を着替える事にした。




良く伸びる、ぴっちりした下着と、胸当て付きの肌着は、私の身体にピッタリとフィットして、緩くもなく、キツくもない程度に自動的にサイズが調整された。採寸もしていないのに、不思議な事ではあるが。

あまりの自然な着け心地に、若干、裸でいるかの様な心地がして、心許ない。

そんな事を考えていると、目の前の鏡に、最新の流行りの衣装が次々に表示されていく。


『肌着の装着を確認しました。では、お好みの衣装に、タッチして下さい。衣装を転送します。』



突然話し掛けられて、尻尾が毛羽立つ。


だが、鏡に、音声と同じ文字が映し出されて、内容を理解した。


置いてあった衣服は、試着用の借り着であり、きちんと肌着を着ると、次の行程へと案内を進めてくれるモノらしい。と。


鏡に映る映像とにらめっこして、私が選んだのは。全身を覆う黒を基調とした、ハイネックの長袖にタイツ。その上から、沢山の隠しポケットのあるパンツに、ゆったりとして見えるチュニック、その上から羽織る、フードの付いたアウターである。足下は、動きやすい機能を搭載してある(らしい)可愛らしい靴にした。とは言っても、好みの機能を伝えたら、流行に合わせて自動的にピックアップしてくれたモノなのだが。



因みに、着替え終わった服は即座にバンドラに仕舞って、引き換え用の当たり障りの無い服を用意してから、私は小部屋を後にしたのだった。






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