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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
『アルゴス』さんへ
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7、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)・第6階層 3

7、『アルゴス』さんへ~幽世かくりよ・第6階層 3





《ルミラの場合》********







周囲には、漆黒の闇が広がっている。

辺りには、ただ闇が広がって、自分以外の何者も居ないと錯覚するほどに、何の気配もない。


そんな、暗闇の中、不意に、ルミラは、良く見知った気配を感じた。


ルミラは、一瞬、自分が何処に居て、自分がどうして此処に居るのか、忘れていた。


何故ならば、その気配は、懐かしい、そしてとても慕わしい、敬愛するその人のモノだったから。


かつて倒したはずの人ー…ナディアねぇさんが立って居た。


6歳で豚人族オークに家族を、村を襲われた。強さを求め、養父アーサガ・オニッツに『生きた盾』として拾われた。数々の戦場を渡り歩き、血にまみれた狂戦士として名を馳せて居た。復讐する為に。そんな時、戦場で出会うと、いつも全力で斬り結んだ。その相手が、闇の中に潜んで居た。



ルミラは、知らず、呟いていた。


その人の名を。




「ナディア…ねぇさん…。」




彼女は、ルミラにとって、出会えば全力で斬り合う、戦闘の師匠の一人であった。

強さの為には、闇の卷属になる事も辞さない、強い人。

憧れでもあったその人が、もう二度と出会えないと思って居た人が、目の前に居る。

かつて、自分の手で、死を与えた、敬愛する彼女ナディア

呆然とするルミラに、ナディアは言った。


「よぉ。ルミラ。久しぶりじゃねぇか。さあ、殺ろうぜ?」



その言葉に、ルミラは、咄嗟に剣を振るっていた。



「いきなり斬り掛かってくるとは、やってくれるねぇ。」



そう言って斬り掛かってくるナディアねぇさんは、余りにも記憶にあるままで…ルミラは暫く我を忘れて、戦闘に没頭した。

十六枚の、赤い剣を、翼の様にひろげると、即座に《絶対必中》の切り札を繰り出した。そこには、微塵の躊躇いも無かった。



「俺なんかに、全力を出して、良いのかよ?」


愉しげに、ナディアは嗤う。ルミラの攻撃を全て交わしながら。

警戒態勢を崩さずに、ルミラは断言する。


「ナディアねぇさん相手に、手加減何て無理!!例え長い旅路でも、貴女に相対して切り札を切らないのは、あり得ない!!」



ナディアのその強さも、ルミラにとっては、懐かしいモノであった。


…だが、ルミラは、彼女は、忘れて居た。此所・・何処・・で在るかと言う事を。



「ルミラよぉ…お前、なまったんじゃねぇか?まだまだだなぁ。クックックッ。俺は別に楽しいから良いんだけどよぉ。」



ルミラの猛攻を受けながら、楽し気に話すナディアの台詞に、ルミラは、ハッとした。


「しまった!攻撃すべきは、此方か!!」


ルミラはそう言うと、ナディアではなく、周りに広がる暗闇に向かって一閃を繰り出した。


すると、パリンと空間が砕けた。


「漸く気付いたか?遅ぇよ。甘ちゃん。ほら、行ってこい。久々に、楽しかったぜ。」



薄れ行く闇の中に、ナディアねぇさんの温かな声が聞こえた様な気がした。






そして、ルミラは、トリスの隣へと降り立った。




本日も、キリが良いので、短いけど、此処までです。


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