表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
『アルゴス』さんへ
121/151

6、『アルゴス』さんへ~幽世かくりよ)・第6階層 2

6、『アルゴス』さんへ~幽世かくりよ・第6階層 2







《トリスの場合》********



気が付くと、私の目の前に、自信に満ち溢れて、他者を見下した雰囲気を醸し出す私自身・・・が居た。


辺りは一面の闇。


鏡合わせのように、ただ、二人だけが向き合っていた。



薄闇の中、コツコツと、足音だけが鳴り響く。


足音を立てて、ゆっくりと近づいて来たソイツは、私の前で立ち止まる。


私の身体は、ピクリとも動かせない。

焦る私の内面を無視するかの様に、ソイツは、優しく私の肩を抱いた。

そして、私の全身を、下から上へと舐めるように視線を這わすと、耳許で、毒気たっぷりに、囁いた。


「ふんっ…こんなに醜いのが私だとはね…。あなた、情けなくは無いのかしら。ねぇ?生きていて恥ずかしくは無いのかしら?貴女には生きている価値なんてゴミ程も無いんだから、大人しく私に精神しゅどうけんを渡しなさいよ。どうせアリ君の後をついていかないと、自分の力で立ってさえ居られない、そんな今のあんたなんて、『器』としてくらいしか価値は無いんだし。ねぇ。私と、代わりなさいよ。あんたなんかに、アリ君は、勿体無いって、分からないの?」



クスクスと不快な嗤い声で、私のコンプレックスを脳内に直接流し込んでくる。



正直、私は、カチンっときた。



アリ君や、グリーンヒル先生、モーリィさん、その他にも沢山の人達に育てて貰った私の自我を、コイツは何だと思っているのだろうか?



なのに消えない消滅願望の強さを、コイツは何だと思っているのだろうか?



活きたいと願いながらも、自分の裡から湧き出て来る絶望感を、コイツは何だと思っているのだろうか?




『絶対に《奈落》には行くなよ!約束だからな!』



と、アリ君と交わした約束の重さを、コイツは何だと思っているのだろうか?


それなのに、《奈落》へと向かいたくなる、私の消滅願望を、コイツは舐めているんじゃなかろうか?


私の精神を踏みにじろうとする、その行為に、その存在に、私は瞬時に、怒りを覚えた。

私のみならず、私を育ててくれた全部の存在や経験を踏みにじる、その無神経さに、私は激怒した。

私の最愛アリス・トートスが、『トリスティーファ・ラスティン』選んでくれたという、その意志を無視するかの様な、その物言いに、私は、キレた。


だから、私は、ソイツを睨み付け、全身全霊をかけて言い放った。




「…。お前こそ、誰?私にソレを告げていい存在は、3人居ますが、貴女はそのどれでも無いですよね?私の…トリスティーファ・ラスティンの…本来の身体の持ち主、《トリスティーファ・ラスティン》、魂の前世たる、《ルナミス・トートス》、並びに《黄金外套王ラインハルト》。その誰でも無い『貴女』が、自信を得ようと、自分を得ようともがき苦しむ私の、何を理解出来ていると言うのです!私の絶望感は、他者に言われて飲み込まれる程、軽くは無いんですよ!!!」




私の怒号が、魂からの叫びが、暗闇に包まれた空間に響き渡った。

次の瞬時に、私の中から光が溢れた。

その光は、目の前に居た私擬わたしもどきに多大なるダメージを与えたらしい。ぐずぐずとそのかたちを崩壊させ、消えて行った。

残ったその最後の一欠片に、私は、ケルバーソードへと形を変形させた、旅行鞄パンドラで、一閃を加えた。


すると、パリンと空間が砕けて、私は、幽世かくりよの主…『支配者ルーラー』の前に立って居た。






キリが良いので、短いですが、本日は、此処まで。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ