5、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)・第6階層 1
5、『アルゴス』さんへ~幽世・第6階層 1
周囲を見回すと、だだっ広い荒野が広がっていた。
異常が無いかと、3人で探索を開始した。
だが、荒野が広がるだけで、人っ子一人いない。
各々が、おかしいな、と、思い始めた途端の出来事だった。
突如、何の前触れも無く、足元にから闇が吹き出した。
間欠泉が噴き出す様に、勢い良く湧き出る気配に気付き、
「何か来ます!方向、真下です!!」
私は咄嗟に警告を発した。
同時に、私は、後方へと飛びす去った。
僅かに遅れて、ダンテさんは左手に、ルミラさんも上空へと退避する。
どうやら、3人とも、無事に其れを避けれた模様である。
二人の無事を確認すると、私は安心して、二人に問いかける。
「コレ、何ですかね?」
件の、闇が凝って出来た様な、ぶよぶよとした塊は、確かな質量を持って、目の前に存在している。
植物には見えないし、動物の様でもない。かといって、鉱物にも見えない。どう考えても、不思議な存在である。
戸惑う私の様子に、痺れを切らしたのだろう。
腕組みしながら何やら考えていたダンテさんが、口を開いた。
「いいか、トリス。幽世では、その幽世を支えている、核となるモノ、存在がいるんだ。そいつはな…。面倒くせぇな…。ルミラ、説明、パス。」
ところが、あろうことか、ダンテさんは、説明を、途中で、ルミラさんに丸投げした。…どうやら、面倒臭くなったらしい。
「仕方ないなぁ、分かったぞ♪」
説明をパスされたルミラさんは、というと。孤児院での、子ども達に行っている講義を思い出したのであろう。嬉々として、語り出した。
「幽世では、その世界を形作る、暗号があるんだ。そして、暗号が読めれば、それを弄くる事も不可能では無い。その、暗記の中でも、赤かったり、金色をしている存在は、その幽世の鍵となる存在なんだぞ♪」
さらりと、要点だけを、彼女は告げた。
「良く、分かりませんね。」
だが、私には、全く理解出来なかった。
それでも気にせず、ルミラさんは、ニコニコしながら、話を続ける。
「暗号が読めないなら、その幽世を支えている、支配者を見つければいいんだぞ♪大体、その世界の偉い奴とか強い奴が支配者である事が多いな。」
私は、理解出来た事だけを復唱した。
「暗記とやらは理解出来ませんが…。つまりは、その世界の悪者をやっつければいいんですね。」
腕組みしたまま、ダンテさんが、短く肯定の意を示した。
「…。概ねそうだな。」
ルミラさんは、私の理解力の低さにポリポリと頬を掻きながらも、
「正確には違うのだが…この場合は間違いないぞ♪」
と、明るく言い放った。
「という事は、目の前のコレ、倒す対象と認識しても構わないんですか?」
及第点を貰えたと判断した私は、最終確認として、ルミラさん達に聞いた。
「ああ、そうだな。」
「そう判断しても、構わないと思うゾ♪」
「インプットした情報から、調べて見ましょうか?」
「それがいいな。」
という訳で、私は、目の前の、スライムじみた闇の塊について、調べてみた。
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目の前の、闇の塊は、そのままの名前をしていた。
それは、『闇を喰らう者』《ダークイーター》。この幽世の主の使い魔にして、精神を、魂を、攻撃してくる闇の塊。…つまり、飲み込まれると、飲み込んだ相手の精神にダメージを与える相手、である、と言える。
そして、更に分かった事は、コレを倒さないと、先には進めない、という事だった。
「どうやって倒しましょうか?外からの攻撃無効らしいのですが…。」
「簡単だぞ~!な、ダンテ。」
「ああ、そうだな。中から攻撃すればいいんだ。いくぜ♪」
どんっ!
と、二人に背中を押された時には、私は既に、ダークイーターの中に取り込まれてしまっていた。