4、『アルゴス』さんへ~幽世(かくりよ)・第6階層へ
説明回です。
分かりにくかったらごめんなさい。
では、よろしくお願いいたします。
4、『アルゴス』さんへ~幽世・第6階層へ
この現世から、幽世に行く事を、《幽世に入る》若しくは、《幽世に潜る》と、表現する。
この感覚を分かりやすく説明する為には、そもそも、幽世は何処に在るのかという、その説明からしなくてはならないだろう。
『幽世』とは、簡単に言うと、現世と微妙にズレながらも重なり合う『異界』の事であり、現世とのズレが大きい程、深い階層と言える。その深さは、第13階層まであり、その下には『闇』がある。そこに、『闇の鎖』もあるという。そして、その外側には、何も無い『虚無』が広がっているらしい。
そこは、輪廻転生が基本であるこの世界で、穢れ、流転出来無くなった魂の吹き溜まり…則ち『奈落』とも称される場所である。
私の調べた、真教の古い聖典には、そう記されていた。
時代を経るうちに、神話の記述は減り、改変され、微妙に意味合いを変化させ、一般には知られていない情報ではあるのだが。
さて、私の目的地である、[アルゴスさんの封じ込められていた場所]は、転生出来ない穢れた魂の吹き溜まりにして、《闇の鎖》及び、魔神の王にして、最強の邪神『シャハス』の精神が在るとされる『奈落』と、13柱のから成る上位魔神(の本体)が棲まうとされる、幽世第13階層との、本来は無い筈の異相…謂わば、第13・5階層とも言える場所である。
これだけで、私の目的地が、困難を極める事が分かるだろう。
常人には、分からない、幽世への入り口。
稀に、唯人が、幽世の浅い階層に紛れ込む事はある。『神隠し』や、『理想郷』へ行った等と言う昔話や民話に伝わる話がそれだ。
それを、意図的に見つけて、介入し、無事に帰って来る事のスペシャリストが、ルミラさんやダンテさんなのである。(湧水亭のマスターにも、それが可能だと私は思っているが。)
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「どうやって、幽世に潜るんですか?」
私は、旅の始まりに、二人に聞いた。
ルミラさんが、嬉しそうに、にっこり笑うと、明るく言った。
「歪みを見つけて空間を切り裂くんダゾ♪」
「え!?どうするんですか?」
「勘ダゾ?まぁだいたい空気が違うからナ。そこを力業でスパンと。」
「俺は、ルミラ程適当ではないな。以前にお前に譲渡した剣があったろ?」
「はい。霊剣アストラルですね。」
「それでも可能なんだが、異界のモノに反応する道具で歪みを見つけて、次元の壁を斬れる霊剣なり魔剣なりで、狙いを付けて穴を開けるんだ。」
「え!?では、霊剣アストラルは、ダンテさんの商売道具なのではないのですか?」
「俺にはもっと良い奴があるからな。気にするな。」
「ダンテ。この看板の裏辺りが薄そうダゾ♪」
「そうだな。じやあ、今回は、適当でいいな。行くぜ!」
セイヤっと気合いを込めて、ダンテさんが、空間を斬ると、その向こう側に、ゆらりと、今まで見えなかった景色がぼんやり透けて見えた。
「さ、行くゾ♪」
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シャボン玉の、薄い膜をいくつか、すり抜ける様な感触がして、私達はその地に降り立った。
周囲を確認すると、何処までも続く様な荒野が広がっていた。
「ここは…?」
そう呟いた私に、ダンテさんとルミラさんは言った。
「「ここか?第6階層くらいだな(ぞ)。」」
「何で、分かるんですか?」
私が疑問を口にすると、二人はすかさず、
「勘だな。」
「何となく、だぞ?」
と、然も当然、といった様子で答えた。
「慣れれば、分かるモノなのですか?」
「まぁ、そうだな。」
「経験としか言えないぞ♪」
この、ベテランな方々の意見は、以後、身を以て思い知る事になる。
後年の私は、経験して、肌で感じる事を繰り返して、各階層の雰囲気を感じ取る技能が身に付いていくのである。
そして、それは、とても言葉では言い表せず、第6感的な何かで掴み取れ、としか言えない類いのモノなのだ。
私は、その事を、まだ分かってはいなかった。知識として知っているのと、分かるのとでは、大きな差があるのだという事を。
ありがとうございました。
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