[幕間:『トロメア』2]
お久しぶりの、トロメアちゃんの登場です。
覚えていますか?
幕間:『トロメア』2
『いい。【――――】。私は、これから、あなたを、アリ君、アリス・トートスの元へと送ります。彼は、私の番よ。この意味、分かるわね?…私はあなたに、運命を託します。あなたの記憶等には、プロテクトを掛けておきます。必要な時には、あなたの記憶が開放される様にしてあるわ。…あなたの経験が、いずれ私を、皆を助けてくれるはずよ。だから、彼の下で、安心して色々学んで来なさい。行っておいで。』
おかあさんは、私を抱き締めた後、そう言って、オーナーに任せた。
そして、連れて来られた場所は、学園の前だった。
私は、事前におかあさんに言われていた通りに、おかあさんのツガイ、つまり、おとうさんに会うべく、行動を起こした。
でも、どうすれば良いのか分からなかったから、門の前でおとうさんを呼んでみた。
「おとーさん」
しばらくすると、近くにいたおじさんが、おとーさんのお友だちを呼んでくれた。
だから、私は、アリスおとうさんに会うことが出来た。
私の名前も、おとうさんは、決めてくれた。
私の名前は、おとうさんの三番目に愛しい存在、という意味で、『トロメア』に決まった。何でも、妹、おかあさんに次いで三番目なんだって。
そして私には、『トロメア』としての、自我が芽生えた。
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おとうさんは、いつでも優しく、いろんな事を教えてくれた。
おとうさんの周りにいる人たちも、私にいろんな知識を教えてくれた。
ある時、ドルンドルンというエンジン音を響かせて、おかあさんのおかあさんと言う人がやって来た。
おかあさんのおかあさんという事は、おばあちゃんである。
「いい?トロメアちゃん。私の事は、ジャスティン母さんと呼びなさい。お婆ちゃんっていう歳では無いからね?」
その人は、ニコニコしながら、そう言った。
私は、素直に従う事にした。
怒らせてはいけない、そんな空気を感じたのだ。
ジャスティン母さんは、私を連れて、湧水亭に連れてきてくれた。
そこには、私にとって父とも呼べるヒトがいた。
「カイル君。元気してる?この子、トリスの愛娘でトロメアちゃんよ♪よろしくね。さ、トロメアちゃん。お兄ちゃんにご挨拶してごらん?」
「親父殿!いつもおかあさんがお世話になっています。トロメアです。」
大切なヒトだから、丁寧にご挨拶した。懐かしい感じがしたのだ。
「おっ…親父殿!?どういう事だ?初めまして、だよな、トロメアちゃん。」
「はい。初めまして、です。」
「何で俺が親父殿、なんだ?」
「カイル、お前、トリスとの間に隠し子が居たのか?」
「ちっ、ちげぇよオヤジ!俺だって何でそう呼ばれるのかわかんねぇよ!」
カウンターの奥から出てきた主人を見て、私は、直ぐにご挨拶をした。
「師匠。初めまして、トロメアです。お世話になります。」
紛れもなく、彼の方は、私にとって師匠に間違いないからだ。
だが、私に分かるのは、カイユさんと呼ばれる方が『親父殿』であり、湧水亭のご主人が『師匠』である、という純然たる事実だけだった。
トロメアちゃん視点でお届けしました。