1、『アルゴス』さんへ~私の出来る事
今回は、短いです。
今後も、文字数は少なめになるかも知れません。
[第十三章 『アルゴス』さんへ]
1、『アルゴス』さんへ~私の出来る事
その報告をくれたのは、義弟のギルデンスさんだった。
【…遥かなる昔、幽世第13階層と奈落の狭間に閉じ込められた、一人の男が居る。
世界を運営せしめる13柱の存在逹が、危険と判じ、封印した男である。
その階層に穴が開き、繋がりやすくなった場所がある。】
と。
私は、その時、所要で旅に出ていた。だから、この話は妹のサラからの伝聞である。
ギルデンスさんがその話を持って来た時、血気に逸る数名がその場所に行ってみたいと申し出たらしい。
妹のサラは、ギルデンスさんと行動を共にしたくて、そのツアーに参加したそうだ。
そして、逆しまの塔にある、地下の歪みから、その男、アルゴスの下へと辿り着いたらしい。
彼は、生命力には満ち満ちていたが、生活感は一切無かったらしい。
そして、人格的にも、戦闘以外には全く感心が無かったという。
対話を試みたが、会話は成立せず、彼は、ただただ、闘える事だけを追い求めていたのである。
絶界の封印の最中にあって、毎日毎日、来る日も来る日も、ただただ、戦う事だけをシュミレートしていた彼は。
ある日、フツリ。と、その存在を消した。
私は、その話を聞いた時、その人に会って、話をしてみたくなった。
会話の楽しさ、他者との共感による楽しさ、世界には、彼独りきりでは無いという、当然の事実を、想いを、伝えなければならないと言う、使命感に駆られた。
ヒトには、様々な形の交わりがある事を、伝えなければならないと言う、焦燥に駆られた。
何故ならば。
私、【トリスティーファ・ラスティン】の存在意義は、ソレだから。
独りではない事。
絶望感や孤独感や消滅願望は、乗り越えられる事。
他者とのどんな交わりも、自身を育む力になる事。
お節介かも知れない。
迷惑かも知れない。
でも、私は関わりを持ちたかったのだ。
関わりを持ちたいのだ。
どんな人とも。
合うか、合わないかは分からないけれども。
消えてしまったその人に、せめて、会いに行ける事を証明したくて。
心の中に芽生えた、言い表せない焦燥感に突き動かされて、私は次の冒険の行き先を決めた。
決して、他の誰にも譲れない、私だけの使命として。
書き続けられる様に、頑張ります。