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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
大学生活の過ごし
11/151

11  大学生活編~異国の友人~

よろしくお願いします。


21.異国の友人




 私の親友、レヴィちゃんのご実家は、熱心な真教信仰家の家系である。

 本人曰く、《両親の狂信的な信仰心にはうんざり》、との事であまり触れてほしい話題では無い様だ。

 しかし、そんな彼女は、宗教学も受講しており、かなり真教の教えについて詳しい。

 そんな彼女と共に、私は校内掲示板を見ていた。そこには以下の様な文面があった。


『《宗教学休講のお知らせ》


・宗教学のロッテ先生が急用の為、暫くの間、上記の講義は休講とする。尚、校内教会には近付かない事。』




 私は、


(『宗教学』って苦手教科なんですよね…。人間社会の難しいルールが一杯で…。確かに、私としては、休講なのは嬉しいけのだけれど…。でも…。お父様の仰っていた、『人間社会に慣れる為』には、教会の空気には慣なくてはいけませんよね…。あぁ、どうして真教ってあんなに取っ付きにくいのかしら?野生動物との生活が懐かしいわ…。)


等と考えいた。

 レヴィちゃんは、


「やりましたわ。宗教学がお休みなんて、素晴らしいですわね。」


と喜んでいた。

そんなレヴィちゃんの裾をちょいちょいと引っ張って、私は、


「レヴィちゃん、私も宗教学は苦手なのですが、教会の雰囲気には慣れたいのです…。ですから…人気(ひとけ)の無い、今の内に、教会を覗いてみる訳にはいかないかしら?」



と、告げてみた。

どんな反応が返ってくるか、心臓がドクドクと早鐘を打っている。顔に血が上り、背中に冷たい汗が流れる。否定されたら、どうしたらいいんだろうと、泣きそうになりながらも、精一杯の勇気を出して。



そんな私の心の葛藤なんて吹き飛ばす様に、レヴィちゃんはニヤリと笑うと、


「仕方ありませんわね。トリスさん。こっそり侵入してみましょうか。」


と、事も無げに言うのだった。




 こうして二人は、掲示板の禁止事項を無視して、校内にある教会に立ち入る事になった。



 私とレヴィちゃんは、周囲に人がいないのを確かめると、教会の扉に耳を当てた。


 暫く耳を澄ましてみるが、中からは、何の音も聞こえない。

 私は、レヴィちゃんと頷き合った。

 そして、(おもむろ)に、扉を押してみた。



キィィ。


 意外なほど軽やかな音を立てて、あっさりと扉は開いた。

 教会内は、静謐(せいひつ)な空気が満ちていた。

 そして、真教とは余りにも不似合いな、見たことの無い衣装(スカートの様な裾の広がった下衣に、紐状のリボンで結んで留めただけの、袖のゆったりとした上衣)を身に纏った、可愛らしい6歳くらいの男の子が立っていた。彼は、ハイルランドには珍しい、象牙色の肌と艶やかな黒髪、そして、どこまでも澄んだ黒い瞳を持っていた。

 私は、目をぱちくりとしばたくと、初めて人間(ひと)と会う時の作法を思い返してみた。

 確か、物語の本(人間関係のマニュアル)には、《知らない人には自分から自己紹介をする事》という項目があった。だから、私は、素直にそれを実行する事にした。



「こんにちは。私は、トリスティーファ・ラスティンっていいます。貴方のお名前は何ですか?」


 しかし、残念ながら、少年は、小首を傾げるだけだった。その様子は、まるで、人間の言葉を音としてしか認識していない、裏庭のお友達の様だった。

 私には、そう感じられたのだが、どうみても、彼は野生動物では無い。という事は、彼には通じる言語があるのではないだろうか?

 私は、知りうる限りの、あらゆる言語で自己紹介を繰り返した。

 何か一つでも伝わればいいのに、と思って。


 実は私は、実家で、『人間(ひと)と会話する』事を目的として、交流のある地域の、ありとあらゆる言語を、家庭教師に厳しく教育されていたのだ。まあ…、私としては、色んな書物を読めるのが嬉しくて学んでいただけではあるのだが。



 何にせよ、様々な言葉での挨拶を繰り返すこと数十回。

 ようやく、耶都(やと:遥か東にあると言う、最果ての島国、らしい)の言葉で意思の疎通が可能であることが分かった。

 しかし、彼は、首を振る事でしか意思表示を示さない。そんな彼を見ている内に、私は、ふと、閃いた。


「君、もしかして、言葉が話せないの?」


 彼は、ばっと顔を上げて私と視線を合わせると、大きく、何度も頷いた。

 肯定の意思を伝えてくれたのである。

 嬉しそうな彼に、何だか私も嬉しくなった。


人間(ひと)と話すのは苦手ですが…彼は何だか平気そうです。他の方とは違って、不思議と彼は怖くありません。もしかしたら彼も、今の状態は、()()()()()()()()()()()なのかもしれませんね…。凄く、気になる方です…。)


 もっと沢山お話ししたい。


 私は、確かにそう感じた。色々聞きたいと、口を開こうとした時である。

 レヴィちゃんから、声がかかった。


「楽しそうなところ、申し訳ありませんわ、トリスさん。残念ですが、これ以上長居をしている時間は無さそうですわ。後5分程で、始業の時間になってしまいますわよ!今は、教室へ戻りませんと、不信に思われてしまいますわ?」


 やんわりとした口調でのストップである。


「えっ?もうそんな時間なの?う~…、仕方ありません。一度、戻りましょう。」


 びっくりしつつも、現状を把握した私は、レヴィちゃんの忠告を受け入れた。

 でも、彼の事が気になった私は、それで済ますつもりも無かった。


「ねぇ、君。また会いにくるから、その時は、色々話せたら嬉しいな。駄目かなぁ?」


 私の言葉を聞いた彼は、びっくりした様に目を見開いて、そして、嬉しそうに頷いてくれた。

 それを確認した私は、彼に笑顔で手を振ると、先生に見つかるその前に、そそくさとその場を後にしたのだった。




 そして、その日の昼休み。

 私は、レヴィちゃんと二人で、3人分のサンドイッチと飲み物を持って、教会に忍び込んだ。

 幸い、ロッテ先生はまだ不在の様だ。

 あの少年は、まだぼんやりとした様子で、教会の中に佇んでいた。




「こんにちは。お腹空いてないですか?」



 私は、少年に声をかける。

 少年は小首を傾げた。

 その様子から、私は、彼の食事に対する意欲の低さを感じた。

 食事は、食欲は、動物が生存するのに必要な、本能である。

 私とは違うベクトルで、私は彼の、()()()()()()()()()()()()()()()を感じとってしまった。



(世界に不要なのは、『私』だけで充分です。彼には、彼らしく、世界に必要とされている事を実感してて欲しいです。)



 強く強くそう願うから、私は、多少強引にでも、彼と共に食事をする事にした。


 

「これはね、サンドイッチ。こっちは、絞りたてのりんごジュース。こうやって食べるんだよ♪」



 彼と共に、近くの椅子に座り、一つ一つ教える様に食べる。

 強引で、勝手に押し付けてくる私の行動に、始めは戸惑っていた少年も、次第に緊張を解いてくれた様で、結局は、ぺろりと一人前を平らげてくれた。

 その様子が嬉しくて、ニコニコと機嫌良く食後のお茶を淹れていると。



「ありがと。僕、スサノオ。是、美味しかった。ロッテ、来る。君ら、帰る。早く。」


 俯きながらも、小さな声で、スサノオ君は言った。


 心配してくれた事に、また嬉しくなって、私の心はぽかぽかと温かくなった。



「心配してくれるんだね。ありがとう。また、来てもいいかな?私は、君と友達になりたいのです。もちろん、迷惑じゃなければ、なのですが…。」


 控えめに告げた私に、はにかみながらも、スサノオ君は、こくんと頷いてくれた。

 えへへっと、どちらともなく微笑んで、ほんわかとした空気がながれた。





 その時だった。

 キィィという音と共に扉が開いた。



「誰です!?そこにいるのは。ここは立ち入り禁止のはずですよ!」



 鋭い誰何の声が、教会に響いた。

 ロッテ先生である。



(見つかった!!)


と思い、慌てて言い訳を考えるが、とっさの事に言葉が出てこない。

 すると、すっと立ちはだかる影があった。


「ロッテ、トリス逹、僕の友達。ご飯くれたよ。虐めないで。」


 弥都語の、穏やかな声がした。


 見間違いだろうか?


 聞き間違いだろうか?


 私達を庇ってくれたスサノオ君は、ちょっとだけ、先ほどよりも滑らかな口調に変わっていた。さらに、少しだけ、大きくなっている気がする。



「言い付けを破って申し訳ありません。トリスさんを宗教学に慣れさせようと、教会の空気に馴染ませたくて来ました。可愛らしい男の子がいたので、友好を築こうて交流をはかっていました。」



と、咄嗟にレヴィちゃんが庇ってくれた。

 けれど、ロッテ先生は非情にも言った。


「この子は私の身内の子です。この子にちょっかいをかけて欲しくなくて教会への接近を禁じていたのですよ。二、三日中には帰る予定なので、もう貴女方は来なくて結構ですよ。」



 かちん。

 

 私の中で、何かの音がした。ここで引いたら、せっかくの掴み掛けた、スサノオ君との信頼の糸が切れる。そう感じた。



「せっかくハイルランドまで来てくれているのに、交流しないのは、可哀想です。それに、友達になれました。彼が何であろうと、私は、彼の友人です。スサノオ君は、ハイルランドの人よりも、ちょっと成長の早い、学習能力の高い種族だという事ですよね?異種族だからって、差別は良くないと思います!先生、私は、彼という個人と交流したいのです!意思ある者が意思ある者と交流する事に、問題なんてあるんですか?他人の都合で、交流を妨げられるのは、納得がいきません!!」



 それが嫌で、私はとっさに言い募った。

 これを聞いたロッテ先生は、


 はぁ。


と溜め息をつくと、諦めたみたいに言った。


「仕方ありません。確かに、トリスさんの推測通り、彼は、弥都の希少な種族です。真教とは違う所の子なので、教皇庁に気付かれたくありません。この子を守る為にも、この子の事は秘密にしてくれますか?会うのも、この教会内だけにしてくれるならば許可しましょう。」


 ロッテ先生の思わぬ発言に、私は小さく拳を握ると、


「ありがとうございます、ロッテ先生!!」


と、勢い良く頭を下げた。

 勢いが良すぎて、つんのめってしまったのは、ご愛嬌である。



 …こうして、私とレヴィちゃんには、新しい異国の友人が出来た。





 その後、ロッテ先生から正式な許可をもらった私達は、時間を見つけては足繁くスサノオ君の元に通った。

 行く度に、スサノオ君の背は伸び、言葉は流暢になり、弥都語だけではない、様々な言語を習得していった。

 楽しく、穏やかな時間が過ぎていく。

 私達は、様々な事を話し、心の交流を重ねていった。

 


 

 2日程経った頃だろうか。彼の姿が12歳くらいになった時に、事件は起こった。



 いつもの教室で、クレアさん逹と話していた時の事。

 いつもの様に、情報通のアルヴィン君が、極秘ニュースを持ってきた。

 曰く、未確認の大蛇の様な魔神が、学園の方向に向かっていると。

 慌ただしい空気が、学園に満ちていた。先生逹は対応の為に出払っているのだという。


 不安を感じた私は、ハイルランドに不慣れな友人が心配になった。

 まだ自分が存在する事が、どこか不安そうに見える彼が、何処かへ消えてしまいそうな気がした。

 どうしても、自分の目で確かめないと、落ち着かない気分だった。

 何かに急かされる様に、私は、彼の所へ向かわなくてはならないと、そう感じた。



「私、急用を思い出してしまったわ。失礼するわね。」


 不自然な程に焦る気持ちのままに、私は友人達の輪を抜ける。後ろなんか、確認する余裕なんて、まるで無かった。


 ただひたすらに、スサノオ君を目指して、一目散に教会に向かう。


バタン。


と、教会の扉を開くと、そこにはスサノオ君と、熊の着ぐるみがいた。

 奴は言った。



「大人しく討伐されるっす。ハイルランドではお前は魔神っす。」



 口調からして、以前私が捕虜にした、エステルとかいうシスターである。

 私は、静かに彼女の後ろに近づいて、ケルバーソードをその首もとに突き付けた。



「私の大事な友人に何をしているっ。」


 怒りに任せ、口調も荒々しく、私は、彼女に問いかける。



「そっ、その声は、トリスさんっすね。自分、職務中っすよ。そっちこそ邪魔しないで欲しいっす。」


 エスエルさんは、着ぐるみに似合わない緊迫感を漂わせながら、私に言った。

 どちらも、引く気配は無い。

 そんな私とエステルさんとの言い争いの中で、



「何だ、トリス。こいつらお前の知り合いか?」



と、アルヴィン君が声をかけてきた。振り向くと、いつものメンバーが勢揃いしていた。




 アリ君の冷やかで冷静な声が、アルヴィン君の背後から聞こえる。


「見るに、その着ぐるみはお前の敵な様だが、何が起きているのか、詳しく話してもらおうか。いいよな、トリス。」



ギクリ。


アリ君の冷たい声に、背筋が凍る。



「一人は教皇庁のシスターよね。確か、名前はエステルさん。前に会った時はライオンの着ぐるみでしたけれど。」



 クレアさんが先回りして答える。



「ほう。教皇庁のシスターか。着ぐるみに意味はあるのか?」


 氷の様に冷ややかなアリ君の声がする。空気が、凍った様な気がした。

 空気の読める着ぐるみことエスエルさんが、仕方ないと言うように両手をあげる。



「分かったっす。自分の事を話すっすよ。だから、危害は加えないで欲しいっす。」


 それを見て、私も態度を軟化させる。



「スサノオ君に手を出さないなら、危害は加えないわ。」



 今の私にとって大事なのは、友人である、スサノオ君である。

 こちらの様子に気を配りつつ、エステルさんは、熊の着ぐるみの頭部を外して話始めた。


 曰く、


 彼女の熊の着ぐるみは、ビーストプレート(野獣に襲われても壊れない強度を誇る、貴重な鎧)相当、頭部はドラゴンヘルム(やはり、ドラゴンに攻撃されても壊れない強度を誇る、貴重な兜)相当であり、彼女は、各種武器を全装備している、教皇庁の暗部組織所属である事。

 今回は、弥都なる異国の魔物を追っている。

 スサノオ君は、その貴重な証言者な為、確保命令が出ている。


と言うことらしい。


「スサノオ君は、ちょっと成長の早い、弥都限定の種族で、私の大事な友人です。それ以上でもそれ以下でも、それ以外でもありません。」


トリスは断言する。



 彼を守る、と決めたから。



「いくつか気になる事はあるが…まず、スサノオとは、そこの少年か?他のに少年について、お前の知っている事は?」



「ご飯を美味しそうに食べてくれた事と,学習能力が高い事くらいでしょうか。」


 アリ君の質問に、トリスは答える。


「では、エステルとかいうのは?」


アリ君は、じっとこちらを見て、更に聞いた。


「揚先生逹と護衛していた少年を狙って来た、いろいろあって、捕虜になった人。シスターさんで、前はライオンの着ぐるみを着てました。名前はエステルさん。」


 また、アリ君の質問に、トリスは答えた。


「トリス…。はぁ。馬鹿かお前は。」


 アリ君は溜め息を吐き、首を横に振りながらも、やれやれと、彼は続けた。


「お前の理解の範疇が良く分かった。」


 残念なモノを見るような目で、アリ君はトリスを見た後、真面目な顔で話を進めた。


「私の知識と総合して考えるに、だ。」


彼は、エステルさんの方を見て、


「エステルとやらは、教皇庁の暗部組織だと言ったな。イスカリオテ機関の所属だろう。何故なら、トリス、お前が庇っているスサノオはな、耶都では『武神』とされているが、あー…あちらの武力を司る神の事だな。で、一神教であるハイルランドの、ましてや唯一神を崇める教皇庁の見解では、異端の存在、邪神だからだ。トリス、お前も気付いているだろう。彼はハイルランドの法則から外れている。普通、そんなに早く成長する人種は居ない。超自然的な存在でもなければな。教皇庁からすると、それだけで、討伐の対象になるんだ。」


 アリ君は、トリスにも分かりやすく、噛み砕いて解説を入れてくれた。


「そっす。だから自分が派遣されたっす。」


 あっさり認めるエステルさん。彼女にも、アリ君のいつもの怒声が飛んだ。


「馬鹿か貴様はっ。自分から認めてどうするんだっ。」




「だって、未確認の大蛇の様な魔神と合流されたら、厄介っす。弥都の魔神同士が、ハイルランドで暴れられたら、教皇庁としては迷惑っす。」


 エステルさんが、彼女の立場の見解を述べる。


「トリスさん、庇ってくれてありがとう。」


 今まで黙っていたスサノオ君が割って入った。


「僕は耶都の『武神スサノオ』。迫ってくる魔神オロチへの死を与える事が出来る存在。だから、奴は僕を追って来たんだ。」


 神秘的な眼差しで、スサノオ君が言った。


「ロッテさんは、僕を守っていてくれただけで、この大学の素晴らしい先生。異端ではないですから、狙うなら僕にしてくださいね。エステルさん。」


 ニコリと笑って、彼はエステルさんに釘を刺した。


「それから、もう、魔神オロチは、ここへ近づいています。危ないので、逃げてください。僕の全エネルギーで、封印します。」


言い終わるや否や、


ドゴォン


と、教会の屋根が割れ、ステンドグラスと共に、八首の大蛇が降ってきた。


「敵前逃亡なんてごめんですっ。友達は、見捨てませんっ。」


 トリスが決意を言葉にして、オロチの前に立ち塞がった。




 乗り込んで来たのは、魔神オロチ。その体は首が八首。それぞれが幅2メートル、長さが10メートルにもなる、化け物だった。


「仕方あるまい。戦闘だ。エステルとやらにも付き合ってもらうぞ。一時休戦で、共闘だ。いいなっ。」


「仕方ないわね。」


「しょうがねぇなぁ。付き合うぜ。」


「面白そうだね。ボクも参加するよ。」


「全く、仕方ありませんわね。」


 みんなが賛意を示してくれた。

 エステルさんも、


「もう、やけっす。魔神だけでも倒さないと上司に怒られるっすからね。共闘するっす。」


と、戦闘に参加してくれる事になった。



「全員私の指揮下にはいれっ。」


 アリ君の的確な指示が飛ぶ。


「神のご加護を、皆に。」


 レヴィちゃんのお祈りが響く。


「魔神オロチの弱点は首の付け根よっ。」


 クレアさんが弱点を割り出す。

 右に左にと、素早い射撃攻撃をする、アルヴィン君。そんな彼の攻撃と、被らないように、右に左にと射撃攻撃するリースさん。

 エステルさんが、鋭い爪(バスタードソード相当:片手でも両手でも使える大剣。強い。)で、重戦士の力で戦う。彼女もまた、《神々の欠片》をその身に宿している様だ。

 そして、私は愛用のケルバーソードで、首の付け根を狙う。

 けれど、幾つ首の付け根から首を切り落としても、また生えてくる。

 そこに、暖かい光が降り注いだ。


「僕の力よ、この者達に宿れ。」


 スサノオ君が、オロチを倒すための神力を付与してくれたのだ。


「もう一度、全員で攻撃だっ。」


 アリ君の合図で、攻撃力の増した私たちは、魔神オロチに斬りかかった。皆であらん限りの攻撃を加える。

 もう、すべき指示は全部出し切っていたアリ君も、ロングソード(一般的な剣)で攻撃する。


【アリスラッシュ】


ザシュッ…



グォォォオン。


…ドサァッ…。

 



 アリ君のスラッシュ攻撃が決め手となり、魔神オロチの巨体は倒れた。

 そして、闇に溶けるように、その巨体は消えていったのだった。


 キラキラと、沢山の《神々の欠片》が、空へと昇っていく。

 ようやく、戦闘が終わったのだ。




 魔神オロチを倒して後。

 神々しい光を纏い、スサノオ君は、空に浮いていた。



「皆さん、ご協力に感謝します。お陰様で、無事、宿敵・魔神オロチを倒せました。脅威が去った今、私は自分の守護する地へと還らねばなりません。私を友と呼んでくれたトリス殿。見知らぬ地で、右も左も分からない私を保護してくれた、ロッテ殿に、礼を伝えては頂けませんか?私はどうやら長くはこの地に留まれぬ様です。どうか、貴女方の行く末に、幸運のあらんことを。」


 そう言って、彼は、光に包まれ、遠い東の彼方に飛んで行ってしまった。



 短い間だったけれど、共に過ごした彼と、いつか何処かで出会えたら。

 また、元気に呼び掛けようと思う。


 彼は友達。


 それ以上でも、それ以下でも、それ以外でもないのだから。






ありがとうございました。

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