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トリスの日記帳。  作者: 春生まれの秋。
『レイ・ライン』の冒険
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3、レイ・ラインの冒険~選択肢

3『レイ・ラインの』冒険~選択肢







私の端から見れば、甚だ不信な言動に、逐一リドリーダーが突っ掛かって来るのを宥める様に、



「そうですね。誰にでも探られたくない事情の一つや二つはあるでしょうし。ライさんの事は取り敢えず横に置いておきましょう。」



と、メイヴィスさんが話を進めてくれる。



(つまり、喋れば喋るだけ、怪しまれてしまうという事ですね。困りました。なるべく黙っていましょう。)



私は決意を固めた。



「仕方ないな。では、ダンにレイン。事情を話してくれ。」



「二日前の事なんだが、俺が住んでいた村の近くに、突然遺跡が現れたんだ。びっくりしたけど、気になって、俺は、遺跡に入ろうとしたんだ。そしたら、入り口の手前にぽっかり坂が開いて、俺、底に落ちちゃったんだ。そんで、目の前に、筒みたいな入れ物があって…。レインはそこから出てきたんだ。で、俺の手当てをしてくれたんだよ。それが、俺とレインの出会い。」



「ほう。遺跡ですか。そういえば、最近、各所で遺跡が出現しているとの噂がありましたね。まだどの遺跡にも調査団が進入出来ていないみたいですが。」


メイヴィスさんが、思い出した様に言った。


「続けてくれ、ダン。遺跡と彼女に関係があるのか?」



リドリーダーが先を促す。



「レインが言うには、このままあの遺跡群が発動すれば、世界が滅亡するらしいんだ。それを止める方法が、レインをクリスタルタウンに連れて行く事、なんだって。で、俺、彼女を守りたいんだ。彼女の望みを叶えたいんだ。だから、護衛を雇おうと、クエストを依頼したんだ!」



力強く、ダンさんは言う。レインさんの手を強く握りながら。




「…私が起きてしまった以上、遺跡の封印が綻びつつあると見て間違いありません。」


ポツリとレインさんが言う。




と、話をしていた私達を見ていたミストレスさんが、はっと顔を上げて言った。


「セラフ。侵入者が近付いていますね。」


「このままでは、後五分程で追い付かれてしまう、といったところでしょうか。」


冷静に、セラフさんがミストレスさんに状況を説明する。

現状を把握した彼女は、私達に手早く話を伝えた。



「皆さん。時間がございません。世界を救うためにも、順に遺跡を周り、封印を解放ながら、クリスタルタウンを目指してください。始まりの遺跡へは、その扉を潜れば辿り着けます。四つの遺跡を巡りし時、クリスタルタウンは貴殿方の前にその姿を顕すでしょう。世界の禍と共に。離脱される方は、此方の扉を選んでください。湧水亭に繋がります。世界を救わんとするのであれば、レインさんをお連れの上、今すぐご出立を。追っ手を撒く為にも、わたくし逹はこの空間を離脱いたします。」


無表情のまま、セラフさんも、状況の捕捉をしてくれた。


「皆さん、ご安心を。追っ手はミストレスを狙ったもの。我々が去れば、貴殿方は狙われません。心が決まるまで、この空間は維持出来るようにしておきます。それでは、失礼。」



が、彼等の発言は、そこまでだった。

言うだけ言うと、直ぐに、ミストレスさんとセラフさんは、第三の扉から出て行ってしまった。

そして、その扉も、ぱたんと閉じると、跡形もなく、宙に消えていった。



残されたのは、湧水亭へと続く扉と、遺跡へと続く扉の二つだけだった。









「話を纏めるぞ。」


腹を括ったらしいリドリーダーが口を開いた。 



「このクエストの依頼は、レイン、君を護りながら、クリスタルタウンとやらに向かう事。これで間違いないな?」



ダンさんが頷く。



「ああ。そうだ。」


レインさんが、



「私の願いは、世界の滅亡を阻止する事。ダン。間違えないで。」



と、さりげなく訂正を加える。

私は、うっかり何時もの調子で口を挟んでしまった。口調にだけは気を付けたけれども。



「なら話は簡単なのだ♪世界の滅亡を食い止めつつ、レインちゃんを護りきればいいのだ♪それで解決なのだ♪」



私が言い終わった、次の瞬間。


ゴンっと、リドリーダーから拳骨が降ってきた。


「~っ!!痛いのだ!何するのだ、リーダー!」


涙目でリドリーダーに抗議する。



「ライ!君は少し黙っていて貰おうか!話がまとまらない。」



反論する、リドリーダー。

そんな、私とリドリーダーのやり取りを見て、ドンさんが言った。



「まぁまぁ、リド殿。ライ殿も悪気があった訳ではありますまい。それに、彼女の言った通り、レイン殿を護りきれば、則ち世界の滅亡とやらも防げるのでありましょうぞ。そう無下に扱いなさんな。」



ドンさんの言葉に、メイヴィスさんも賛同する。



「そうだな。ライは適切に纏めたと思うぞ?リーダー。」



「だから!私は!リーダーでは!無い!」



リドリーダーが吠えた。


…。私は、リドさんがリーダーでいいと思うのだけれど。




仕方ないので、常識的に行動しようと、私は真面目に挙手をした。


「はい、なのだ。」


そのまま、大人しく、発言許可を待つ。


「何だ、ライ。今度こそ、マトモな意見なんだろうな?」


ヤサグレ気味に、リドさんに指名してもらえた。


「このままでは先に進めないのだ?だから、レインちゃんを守って、かつ世界を救うのに賛成かどうかをそれぞれで判断した方がいいと思うのだ。因みに私は迷うことなく、賛成なのだ♪」



にぱっと笑って言い切る。


「私もよ。ライ。」



すっと右手を挙げて、メイヴィスさんが真っ先に賛同してくれた。簡潔で、頼もしい一言だった。ややあって、



「ワシも賛成ですな。レイン殿を護り、世界を護る。ディフェンダーとしてこれ程心踊るシチュエーションはなかなかありませんしな。」



と、ドンさんも、賛成してくれた。



「俺は、当然、レインを護る!目の前の女の子を護れない男が世界を救えるなんて思えないしな!」



どう聞いても、好きな女の子を護りたい男の子な発言は、ダンさん。

そして、



「~っ!仕方無い。ライは怪しすぎて信用出来ないが、レインを護る事に関しては賛成だ。正直、世界を救うとかは、話がでかすぎて荷が重いが…。行けば良いのだろう!予測が出来なくて不安はあるが、そうも言ってはおれまい。クエストを受注する、と、先程言ってしまったしな。二言はない。」



と、遂にリドリーダーが折れた。




こうして、1人の脱落者も出さずに、私達は、ミストレスさんの予言した遺跡へと赴く事に相成ったのであった。








*****************************


一方、その頃。

現世では。


各地で、大規模な異変が起こっていた。


紅く輝く雨が大地に降り注いでいたのだ。

その雨は、命を枯らす。

生命力の弱い個体から、聖痕の有無に関わらず。

その雫を浴びた者を死へと追いやっていたのだ。

雨は、3日3晩、止むことなく降り続けた。

そして、雨の晴れた上空には、かつて誰も見たことのない都市が、浮かんでいたのである。

空中に浮かぶ都市は、何処からでも見えた。

けれども。其処へ辿り着く手段は何も無かった。

その場所は、魔術を弾く結界と、四方と眼下に向けて、砲台の様な物を携えていた。燦然と輝くクリスタルの城を戴き、近づくモノを拒絶しながら、浮遊していた。





*****************************



しかし、魔術交路という現世から切り離されていた私達は、知らなかった。

その紅い雨の事も。

その空中都市の事も。

そして、それによってもたらされている被害の事も。

私達にとって、一瞬での移動が、現世では4日かかっていた事も。


現世の惨劇を知らず、私達は、扉をくぐった。



*****************************


扉を潜ると、眩し光に目が眩んだ。射し込んでくる、眩しい光に目が慣れた頃。

瞬きしながらゆっくりと目を開くと…。

視界には、一面の砂原。

そして、砂漠の砂を固めた様な石で造られた遺跡と、門番と思しきゴーレムが、小高い丘の上に佇んでいるのが見えた。


これが、予言者ミストレスの言っていた、世界を救う為に巡る第一の遺跡だと、私は即座に理解した。




さあ、気合いを入れて行きましょうか!


冒険の幕は、既に開かれたのだから!




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