09.みんな忙しいようです。
しばらくお母様に渡されていた本を読んでいたのだけれども、あることに気付いたのです。
そう、本を読むだけで、その内容がすんなりと頭の中に入ってきて、理解をして、しかも、暗記できるってことが!!
わぁお、これってあれですか、よくある主人公補正!?
これなら本を読むだけで済みそうだから、なんとか一週間で読み終えることができそうです。
前世では書いて覚えるというのが主流の脳みそだったので、これ一冊丸々書き写すとなるとーって考えてどんよりとしてしまいましたが、そんな心配はする必要がなかったようですね!!
でも、リズが用意してくれたメモには、カリカリと気になったりしたものを書き留めておきます。
後で、ノルマが終わった後にお母様にお聞きしたりしようと調べたりしようと思ったので。
それにしても、本を読むことが大好きでよかったです。
むしろ、前世は本の虫でした。ていうか、活字中毒者?本を読んでいるとあっという間に時間がたってしまいますね。それは、前世でも現世でも変わりないようで、すっかりお空が暗くなったころにアンに声をかけられました。
そのころには三分の一は読み終えてしまったので、これならば、明日中にでも読み終れそうです。
と、そうでした、明日はお母様と一緒にお買い物の予定でした。
レベッカ様にご招待されたお茶会へと出るためのお洋服を買いに行くのです。
オーダーメイドで、なんて、お母様が張り切っていらっしゃいましたが、そんなお金はもったいないですし、何よりも、お茶会まで時間があまりありませんからね。きっぱりはっきりとお断りしました!!
そういえば、まだ、お父様にはレベッカ様にお茶会のご招待をされていることはお伝えしていませんでした。許可が出ればよろしいのですが・・・・・・。
いえ、決して、レベッカ様の弟様とのお見合いに行きたいだなんていうことではないのです。
ただ、ものすっごく張り切っていらっしゃるお母様が落ち込まれたらいやだなぁ、と思っただけでして・・・・・・。
むしろ、婚約の件はお父様の方からやんわぁりとお断りしていただきたく思いますね!!
今日も今日とてお父様のいらっしゃらない夕食です。
お母様との会話は、昼間のレベッカ様のことや、レベッカ様の弟様がメインでした。
もう、オルコット家のお話はおなか一杯過ぎて、しばらくは聞きたくありません・・・・・・。
それから、就寝時間までお母様に渡された本を読みふけっていたのですが、日付が変わるころに様子を見に来たアンに怒られながらベッドに入るまでずぅっと読んでいました。
そういえば、こんな時間になっても、未だ、お父様はお帰りになられていらっしゃらないそうです。
翌日、いつものように自分で身支度を整え、お母様とお父様の待たれている食堂へと向かうと、そこにはお母様しかいらっしゃいませんでした。
「おはよう、メアリー」
いつものように大きなおなかを優しくなでながら、お母様は食堂へと入ってきた私へと微笑みかけてくださいました。
「おはようございます、お母様。お父様はまだなのですか?」
首を傾げ問えば、お母様は少しだけ困った顔をされ、
「お父様はお仕事がお忙しいようで、昨日はお帰りになられていらっしゃらないのよ。後、メアリー、ごめんなさいね。今日は、あなたと一緒にお買い物へと行く予定だったのだけど、少しやらなければならないことができてしまったの。だから、リズと二人で買い物へと行ってきてくれないかしら?」
「それはよいのですが・・・・・・お買い物は明日でも大丈夫なのではないですか?」
今日がだめなら明日にすればいいだろ、そういう風に聞き返せば、お母様はやっぱり困った顔をされた。
「明日もどうなるかわからないから・・・・・・」
歯切れの悪い言葉をおっしゃるお母様に、どうやら、子供には言えないような大変なことなのだな、とだけ理解をし、「わかりました」と言い、お母様と一緒に朝食を食べた。
食べ終われば、お母様は早々に席を立たれ、そして、自室へと戻っていかれた。
本当に何があったのだろうか。
そう思いながら、食後の紅茶を口に含む。
そういえば、リズやアンとサラの様子も少しおかしいのよねぇ・・・・・・いつもは明るい声で声をかけてくれるのに、今日のはちょっと影があるような・・・・・・。
でも、これって、きっと、子供の私には教えてはくれない内容なのだろうなぁ、と漠然と納得をしていた。
その日はリズと二人で街まで買い物へと行き帰りにお気に入りのケーキを買って帰った。
夕食の席に珍しく両親がそろわなかった。
「お母様は?」
そう問えば、アンがわずかに肩を震わせた。
「奥様ですが、少々立て込んでいらっしゃるようで、部屋で夕食をとられるそうです」
「――――――お父様はお帰りにならないの?」
「本日もお戻りになられるのは難しいとのことでした」
「――――――――そう」
お父様もお母様もお忙しいのね。
あまりよくないことが起こっているのだろうな・・・・・・。アンを見ていたらすぐにわかる。アンはすぐに顔に出すから・・・・・・。




