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12.突然のプロポーズからのぉ~

「―――――――ず、ずるい、です・・・・・・」




 耳まで真っ赤に染まった顔で、メアリーは必死に言葉を絞り出してそういった。




「そんなことを言われたら・・・・・・私、お断り、できないです・・・・・・」




 必死に紡ぎだす言葉に、私はひどく安堵しながら、それでも彼女の手を放そうとはしなかった。

 放そうとしない私を静かに見下ろしている彼女の瞳は赤く、わずかにうるんでいた。必死に、何かに耐えるよなその瞳に、後もうひと押しだろうか、そう、思いつつも、彼女の逃げ場を作らねば、とも思った。

 ここで追い詰めてしまえば、きっと、この空気に飲み込まれ彼女は承諾し、約束してくれるだろう。

 しかし、それではダメだ。

 彼女が落ち着き、その心が自由になり、周りを見る余裕ができたときに選ばれてこそ、意味があるのだから。




「直ぐに答えを出していただかなくても大丈夫ですよ」




 追い詰められた獣のような瞳をしている彼女に微笑みかけ、ゆっくりと立ち上がった。




「私は気が長いほうですので」




 包み込んでいた彼女の手を離し、先ほどまで座っていた椅子に腰を下ろす。

 少しだけ遠くなった距離を悲しくも思いつつ、今、ここで彼女を追い詰めてしまうわけにはいかないのは十分承知しているから。




「ゆっくりと落ち着き、そして、考えられるようになってから、もう一度、私のことを考えてみてはくださいませんか?」


「―――――――」


「あぁ、でも――――――――どこぞのアホ王太子が無理矢理ことに運ぼうとした場合は、ガーディナル家の一員としてあなたとの婚約に踏み切るかもしれませんが」




 一応、それがガーディナル家の役割なので。と付け加え口にすれば、メアリーはぽかんと口を開け、それから、小さく息を吐き出した。




「――――――――――どうして、私の周りの方々は、殿下のことを敬うということをされないのでしょうか・・・・・・まぁ、確かに、強引すぎるところが多々見られ、いい加減にしろ、と思うことはありますが・・・・・・」


「やはり、強引なのか」




 たびたび王太子殿下の行動を見てきたし、先日の閣下の謁見の際の彼の態度を見れば、少々強引すぎるように見えた。




「殿下の行動が行き過ぎるようなら、こちらでも話し合う必要があるな・・・・・・」















 んー、と腕を組み、真剣に考え始めたころに、キャロラインとルイにあいさつを済ませたレベッカが室内へと入ってきた。




「お待たせしました」




 にっこりとほほ笑みながらこちらへとやってきたレベッカは、まず、メアリーに一礼をし、それから、なぜか彼女の向かいの席で難しい顔をし腕を組んでいる弟のほうを見た。




「イアン、どうした?」




 常々、自分や妹たちや母に女性には優しく、笑顔を絶やさずに、と言い含められている弟が、珍しく女性の前で難しい顔をしている。しかも、自らが望み、婚約者候補にと決めた女性の目の前でだ。

 これは、何かあったな。

 そう、レベッカの軍人としての勘が告げた。

 だから、弟へと訊けば、弟は声を掛けられて初めてレベッカが室内へとやってきたことに気付いたらしい。

 気配の察知がまだまだ甘すぎだな。要特訓事項。と脳内のメモに書き留め、しかし、それを察知させるような態度はせずに、相変わらず難しい顔をしている弟の目をまっすぐを見た。




「姉上、少々、問題が」


「ん、聞こう」




 短く言葉を返しながら、メアリーにすすめられた椅子に腰を下ろす。




「どうやら、私たちが思っている以上に殿下の行動が行き過ぎているようです」




 まっすぐとこちらを見ながら言うイアンに、レベッカは「ふむ」と小さくうなずいた。




「一度、ガーディナルを集める必要がありそうか?」




 そう問えば、イアンはわずかに思案し、それから、はっきりとうなずいた。




「―――――あまり、大事にするなと閣下にも、キャロライン様にも言われていたのだが、そうも言ってられそうにないな・・・・・・。確かに、他のガーディナルからも少々行き過ぎていると報告が上がってきている。わかった、父上には私のほうから進言しておこう」


「よろしくお願いします」




 同じように腕を組み、あごに手を当て思案しそう告げたレベッカに、イアンは小さく頭を下げた。




「ということで、メアリーアン様」


「は、はいっ」




 難しい顔で会話をしていた二人の邪魔にならないようにと、レベッカの紅茶を淹れ、静かに二人の会話が終わるのを待っていたメアリーに急に声をかければ、メアリーは小さく肩を弾ませ、少しだけ硬い表情でレベッカのほうを見上げた。




「少々、これから、あなたの周りがにぎやかになるかもしれませんが、必ずやあなた様をお守りいたしますので、安心なさってくださいね」




 にっこりとほほ笑み言えば、メアリーはうなずきながらも、首をかしげていた。




「ふふ、本当に可愛らしいお方だ。本気で、イアンのところで来ないかい?」




 うっとりとした表情で、可愛らしいメアリーの頬に手を添え、艶やかな声音で言うとメアリーは、先ほどまでの硬い表情を一変させ、耳まで真っ赤に染まった。




「姉上。メアリーが困っています」




 おやめください、と続ければ、レベッカは「残念」と小さく笑った。


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