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10.お父様が帰ってきました 問題を連れて

 レベッカ様が来られてからの1週間は、そんな感じで過ぎていった。

 いくらなんでもお父様がお帰りにならない日が長すぎるとは思ったが、それも子供が聞いたって結局はぐらかされるだけなのだということをわかっていたから、誰にもそれ以上は追及をしようとは思わなかった。ヘタに追及をしたって、困るのはリズやアンやサラなのだから。

 お母様も自室にずっとこもって何かをされていらした。

 三日目には本を読み終わったので、読み終わったことと、次の本をと思いお母様の自室へと訪れれば、扉の前で本を渡し、追加の本を3冊渡されただけのやり取りで終わった。

 そうこうしているうちにまた、1週間がたち、レベッカ様にご招待されたお茶会へと向かうこととなった。

 オルコット家までの道のりは馬車を使った。

 リズが御者をしてくれ、オルコット家までつくと、2,3オルコット家の家令と会話をし、帰りは送ってもらえるということだけを言われ、そのままリズはもと来た道を帰っていった。

 ぽつりと玄関ホールに残された私。

 そう時間もかけずに現れたのは、自分よりも頭一つ分以上背の高い男の子だった。


「お初にお目にかかります」


 すっと一呼吸の吸い込みそう口を開いた男の子の声に、私は息を飲み込むこととなった。

 聞いてない、こんなの聞いてないからっ!!

 若干ゲームの時のスチルよりも幼いけど、彼、シリル殿下の取り巻きだよ!!スチルのバックにたいていいたもん!!名前もない、声すらあてられてないモブキャラのはずなのに、なにこのイケメンボイス!!!!しかも、なんで、こう、私のドストライクをねらってくるの!?

 まっすぐと私を見下ろしてくる瞳は、濃い紫色で、どこまでも吸い込まれそうな色をしていた。その髪もこちらではまずあまり見ないのではなかろうかと思うぐらいに濃い濃紺だった。

 まるで、闇をまとっているのではなかろうかという色素の彼の声が、この美声なのは反則ですっ!!しかも、初対面の私に向けてすっごくきれいな笑顔を向けてるしっ。

 と、あぶない、向こうが自己紹介をしてくれたのだから、こちらも自己紹介をしなければっ。

 慌てて、でも、焦っているようには見えないように、ちょこんとスカートをつまみ、少しだけ腰を落とし頭を下げ名乗る。

 一瞬相手が息をのんだような気がしたが、キノセイだよね。

 初対面なんだもの。


「一の姉上が無理なお願いをしたと聞いています。女性は支度などが大変なのに」


 一の姉上・・・・・・?


「あぁ、レベッカ様のことですか?」


 首を傾げそう問えば、彼は謝罪をし、レベッカ様のことだと答え、そして、それぞれのお姉様の呼び方について教えてくださった。

 それから、そういえば、と思い、招待をしてきたはずのレベッカ様のお姿が見えないことを聞くと、レベッカ様もほかのお姉様方も急用で席をはずしているということらしい。

 あ、これ、本気でお見合いの席ですね。

 なんて、頭の半分で冷静に考えつつ、それでも、もう半分は心に直結をしているのか、目の前で自分のことをレディーとして扱い、そして、優しく微笑みかけながらエスコートをしてくれているイアンへと傾いていた。

 だめよ、私は立派に一人で生きていきたいんだからっ。

 こんなところで誘惑に負けちゃだめよ!!だいたい、レベッカ様はイアン様のお相手にと私のことを押してくださいましたが、お二人のご両親がそれを許すかどうかもわからないんだもの。伯爵家としては、きっと、家格の上のご令嬢と結婚していただきたいだろうし、なによりも、将来王太子殿下の取り巻きになるのならば、できれば、あまり、近づきたくない・・・・・・うん、あまりね、そう、あまり・・・・・・ちょっとぐらい、一緒にお茶をしたりするぐらいは、許容範囲内だよね・・・・・・?

 それからイアン様はとても紳士的でした。

 自宅にはない立派な薔薇園に見入っていれば、一輪の薔薇を手折り、とげを丁寧に取り除き、私の髪にさしてくださったり、椅子を引いてくださったり、紅茶を甘めにするのが恥ずかしくって、イアン様の方を見ていれば、それを察してくださったのか一言添えて下さるし。

 ほんと、シリル殿下とは大違いっ!!!

 これぞまさしく、年上の包容力?あれ?違うっけ?年上の余裕??それもなんだか違う気がする・・・・・・。

 帰りには残った茶菓子をお土産にって包んでくださいましたし、次回のお約束まで声をかけてくださいました。

 ほんと、素敵な方です。

 突然、何の前触れもなくやってきたり、事前に連絡といいつつも、その日の朝に連絡を入れてくるようなどこぞの殿下とは大違いですね!!

 ほんと、さっさと殿下はクリフォード公爵令嬢様とご婚約されてしまえばいいのです。

 にしても、イアン様は本当に婚約者がいらっしゃらないのでしょうか?これだけ素敵な方なのに、未だにいらっしゃらないなんて、不思議です。実はいますよ、と言われたとしても、納得してしまうぐらいに素敵な方なのに・・・・・・。

 はぁ、だめだってわかってるのに、好きになってしまいそうで怖いです。

 だめです、立派に一人で生きていくために頑張らないといけないのだからっ。

 そうです、今日も今日とて、お母様から出されたノルマを片付けなければならないのですからっ!!

 そうして、イアン様との楽しかった時間を思い返すのはひとまず横へと置き、お母様から渡された本を手に取り、視線を落とす。

 最近はお母様も一緒に夕食を食べないので、自室で簡単につまめるものと野菜たっぷりのスープをお願いしているのです。

 今日も片手に本、片手に軽食(今日のはイアン様にお土産としていただいたサンドイッチ)を手にしつつ本を読み進めます。

 あぁ、本当に、このサンドイッチは美味です。

 と、だめです、本に集中しなくてはっ!!







 コンコン







 必死に頑張って本に集中をしようとしていた時に扉がノックされました。


「はぁい」


 本とサンドイッチを机の上に置き、扉を開けに行くと、そこには2週間ぶりになるお父様がたっていらっしゃいました。


「お父様っ!!!お帰りになられたのですね!!!」


 嬉しそうに声をあげそういえば、お父様はかなり疲れ切った顔で、それでも私に笑顔を向けつつ「ただいま」と返してくださいました。


「お母様にはもうお会いになられましたか?」

「今日はもう休んでいると聞いたからね、起こさないように言ってきたから会っていないよ」

「お母様も最近はとても忙しそうにされていらっしゃいましたから、きっとお疲れなのですね・・・・・・もう、いつ生まれてもおかしくありませんのに」

「最近は部屋で食事をとっていると聞いたからね、ここに運ぶように頼んできたから、一緒に食べてもいいかな?」

「はい、喜んでっ!!すぐにテーブルの上を片付けますね!!」


 くるりと踵を返し、部屋の中へと戻ると、お母様から渡されていた本を重ね、読みかけの本には手作りの栞をはさみそれも一緒にベッドの横にあるサイドテーブルへと移動させた。

 少しも時間を置かずに、アンとリズが部屋へとやってきて、アンは私が場所を開けておいたテーブルの上に、お父様の食事を並べ、リズは留守中にあったことをお父様へと報告をしていた。


「後、お嬢様のことで一つご報告がございます」


 というリズに、お父様は私の方へとその視線を向け、それからまた、リズへと視線を戻した。


「先日レベッカ様が訪れた際、お茶会に誘われまして、本日、オルコット家へと招かれ、お茶会に参加されました」

「あぁ、レベッカのところか・・・・・・帰り際に、オルコット伯からも話を聞いたよ。なんでも、レベッカとキャロラインがメアリーの婚約者にってイアンを押しているらしいな」

「えぇ、私としましても、オルコット伯のイアン様でしたら、安心してお嬢様をおまかせになれますので、シリル殿下が無茶なことをする前に、さっさと婚約をしてしまえばいいものを、と思っているところです」


 と、思いっきり本音ダダ漏れのセリフをはいてくださったリズ。

 おーい、リーズー、本人目の前でそれいうのやめないー?


「まぁ、俺としても、オルコット伯のところなら、安心なんだけどなぁ・・・・・・と、そうだった、リズ、先ほど預けたアレを持ってきてくれ」


 まさかのお父様までノリノリな発言でした。

 この家の中に、私の味方いないのね・・・・・・て、お父様。しばらくお仕事で忙しかったのにお土産を持って帰られていらっしゃるのですか?


「すでにサラが扉の前まで持ってきております」

「あいかわらずだなぁ、サラそれを連れて入ってきてくれ」


 閉められている扉に向ってお父様が言うと、「失礼します」といいサラが入ってきた。

 その手にはこの家では見たこともない箱が持たれていた。


「サラ、それをメアリーに」

「よろしいのですか?」

「もともとメアリーの助けになればと思って連れて帰ったのもあるからな」

「畏まりました」


 そういうと、サラは手に持っていた箱をテーブルの上へとおろした。

 箱の中を覗き込めば、そこにはこの辺りでは珍しいハクロが入っていた。


「お父様、これは・・・・・・」

「名前ぐらいは知っているのだろう?」

「えぇ、ハクロですよね・・・・・・」


 ハクロは、前世でいえば、鷲のような生き物だ。肉食で、前世の世界では考えられないぐらいに大きな個体もいると聞いたこともある。稀に人里にまで現れ、家畜の牛を捕って逃げるとか・・・・・・。


「今回、遠征でしばらく街を離れていてな」

「街から離れていたのですか?街の警備がお父様のお仕事なのに?」

「まぁ、いろいろあってな。それも含めてこれから説明をしようと思っている」


 それは話が長くなるということですね。


「アンとサラは下がっていてくれていいよ。むしろ、このハクロの飼育施設を整えないといけないから、そちらの方を頼めるか?」

「「畏まりました」」


 そう二人そろって言うと、アンとサラは部屋から出て行った。


「まずはどこから話そうか」


 いろいろと話さないといけないことがあるからな。

 なんて、苦笑しつつ、アンが用意してくれていった軽食へと手を伸ばし口へと頬張られた。


「―――――――お父様がこれからお話になられようとしていることは、“我が家の事情”ということに関係があるのですか?」

「そうだね。それじゃぁ、“我が家の事情”から話をしようか」


 そうおっしゃいますと、お父様は何もないところから何かを取り出した。そして、その取り出した何かをテーブルの上へと置き、私へと見せた。

 それは、我が家の華印だった。

 薔薇の模様があしらわれている華印は、うちの家紋のようなもので、正式な文章をしたためるときには必ずこの華印を押さなければならない。


「お前にはまだ、この華印の意味も教えていなかったね」

「家名がローズだから、薔薇なのではないのですか?」

「確かに、家名ともじって決まったというのもあるが、華印は、華の家紋を持つということは、ある重大なことを示しているのだよ。それが、“我が家の事情”だよ」

「もったいぶらずにおっしゃってくださいな。ハクロのお話もあるのでしょう?」

「メアリーは魔石を知っているよね」

「はい。厨房で料理の手伝いをしている時や、アンやサラと一緒に掃除をしている時に何度か見かけました」


 魔石って不思議な石なんだよねぇ。

 この世界には魔法使いっていう概念がないはずなのに、なぜか石には魔力が込められてあって、その石を動力源に使って、前世のようなオーブンとかがつかえるんだよねぇ。しかも、魔石は半永久的に使えるらしい。なんでも、空気中に漂っている魔力を絶えず吸収し続けているらしいのだ。


「あれの原理は知っているかい?」

「魔石の原理ですか?サラとアンに聞いた話によれば、絶えず空気中の魔力を吸い込んでいるらしい、ということでしょうか?」

「そうだね。それであっているよ―――――では、もし、人間の中にも、魔石と同じような原理のもとにいるものがいたらどうなるだろうか」

「人間ですか?」

「あぁ、そうだよ」


 人間がもし、魔石と同じ原理で魔力を集めることができたら。んー・・・・・・。


「それじゃぁ、集めた魔力を、具現化し、なにかの現象を起こすことができる人間がいるとしたら?」


 しばらくうなり考えていれば、お父様が再度そう聞いてきた。


「―――――それは、魔法使いというものですか?」

「そうだね―――――それが“我が家の事情”だよ」

「――――――――――では、お父様は魔法使いなのですか?」

「あぁ、そうだよ」

「全然そんな素振り見えませんでした」

「時が来るまでは黙っていようと思っていてね。ちなみに、キャロラインも優秀な魔法使いだよ」

「まぁ、お母様もなのですか?」

「そうだよ。私は黒の手の使いで、キャロラインは白の手の使いだよ」

「黒の手、白の手?」

「黒の手とは攻撃特化の魔使いのことだよ」

「では、白の手は癒し特化ということですか?」

「そうだよ」

「――――――――では、その流れで行きますと、私も魔法使いなのですか?」

「正確には、まだ、メアリーは魔使いだよ」

「魔使い?魔法使いではなく?」

「そう。まだ、メアリーは何も知らないからね。ただ、魔を使うことができるというだけだから、魔使い。それに、様様な理を知ることで初めて、魔法使いになれるのだよ。魔には理と、法が必要不可欠だからね。それで、その華印のことに戻るのだけどね、華をかたどっている華印をもっていいのは、魔使い、および魔法使いの血のものだけだと決まっているんだよ。そして、ローズ家は、代々魔法使い達を取りまとめる立場にいるものだ」

「わー・・・・・・なんか、一気にお話がすごい方向へと飛んでいきましたねぇ・・・・・・」


 思いっきり棒読みで言ったのは、そんな話を聞いたら、下っ端庶民になれないじゃないか、とか思ってしまったから。


「それで、ここからはメアリー、君のお話だから、よくお聞き。君はね、とっても稀有な存在なんだ」


 うわ、いやなフラグキタコレ。


「君は、黒の手の私と白の手のキャロラインとの間に生まれた、本当に稀有な、そして、今までに見たことのない力をもって生まれてきたんだ――――――君は、黒の手の力も、白の手の力も持って生まれてきたんだ」


 うわぁああああああ、これぞまさしくヒロイン補正!?

 いや、マジいらないし・・・・・・。

 てか、そりゃぁ、一般人になりますよ、とかいう話、全否定されるわぁ・・・・・・。


「君はこれから、キャロラインと私から、多くの魔の理と法を学び、そして、学園に入学する前までには魔法使いとなってもらわないといけない」

「え、ちょっと待ってくださいお父様。私の学園入学まで、後4年しかありませんよね。んなむちゃくちゃな」

「そうは思わないが」

「6歳児になに過大評価しているんですか!?」

「だって、君はこの2週間の間に、キャロラインから渡された本を10冊は読んでいるはずだよ?」

「ギクッ」

「今、君が読みかけていた本は薬草学が一通り終わった後の薬学の本だからね。最低でもそのぐらいは読んでいるはずだ」


 我が父、侮りがたし・・・・・・読んでいる本だけで、どれだけ読んでいるのかとかわかるんですね!!!


「てことで、明日からは私からも課題を出すから、それもしっかりこなすように」

「――――はい・・・・・・」

「あぁ、で、オルコット伯のイアンなら私も大賛成だっていう理由はな、魔法使いの家系を守っている貴族がいてな、その代表の四家が、ガーディナルと言ってな」


 あぁ、もう、そこまで言われたらわかっちゃったよ・・・・・・。


「オルコット伯もそのガーディナルなんだ」


 でーすーよーねー!!!!!

 フラグ回収乙っ!!!


「イアンには何度か剣の稽古をつけていたが、あいつはまだまだ強くなるぞ。今年から開始されたシリル殿下の側近の護衛騎士にも、イアンが上がっていたし」

「あぁ、イアン様はシリル殿下の取り巻きではなく護衛騎士なのですね」

「取り巻き?なんのことだ?」

「いえ、こちらのことですのでお気になさらず」

「まぁいい。で、イアンは本当にいいぞー」

「お父様までおっしゃるのですか・・・・・・」


 あまりにも自分の周りがイアン様プッシュすぎてそういうと、お父様は「なんだ」とどこか意外そうな顔をし、


「今日、イアンにあったのだろう?なかなかの好青年で、今後の見どころも十分あっただろ。見た目も悪くないし、性格もすこぶるいいぞ。あいつなら、安心してメアリーを嫁にやれる」

「確かに、少ししかお話はしていませんが、イアン様はとても素晴らしいお方だと思います。ですが、そんな素晴らしいお方が今まで婚約者もいらっしゃらないというのは」

「この国の貴族は、たいてい婚約者を決めるのは学園に入ってからだからなぁ。上流の貴族は学園に入学する前に婚約者を決めてはいるが。それこそ、シリル殿下のことを見ていればわかるだろ。学園に入学するまで2年を切ったからと、クリフォード公のロゼッタ嬢をと、話が上がっているだろう。あれは、下位のものに現を抜かす前に、という上層部の思惑の表れだぞ」

「そんなものに巻き込まれるクリフォード公のご令嬢にはお見舞い申し上げるところですわ」

「お前、シリル殿下に対して、本当にひどいな」

「あっさりと登城を拒否していらしたお父様には言われたくありませんわ」

「これ以上メアリーに深入りしても無駄だからな。お前に魔使いの才能があると知った時点で、王族は相手には絶対にならないんだよ。カルロもそれを知っているのに息子を諫めないから困る」

「カルロ・・・・・・あぁ、国王陛下のことですね」

「昔なじみでな。キャロラインなんて、ティナリア妃の親友だからな」

「あぁ、その関係でシリル殿下が私の誕生パーティに来られていたのですね」

「まぁな。あれは誤算だったなぁ」

「お父様でも誤算なんてあるのですね。それで、そろそろ初めのお話に戻ってもよろしいでしょうか?このハクロはどうされたのですか?」


 いつまでも脱線し、話を長引かせるには、夜もいいお時間なので、軌道修正をすれば「あぁ」とお父様はすっかり忘れていたといった。

 そんな気がしましたよ・・・・・・。


「うちの事情に関係してな、稀に、魔石や魔使いと同じような体質の獣が生まれ、それが魔獣となって人を襲うことがあるんだ。それで、魔使いの方から討伐隊が出されるんだ」

「へぇ・・・・・・で、このハクロはどうされたのですか」

「2週間前に少々大型の魔獣があばれているという情報が寄せられ、すぐさま向かったんだ。キャロラインとも密に連絡を取りつつ、負傷者へと回すための薬を作って送ってもらっていたんだが、今日まで討伐をするのに時間がかかってな。それで、やっとこさ討伐をしたら、その魔獣がすでに子を産んでいたことが分かったんだ」

「で、その子供がこのハクロだと」

「ま、簡単に言えばそういうことだ。しかも、これは魔獣になる素養がある。本来ならば魔獣は討伐対象で、すぐさま処分をするのだが、稀に幼くして見つかった魔獣を飼いならすということをやっているんだ。それで、これからのことも考え、コレを私が引き取り、お前に面倒を見させ、お前の使役獣にすればいいと思ったんだ」

「どうやって世話をすればいいんですか。私、ペットすら飼ったことありませんのよ?」

「詳しいことはリズに聞け。今、アンとサラに庭に大きな鳥かごを作るように言っているから、明日には完成するだろ」

「何を無茶な。大きな鳥かごを作るのに、一晩でできるわけないでしょう」

「あいつらならできるぞ?」

「――――――――――――まさか、アンとサラも魔法使いなのですか・・・・・・?」

「むしろ、この家の使用人は全員魔法使いだぞ?」

「っ!?」

「魔法使いはこの国にいない扱いになっているからな。へたに一般人を雇うよりも安全なんだ。お前の護衛も含めてだから、その方が効率もいい」

「てことは、料理長や、庭師のおじいちゃんも!?」

「むしろ庭師の爺はお前の祖父だぞ」

「聞いていませんから!!!!!!!」

「あぁ、そうか。お前に魔使いのことを話すまではって、黙っているように言い含めてたんだっけなぁ」

「あとで、ジル様にはお伝えしておきます」


 さらりとできる家令のリズが一言そういうと、お父様は「頼むわ」とだけおっしゃった。

 むしろ、お爺様を庭師に雇っていいのだろうか・・・・・・。

 まぁ、難しいことは考えないでおこう。


「んで、このハクロなんだがな」

「あぁ、ハクロに戻るんですね」

「エサはさっき、料理長のコーネリアに頼んでおいたから、明日の朝までに適当に見繕ってくれてるだろ」

「―――――」

「住む場所は、しばらくはメアリーの部屋でいいだろうが、あとひと月もすればこの部屋では手狭になるし、適度な運動は必要だからな。アンとサラに鳥かごを作るように言ったのはそういう理由だな」

「ちなみにお父様」

「なんだ?」

「討伐をされたハクロの大きさはどのぐらいだったのでしょうか」

「あー・・・・・・まぁ、大きかった、とだけ言っておこう」

「正確な大きさをお願いしますっ!!」


 思いっきり目をそらしたお父様に鋭い口調でそうつつけば、さらにお父様はだらだらと汗を流し始め、そして、大きな、それは大きなため息を一つつき、


「大きな牛ぐらいの大きさ、かな・・・・・・」

「なんでそんな生き物を拾ってこられたのですかっ!!!!!これから弟か妹が生まれるというのにっ、なぜ、そのような危険な生き物を拾ってこられたのですかっ!?」

「魔獣になったハクロはとても珍しくってな、しかも、知能もすこぶる高いから、いろいろと役に立つんだよ。しかも、エサは魔力を供給すれば、ある程度は抑えられるし・・・・・・メアリーは魔力が有り余っているから、これはちょうどいいなと思ってな。と、とにかく、こんばんはハクロを枕もとに置いて寝ることっ!!一晩そばに置くことで、己の主人の魔力を理解するからな、絶対だぞ!!勝手に捨てに行くんじゃないぞ!!」

「そんな、むごいことできませんよ・・・・・・」

「メアリーが心根の優しい子で本当によかった。では、私はそろそろ休みたいから退室させてもらうことにするぞ、リズ、さぁいくぞ!!」


 と、逃げるように自室を出て行かれました。

 後に残されたのは、箱の中でひよひよと力ない声をあげているハクロと、押し切られてしまった私のみでした。


「完璧に押し付けられたわね」


 ぽつりとそういうと、箱の中のハクロがか細い声をあげて鳴いた。


「そんなに不安そうな声を上げずとも、捨てたりはしないわよ」


 はぁ、とため息をつき、私は箱を持ち上げ、枕もとまでもっていくと布団の中へと潜り込んだ。


「それにしても、ふわっふわねぇ・・・・・・さわっても大丈夫なのかしら・・・・・・」


 そういいながらも、そぉっと右手を出して、ふわふわの羽毛をこっそりとなでる。

 それは、真綿よりも軽かった。

 まぁ、羽毛だもんね・・・・・・と思いつつも、真っ白いハクロの羽を再度なでた。


「名前を決めないといけないわねぇ・・・・・・」


 頬杖を突き、羽をなでながら言うと、ハクロはこちらの方を見上げて首を傾げた、気がした。


「――――――――――まっしろくって雪みたいだから、雪ちゃんでどうかしら?」


 て、この子、男なのか女なのかもわからないんだったわ・・・・・・。

 にしても、大きいわね・・・・・・すでに私の両手よりも大きい気がするのだけど・・・・・・これ、本当に大丈夫なのかしら・・・・・・。

 なんだかいろいろあったなぁ・・・・・・。

 一番衝撃的だったのは、庭師のおじいちゃんが私の本当のお爺様だったってところだろうか。

 なんで庭師なんてしてたんだろう・・・・・・。

 てか、家にいる人みんな魔法使いって、あぁ、まだ、私だけが魔使いだけど、でも、そうするといろいろと納得するんだよなぁ。特にアンとサラ。ローズ家って、使用人は本当に少ないんだよねぇ・・・・・・。メイドはアンとサラだけだし、料理長さんもコーネリア一人だし。たまにヘルプなのか何なのかわからないけど、コーネリアのもとに修行に来ている人が何人かいるけど、その人たちがいないときは、コーネリア一人でみんなの料理を作っているし。家令のリズなんて、いい年いってると思うのに誰よりもよく動く。ていうか、家の修繕までやっていた時はさすがに驚いて声をあげてしまった。てか、あの年で、屋根に上って金づち握ってる姿はシュールでした。しかも、いつも着ている燕尾服だったし・・・・・・。

 それにしても、おかしいわねぇ・・・・・・ゲームの中の設定では、ごく普通の男爵令嬢だった気がするのだけど。

 まぁ、似て異なる世界ってことなんだろうなぁ・・・・・・。


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