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壊れている救世主は少女達を救う  作者: 剣流星
第七章:変革の色―ChangeTheWorld―
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80.ネクストステージ

この話、ここで終わります。

 剣山第一高等学校。


 テロリストの襲撃が日本で起こったという衝撃的な事件から一週間が経過した。


 今も校内は警察や軍隊が入っており、生徒達の多数が病院で検査や治療を受けている。


 宮本夜明は立ち入り禁止のテープが貼られている校門をみていた。


 剣山第一高等学校の制服を着ず、黒一色の私服ということで近くにいるマスコミや野次馬達は誰も夜明がこの学校の関係者だと気付いていないだろう。


「あれ、夜明君?」


 呼ばれて視線を向けると立ち入り禁止のテープの向こう側で水崎姫香が驚いた表情でこちらをみていた。


「立ち入り禁止の筈だぞ」


「あ、私、関係者だから」


「そうか」


 水崎姫香は日本の英雄に数えられているホルダー。


 彼女が在籍している学校が標的となったことでよりマスコミ達が騒ぎだしたことが原因だろう。


「夜明君は?病院の検査帰り?」


「そんなところだ」


 ウソである。


 ある目的があって校舎に忍び込み、その帰りだった。


 だが、姫香を含め、関係者たちは知らない。


 宮本夜明がどういう存在なのか。


「あ、待って!」


 帰ろうとしていた夜明を姫香は止める。


「私も、これから帰るんだ。一緒に歩かない?」


「……お好きにどうぞ」


 待っていてね?


 そういって宮本夜明に伝えて校舎の中に消える。


 管理官か、責任者に話を通しに行ったのだろう。


 少しの間、夜明は待つことにした。














 しばらくして私服姿の姫香がやってくる。


 彼女は笑顔で「待ちましたか?」と尋ねてきた。


「ああ、待った」


「うっ、すいません」


 夜明の言葉にウッとダメージを受けたような表情になる。


 ころころと表情の変化が激しい奴だ。


「……帰るんだろ?」


「はい」


 笑顔を浮かべて夜明の隣を歩く姫香。


 面倒そうな表情をしている夜明だが、嬉しそうに姫香が話しかける。


 学校であったいつものやりとり。


 だが、これも最後だ。


「夜明君は黒の騎士団のこと、どう思います?」


「ニュースでしか聞いていない。世界各国で魔物を討伐する集団のことだろう」


「はい……」


 先日、世界のホルダー達が集まり、会議した中。


 世界中に登場した魔者を討伐する専門の部署として日本で活動していた黒の騎士団が正式に対策チームとして活動することが決まった。


 これについては日本の大和機関が了承、メンバーに少しばかりプラスされた形で世界中に出現する魔物と使徒達を討伐することを目的とする。


 何より、討伐が不可能と言われている女王級を倒すこと。


 その発表にマスコミや市民は驚きを隠せず、騒いでいる。


 だが、続けて発表された内容に誰もが息をのんだ。


 それは顔を隠された黒の騎士団の一人が女王級を倒すところ。


 金剛の女王が消滅する場面に誰もが驚いていた。


「世界中で魔物を倒すってことは大変だなと思う。だが、これで色々と変わるんじゃないか?」


「変わる?」


 不思議そうな顔をしてこちらをみてくる。


 夜明は姫香をみた。


「何だ?」


「いえ、その、何でもありません」


「気になるな」


「ごめんなさい。別に悪気があるとかそういうわけじゃないんです。ただ、出会った時よりも夜明君が変わったなぁと思いまして」


「そうか?」


「はい、前よりも固い雰囲気がなくなったというか、少し丸くなったような気がします」


「わからないな」


 視線を合わせずにいう。


 そんな話をしている間にマンションに辿りついた。


「じゃあ、明日」


「ああ」


 姫香がマンションの前で手をひらひらと振る。


 夜明は軽く会釈して自室の中に入った。


「     」


「え?」


 去り際に夜明の呟いたような気がして姫香が跡を追いかけようとした。


 しかし、ギィと音を立ててドアが閉まる。


 姫香が伸ばした手は空を切った。

























「夜明さん」


 自室の中に入ると吹雪が待っていた。


「荷物の片づけは終わったか?」


「はい」


 そういって吹雪と共に夜明は周りを見る。


 足元に置かれているキャリーバッグが二つだけ。


 周りにあった机や椅子などを除いて、全てがきれいさっぱりなくなっている。


「この部屋、広かったんですね」


「最低限のものしか置いていなかった。だが」


 夜明は思い出す。


 一人だけだった部屋。


 そこにいつの間にか吹雪、キリノがやってきて、この部屋は騒がしくなった。


「俺は一人だった。だが、いつの間にか、周りにたくさんの人がいて、手で救い上げるのが難しいくらいの“大切なもの”ができた」


「夜明さん……」


「周りが何を考えていようと関係ない。俺は、俺の大事なもののために戦う」


 拳を作って夜明はベランダからみえる空を睨む。


 その手に吹雪が自分の手を重ねた。


「夜明さんは一人じゃありませんよ。吹雪がいます。吹雪がいますからそんな不安そうにしないでください」


 にこりとほほ笑む吹雪。


「キリノもいる!」


 夜明と吹雪の間に割り込む形でキリノが抱き着いてきた。


 一瞬で顔を歪める吹雪に気付きながらも夜明はキリノを抱きかかえる。


「行こう……」


 二人が頷いたことを確認して。


「おいおい、俺らのこと忘れるなよ」


 後ろからの声に振り返ると来栖とノノアが立っていた。


「もう~、アジトで待ち合わせするつもりだったのに、お兄さんがこんなところにいるから迎えに来ちゃったよ」


「すまないな」


 肩をすくめている来栖とノノア。


 自分の仲間。


 少し前まで不要だと思っていた、だが、今は大事になっている。


 そんな彼らと自分は共に行く。


 室内の明かりを消す。


 全員がいつもの戦闘服を纏う。


「俺はすべての魔物を殺す。俺の大事なものを奪う奴らをすべて倒す」


 一瞬で黒衣に身を包み、夜明は闇夜の中に消えた。























――俺はすべての魔物を滅ぼす。俺の大事なものを奪った奴らを。


 大切なものを奪う連中を俺は許さない。


 周りから何と言われようと、俺は立ち止まらない。


 悪だと指をさされても、何と言われても俺は歩き続ける。


 仲間と共に。


 全ての魔物を殺して見せる。






一応、一区切りとしてこの話は終わります。


長い間、お付き合いしていただきまして、ありがとうございます。


次の作品を書くときはもう少し頑張りたいです。

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