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壊れている救世主は少女達を救う  作者: 剣流星
第七章:変革の色―ChangeTheWorld―
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79.恨まれる者、恨む者

この章も次回の話で終わる予定。



「あれ?」


――生きている。


 金属がぶつかり合う音が廊下に響いたことで首は胴体からさようならしていたと思っていた。


 しかし、首は繋がっている。


 ならば?


 二人が前を見ると繰り出された斬撃をキリノがナイフで受け止めていた。


「キリノちゃん!?」


 とても小さな体で必死の表情を浮かべながらキリノはノワールの斬撃を防いでいる。


「おやぁ?」


 不思議そうな表情でノワールは目の前のキリノをみたがすぐ不快そうに顔を歪める。


「お前、失敗作か」


「……」


 ノワールの言葉にキリノは表情を変えない。


 それどころか服の中から投擲用のピックを投げる。


「雑だな」


 額を狙ったピックをノワールは長い髪を振るって弾く。


「マジかよ」


 髪の毛でホルダーが投げたピックを弾く。


 規格外すぎると来栖は本気で思った。


 ノノアも同じ事を思っていたのだろう。目を見開いている。


 いくらホルダーでも髪の毛で投擲用の武器を弾くなど規格外すぎた。


「雑だ。動きに無駄が多い。こんなもの、生きていても仕方がない」


「キリノ!逃げ――」


 目を見開いているキリノに向けてノワールの刃が迫る。



――という寸前で動きを止めた。



 突然のことに驚いている彼らの前に別の存在が割り込んでいる。


 漆黒の服、顔を覆う仮面のようなもの。


 手の中に握られている刀はバチバチと鳴っていた。


 雷を纏っている刀の先はノワールの眼前へ突きつけられている。


「ああ、久しぶりだねぇ」


 嬉しそうに、とても嬉しそうに目を細めながらノワールは間に割り込んだ存在を見つめている。


「キリノ、大丈夫か?」


「……パパ?」


 ヘルメットで顔を隠している人物、セイヴァー01が尋ねる。


 ボイスチェンジャーを解除しているのかヘルメットの中から聞こえてくるのは宮本夜明のものだ。


「お前、どうして!?」


 驚いたように来栖が問いかける。


 宮本夜明は仲間の吹雪と日本を離れていた。


 事態へ気付いたとしてもこうして駆けつけることは不可能の筈。


「円卓の手助けを受けたんだね?」


「ああ」


 ノワールの問いかけに短く夜明は答える。


「いやぁ、円卓の中に空間を移動させるホルダーがいることはわかっていたけれど、キミのために開くなんて、よほど、気に入られたみたいだね」


「……」


「ああ、ああ!」


 小さく呻くように言葉を漏らしながらノワールは叫ぶ。


「ボクだけのものだ!キミはボクのものなのに!みんな、手を出し過ぎなんだよ!ふざけるなよ!人のものに手を出したらどうなるかということを教え込んでやろうか!」


 狂ったように叫び続けるノワールから視線を外してセイヴァー01こと夜明は座り込んでいるキリノや来栖達に声をかける。


「大丈夫か?」


「お前、こんな状況でよく声をかけられるな?」


「あんな恐ろしい相手が後ろにいるのに」


「アイツのあれはよくあることだ。慣れれば気にしなくなる」


「慣れたくねぇよ」


「パパ」


「キリノ、大丈夫か?」


「ごめんなさい」


 夜明の言葉にキリノは小さく俯いた。


「どうした?」


「パパの役に立てなかった……アイツに殺されかけた。ごめんなさい。弱くて、ごめんなさい」


「今はまだいい」


 俯いているキリノの頭を夜明は撫でる。


「奴と斬りあって生きていられること自体が凄いんだ。お前はこれからも強くなれる。だから、ふさぎ込むな。今は俺が守ってやるから」


 仮面の中で微笑みながら夜明。


「守る?」


 その言葉に反応したのはノワール。


 顔の半分を手で隠しながら楽しそうに笑う。


 突然の行動に来栖達は戸惑うばかり。


 夜明は尋ねる。


「何が可笑しい?」


「これが笑わずにいられるものか?守る?キミが?壊すこと、殺すことしか知らないキミが守る?いやぁ、本当にボクを笑い殺すつもりかい?ふふふふ」


 ダンと空間が歪んだ。


 同時にノワールが夜明へ手を伸ばす。


 夜明はキリノを抱き寄せるようにしながらその場を離れる。


 離れたことでノワールの繰り出した剣は空ぶった。


「うーん、躱すか、前よりも成長していることを喜ぶべきか、ボクの望んでいる通りになっていないことを悲しむべきか、悩みどころだねぇ」


「黙れ」


「パパ?」


 キリノは夜明の体が震えていることに気付いた。


 その震えがどういうものかわからずにキリノは戸惑いの声を漏らす。


「ん?もしかして」


 夜明の様子に気付いたのか、ノワールが顔を歪める。


「怒っているの?もしかして、キミはボクに対して、怒っているのかな?あはははは、それはなんて、なんてとても――」


 一瞬、ノワールの表情から感情が消えて。


「ふざけんなよ。コラ」


 瞬時に、夜明の前に立ち、拳を振るう。


 迫る拳を夜明は仮面で受け止めた。


 粉々に砕け散る仮面の中から怒りに顔を歪めた夜明の表情が姿を見せる。そして、近づいて。


 容赦のない頭突きがノワールに直撃した。


 攻撃を受けて倒れそうになるノワール。


「それはこっちのセリフだ」


 怒りを吐き出すことを堪えながら夜明は言葉を発する。


 いつもの何倍も低い声にキリノは少し怯えてしまう。


 目の前のノワールにすべての意識を向けているために気付かない。


「俺はお前を殺したいほど憎んでいる。貴様は俺から奪った。俺から大切なものを奪う奴はすべて、敵だ」


「奪う?ああ、もしかして、まだ、あの時のことを憎んでいるのかな?」


「憎まないわけがない。貴様は一度、俺から奪った」


「全く、あれはキミのためになると思ってやったんだけど、どうやら感情を与えることになってしまったようだ。ああ、本当に面倒なことをしてしまった。でも」


 ニタァとノワールの目はキリノ、来栖、ノノアに向けられた。


「今度、大事な連中をボクが殺したら、キミは今度こそ、ボクだけをみることになりそうだねぇ?それはそれで楽しいよ。とても嬉しい。そして、よりキミがボクを愛してくれるんだと思うと、とても嬉しい」


 恋する乙女のような表情になったノワールは息を吐いた。


「今日は帰るよ。天子がみたかっただけだし」


「逃がすと思うか?」


「残念だが、諦めた方がいい。まもなく突撃部隊がやってくる。そうなったら色々と面倒だろう?今のキミの素顔を見られることも」


「チッ」


「すぐにまた会えるさ。何せボクとキミは赤い、紅い血の糸で結ばれているんだからさぁ」


 ゾクッと来栖達が震えている姿に気付きながらノワールは窓を突き破って出ていく。


「あー、一応、聞くけれど。追いかけるべき?」


「やめておけ、命を捨てるだけだ。奴は笑いながら手にかけるぞ」


「だよなぁ、あー、生きていることが素晴らしいってシミジミ思うよ」


「同意見~~。もう、あんな化け物に遭遇したくない」


「無事でよかった」


 来栖とノノアに夜明は言う。


 ポカンとした表情で二人は見る。


「お兄さんも変わったね」


「まあ、嬉しくはあるよな?」


「……なんだよ。それ」


 夜明は何とも言えない表情で二人を見ていた。


 笑っている二人の姿に納得いかないながらも夜明は肩をすくめる。


「(ノワール)」


 仲間達の姿を見ながら夜明は彼女のことを考える。


 かつて、自分を鍛えてくれた師匠。だが、自分に絶望を教え込み、敵として今は立ち向かう。


 どうなるかはわからない、だが、倒す。



――あいつらを殺したことを俺は絶対に許さない。






















 しばらくして警察などの特殊部隊が突入して残っていたテロ集団、人質にされていた学生達は確保された。


 この時、夜明たちは知らなかった。


 世界各国に世界を守っている英雄達がある放送をしたことを。


 放送が新たな厄介ごとを夜明に運んでくることなど。


 夜明は夢にも思っていなかった。





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