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壊れている救世主は少女達を救う  作者: 剣流星
第六章:逆恨みの追跡者―SilverSnake―
58/81

58.感情の中身

 金城秋人の剣を雷切で受け止めながら蛇女に拳銃を向けた。


 牽制で発砲しているから蛇女がすぐに飛びかかることは少ない。


 驚いている二人を他所に俺は溜息を吐きたい衝動に駆られる。


 本当にどうしてこうなったのか。


 半壊しているスーパーの中で溜息を零す。


 時間はほんの一時間前に遡る。


 俺とスカイウォーカー、吹雪は囲むようにして武器喰いと話をしていた。


「プロジェクト・ホワイトの完遂とはどういうことだ?計画は失敗している筈だ」


「いいや、違う。計画はまだ続いているさ。ただスポンサーが米国ではなくなった断罪の光という組織に変わっただけでね」


「どういうことだ!?」


 拳銃を構えたままスカイウォーカーが叫ぶ。


 俺も疑問が浮かぶ。


 データが確かなら計画の全てが失敗している。


 それなのに、計画完遂?


 疑問が頭の中に浮かんで消えない。


「プロジェクト・ホワイトは超人を人工的に生み出す計画だと聴いているが違うのか?」


 にたぁと武器喰いは笑みを浮かべる。


 いつでも斬りかかれるようにしながら俺は再度、問いかけた。


「この計画に何か裏があるのか?」


「やはり、キミは興味深い」


 鋭い視線が俺へ向けられる。


 吹雪が心配そうにちらっとこちらをみていた。


 今にも撃ちそうなスカイウォーカーへ待つよういいながら俺は再度、聴く。


「無駄な時間を使うつもりはない。ここで話さないのなら確保させてもらう」


「そうだな。我々も無駄な時間を使いたくない。本題に入ろうか。まず、キミ達の疑問であるプロジェクト・ホワイト、彼の提示した人工超人作成についてだけれど、あれはフェイクだよ。本来の目的は最強の魔物……人工的に女王を生み出す事だ」


「なん……だと?」


 スカイウォーカーが息を飲み、俺は自然と。


「おいおい、話の途中で殺気を放つなんてやめてくれよ。手を出しそうになってしまう」


「すまない……吹雪、武器を下ろせ」


 指示によって条件反射で手を上げようとしていた武器喰いへ黒月を構えていた吹雪はゆっくりと下す。


 俺が攻撃されるということで自動迎撃モードに入ろうとしていた。


「女王を生み出すといったな?宮本不知火は魔物の誕生を知っているのか?」


 スカイウォーカーが訊ねる。


 もし、魔物を生み出す術をあの男が掴んだというのならその逆、


「そこは知らないさ。私が聞いたのはあの男の目的と過程のみ。根本の部分ははっきりいって知らない」


「目的と過程といったな。目的は女王を生み出す事……過程とはなんだ?」


「知らない」


「……話をする気があるのか?」


 スカイウォーカーが拳銃のトリガーへ指を這わせる。


 いつでも頭を撃てるようにしていた。


「ブラックボックスなんだよ。彼の研究というものは、かくいう、この私も気づいたらこんな力を手にしたのだ。無理もないだろう?さて、もう一度言うが奴の目的は魔物の上位、女王を生み出す事だ。わかっていると思うが女王は七体、キミが既に二体潰していることから残り五体。あの男は全ての女王が消える前に人工的に女王を生み出そうとしている。あの蛇女は女王になる為のピースだよ」


「どうして、蛇女が?」


「簡単だ。あれが計画の中の数少ない成功例だから、生き残りの中かなりの確率で女王へ至れるからさ」


 きっと、俺は顔を顰めているだろう。


 全ての魔物を滅ぼす。


 そのために生きてきた俺にとってさらなる女王の誕生というものは見過ごせるものではない。


 全力で阻む。


 それを奴は望んでいる。


「お前の話は分かった。それで?何を望む」


「さっきもいっただろう?女王の誕生を良しとしないだけさ。なによりあの出来損ないがいたろうとすることが許せない」


「個人的な私怨か」


「キミも変わらないだろう?救世主といわれても所詮は復讐鬼、私と大差などない」


「夜明さんを侮辱するな!」


 吹雪が黒月を握る力を込めた。


「やめろ、吹雪」


「でも!」


「話はそれだけなら、貴様を捕縛する」


「捕縛している時間はないかもよ?」


「……なんだと?」


 武器喰いの言葉で俺達は動きを止める。


 今の物言いにひっかかるものがあった。


 俺は雷切をひっこめる。


「説明しろ。お前を捕縛していると時間がないというのはどういうことだ?」


「蛇女は銀髪の姫君の所にいる……今頃、あの女は食われているんじゃないかなぁ」


 武器喰いの言葉を最後まで聞かずに走る。


 水崎姫香の危機。


 それを聴いた途端、どうしょうもない不安と怒りに支配されて走り出す。


「夜明、さん!」


 呼び止める声を聞かずに走る。


 走りながら黒土へ連絡を取った。


『やぁ、そちらの状況はどうかな?』


「話は後だ。水崎姫香の居場所を教えろ」


『いきなりだね?ストーカーかい?歪んだ愛情は流石に』


「時間が惜しい!早くしろ!!」


『……今、キミがいる場所から二キロくらい離れた所にあるスーパーだね』


「わかった」


『コズミックさんが調べた所、あの蛇女について、面白いことが分かったんだけど』


 通話を切ろうとしたところで黒土が声をかける。


「急いでいる」


『まぁ、そうだろうね。でも、これは伝えておいた方がいいかもね?君を狙っている蛇女の正体を、さ』












 そして、現在。


 俺は素顔を隠して雷切で金城秋人のカリバーンを受け止めて、蛇女に拳銃を向けている。


 どちらかが動けばこの均衡はすぐに崩れ去る。


 金城秋人は俺が現れたことにひどく驚いていた。


「キミは……」


「下がっていろ」


 時間がなくてボイスチェンジャーを使う暇がなくて低い声を意識して喋る。


 雷切でカリバーン事押し戻す。


 少しのけ反りながらも金城は鋭い眼で後ろの蛇女を睨んでいた。


――それにしても。


 俺は仮面越しに蛇女を見る。


 どういう意図があるのか。蛇女はほとんど俺の顔をしていた。


 違いがあるとすれば腰まで届く白髪ということと黄色い瞳。


 上半身に胸のふくらみがない、そもそも人としての原型は顔しか保てていない。


 いや、顔も偽装だから違うか。


 どうでもいいことを思いながら俺は拳銃を向ける。


 雷切は金城秋人の方へ構えたままだ。


「おい、これは僕らの問題だ」


「……問題?」


「そうだ。あれはクラスメイトの宮本夜明だ!アイツは姫香を殺そうとした。なんであんなことをしたのか問い詰める必要がある……そこを退くんだ」


「足手まといだ。下がっていろ」


 ぺちゃくちゃと喋る金城へ刃を向けたまま冷たい声で言い放つ。


「だから!」


「危ない!」


 水崎姫香の叫びと同時に手の中の拳銃が火を噴く。


 しかし、放たれた弾丸が壁にめり込む。


 相手は金城めがけて迫っていた。


 目の前の奴を蹴り飛ばして振り返る。


 視界に広がる銀色の尾。


 衝撃と痛みが体を襲う。


 左目が赤く染まった。


 仮面が砕かれたと気づいたのはその直後だ。


「カヒュッ」


 次に起こった衝撃で体が壁へ叩きつけられたと理解する。


 体に痛みを感じながらもすぐに動く。


 少し遅れて蛇が口を開けて壁にめり込む。


「超人っていうのはあながち間違いじゃないわけか」


 地面を転がりながら体を起こす。


 プロジェクト・ホワイトによって肉体を強化されているみたいだが変身能力も上昇していると見たほうがいい。


「面倒だ」


 悪態をつきながら雷切を抜く。


「どうした……俺はまだ生きているぞ?」


 挑発を受けた蛇は地面を這うように動いて迫る。


 既に人としての原形を保っていない。その姿を見る限り、この言葉が一番適しているだろう。


「ほら、かかってこい。“怪物”」


 その一言が起爆剤となったのだろう。


 蛇は俺へ迫る。


 正面からぶつかりあう相手に対して上段から雷切を振り下ろす。


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 頭を勝ち割るつもりだったが失敗した。


 その原因から横から割り込んできた金城秋人の一撃。


 横腹に金色の剣が突き刺さり悲鳴を上げている。


 睨むが相手は気づいていない。


 のたうち回っていた蛇から人へ戻る。


「ゆる……さない」


 血走った黄色い瞳がこちらを睨んでいた。


 白衣と同じくらいの白髪は血や泥で汚れており、整った顔は憎悪で歪んでおり美しさの欠片もない。


 そんな女性を俺は冷めた目でみていた。


「貴様を、絶対に許さない」


「黙れよ」


 近づいて女性の顔を蹴り飛ばす。


 殴られた時に口の中を切ったのだろう、血が地面へ落ちていく。


 後ろで水崎姫香が息を飲み、金城秋人が叫ぶ。


「お前、何を」


「お前達も黙っていろ、これは家族の問題だ」


「家族?」


「クラスメイト同士の問題に口を挟んでほしくないのなら、家族同士ならなおさら、口を挟む権利はないよなぁ?」


 仮面越しに金城秋人へ伝えながら倒れて動かない女性を見る。


 疲労か能力の代償か動きが鈍っているようで体をぴくりとも動かさない、しかし、射殺すような視線は健在だ。


「許さない」


「それしかいえないのか?…………それにしても、アンタが生きていたことに驚きだよ。なぁ?」


 覗きこむように相手の顔を見る。


 今の俺は笑っているだろう。


 立場が逆転しているんだ。笑わずにいられない。


 そして、目の前の女は屈辱で顔を歪めている。


 囁くように話した。


「姉さん?」


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