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壊れている救世主は少女達を救う  作者: 剣流星
第五章:崩壊する境界線―TheBlackChivalry―
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47.瞬く間の処理

 ガラスを砕いて地面へ降り立った俺はゴーグル越しに白衣の男女を睨む。


 乱入者である俺の姿に彼らは驚きの表情を浮かべていた。


 似ている。


 あの施設で姿を見せた奴と似通っていた。


 違いがあるとすれば言葉を発する事と理性があること、加えてさほど脅威を感じないという所だろう。


 ともかく、俺の敵だ。


 表面は冷静だった、けれど、心の中はマグマのような怒りが燃え上がっている。

もし、俺が間に合わなかったら水崎姫香の命はなかった。


 俺から奪おうとした。


 ドロドロした怒りは止まることを知らない。


 けれど、抑えなければならない。


 俺は呼吸を整えるように小さな息を吐く。


 目の前の二人へ腰にある刀を抜いた。


「敵対行動…我々の敵か」


「そうだ」


 白衣の男の言葉を肯定する。


「俺はお前達の敵だ。断罪の光、お前達を倒すために存在している」


 剣先を向けて宣言する。


 俺はお前達の敵だと。


 倒すために此処にいるのだ。


 殺意を込めて相手を睨む。


 一瞬で俺は白衣の男と間合いを詰める。


「なっ!?」


 驚きの声は女のものか、英雄たちの誰か。


 繰り出された拳と刀がぶつかる。


 衝撃で近くの椅子がはじけ飛ぶ。


 本来なら血まみれになる拳は刃を受けても傷一つない。


 “普通の人間”ではないという証拠だ。


 振り上げた刀を押し戻して距離を詰める。


 待っていたとばかりに男の蹴りが繰り出された。


 放たれた蹴りの上に自分の足をのせてにやりと笑みを浮かべる。


 相手は危機感を覚えて下がろうとするが遅い。


 刀に纏った雷撃、超電磁砲を近距離で放つ。


 咄嗟に両手でガードをとったようだが光線を止めることはできず建物の外へ放り出される。


 外へ飛び出した男性への道を阻むように女性が前へ立つ。


「お前の姿」


 一切の油断を見せず、鋭い視線をこちらへ向ける。


「クワルトの報告にあった危険な力を使うホルダーか」


「…だったら?」


「ここにいる英雄よりも貴方が危険と判断する」


 女性の背中から白い翼が生える。


「断罪の光に仕える使徒、ノーノが相手をします」


 手の中に純白の杖を取り出す。


 彼女の周囲にバチバチと雷の球体が現れる。


「貴方の名前は?」


「教える必要があるのか?」


「私が倒す相手の名前です。覚えてあげるのが慈悲でしょう」


「だったら――」


 女性、ノーノは慌てて振り返る。


 後ろの壁を砕いて巨大な黒剣が迫った。


 急所を狙った攻撃をギリギリのところで躱す。


 苦痛に顔を歪めながらノーノは振り返る。


「名乗ることで、相手を殺すという宣言になるのなら…この雪が貴方を“殺し”ます」


 砕けた壁から現れたのは黒一色の雪。


 纏っているコートもズボンすら黒。


 顔を覆うバイザーも黒で表情が見えない。


 唯一、露出している口元は好戦的な笑みを浮かべていた。


 地面に突き刺さっている大剣を引き抜いて雪はノーノを殺すと宣言する。


 その二人の横を俺は通り過ぎる。


「任せるぞ」


「はい、始末しておきます」


 雪と短い会話を終わらせて外へ出る。


 先ほどの一撃を受けた男性は少し体に響いているのか起き上がるのに時間がかかっている。


「懺悔の時間は終わったか?」


 あぁ、面倒だ。


 こんなことをいわないといけないなんて、本当に面倒だ。


 ゴーグルの奥で目を細めながら目の前の男性を見る。


 そういえば、コイツの名前はなんなのだろう?


 雷切を握りなおして相手の事を考える。


――使徒という敵を倒す。


 その為に今は此処にいる。


「俺は貴様を殺す。そうすることが世界の救済になるというのなら、俺は、使徒たるオイ――」


 それが奴の最後の言葉となった。


 俺が雷切を繰り出すのと潜んでいた“仲間”のレイピアによって体を貫かれる。


「ぐっ、ふ、不意打ちと」


「殺し合いに卑怯も何もないんだよ」


「注意を怠った貴様のミスだ」


 さらに刃を深く突き立てて命を断つ。


 命を奪われた男性の体は灰となって消滅する。


「遺体は残らないんだね~」


「調べられたらマズイということだろう」


「それにしても、驚いたよ。いきなり飛び込んでいったと思ったら敵さんが出てくるんだもん」


「事前に打ち合わせしていなかったから、不測の事態だ。だが、対処できるだろう?」


「まー、仕方ないね。どうやらあっちも終わるみたいだ」


 派手な音と共に飛び出してくるノーノと雪。


 背中の翼は無惨にも引きちぎられており無表情だったノーノ、顔に浮かんでいる感情は「恐怖」だ。


 壁から出てくるのは大剣と手にしている雪と手斧を持っている嵐。


 雪の手の中にあるのは千切られた翼。


 僅かに血が出ていることから背中から無理やり奪われたのだろう。


 逃げることに必死なノーノに先ほどまでの威厳は欠片もない。


「雪」


 ゆっくりしている彼女へ声をかける。


「俺がやる」


「ですが…」


「このままだと逃げられる。さっさと処理しよう」


「はい…でも、それなら雪が」


「待て!」


 後ろから声をかけられる。


 声の主が誰かはわかる。


 続いてかけられる言葉も予想できた。


「お前達、何をするつもりだ!」


 声を無視して走る。


 ノーノが小さな悲鳴を漏らす。


 敵対するならもっと強い意思を持つべきだったな。


 冷めた目で相手を睨み、一閃。


「や、やめろ!」


 悲鳴を漏らすことなく相手の命を刈り取る。


 恐怖に染まったまま、ノーノは逝った。


 灰となって使徒は消滅する。


 ブンと雷切を一振り。


 刃に血痕は残っていない。


 普通に死なないのか。


 灰となった使徒の果てを見て目を細める。


「貴方達!!」


 会場の外へやってきた金城達、英雄がやってきた。


 彼らの管理官らしき女性が大きな声で駆け寄ってくる。


 あの様子からして連絡はまだいっていないようだ。


 どうするか。


 管理官の女性が口を開こうとした時。


「やぁ、ご苦労」


 手を叩いて黒土がやってきた。


 俺が何かを言おうとした時、管理官が驚きの声を漏らす。


「貴方…なんで」


「おやおや、君塚管理官、お久しぶりですねぇ。私の担当するホルダー達の実力は見ていただけたようですね」


「貴方の…ホルダー?」


「えぇ」


 メガネをくぃっと押し戻しながら黒土は伝える。


















「私の管理する使徒対策ホルダー部隊です。まだ、名前はありませんけどね」




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