第8話『始まりの洞窟』
俺とアネハはステータスに関して色々と話し合った結果、取り合えずこのまま〈始まりの洞窟〉に行く事になった。
ステータスが具体的にどれ位戦闘において重要になるかがまだよく分からっておらず、もしかしたらステータスやシステムスキル(ステップやスラッシュなど)よりも、プレイヤースキル(反射神経や第六感)の方が大切である可能性も存在しているので、今から初戦闘 兼 検証というわけだ。
南門を抜け五分位程舗装された道(アスファルトや石ではなく平らにならされた土だけど)を歩くと、大きな窪みのある青黒い色をした岩が見えてきた。
岩に近づいて窪みを覗いてみると、どうやらだの窪みではく、ゴツゴツとした岩肌の暗路がどこまでも続いていた。
「どうやらここが目的地みたいだな」
「目的地って……、此処がか?」
俺は入口から約15メートルまでの場所が薄暗く、それより先は岩の凹凸すら見えない程真っ暗な洞窟の道を指さす。
「洞窟だから仕方がないもののさ、俺にはどう見てもコレが〈始まりの洞窟〉には見えねぇよ……」
「同感だ。普通こういったダンジョンって『なんか不思議なパワー!』で明るく無いのかよ、テンプレは何処行った」
「痒い所にでも行ったんじゃね?」
「アホ抜かせ」
俺のボケに突っ込みを入れながら、「それにしても……」とアネハが呟いた。
「どうりで人が少ない訳だ。こんな場所に好き好んで行く奴なんてそうそう居ないな。」
確かに。
〈始まりの平原〉や〈始まりの草原〉は人でごった返しているのはそれが理由だったのか。
俺はそう心の中で納得しながら、まるで漫画やアニメの様に俺の頭の上に自分の頭を乗せて、洞窟を覗き見ているアナハに質問をする。
「で、どうする?」
「どうするって……なんか案あるのかよクロ?」
「いや、案ってほどでもないんだけどさ、一端街に帰って松明とか燭台とか探してきた方が良いんじゃないか?」
恐らくだがこのまま洞窟の中に入れば、行き先はおろか足元すらきちんと認識できずにモンスターになぶられる可能性がとても高い。というか絶対にそうなるだろう。
俺もアネハもそれを理解していたのだが………
「あーー、クロ。ちょっといいか?」
「なんだよ」
「やっぱりこのままで行かないか?」
「……はぁ?」
俺は未だに俺の頭の上に乗っているアネハの頭を、払いながらアネハの顔を覗きみる。
「どうした、気でもふれたか?」
「考えたんだけどさ、今此処に人が少ないのは火が手元に無いって事で皆街に帰ったからだよな?」
「……多分だけどな」
「じゃあさ、もうそろそろ、それこそ10分もしない内に此処に帰ってくるプレイヤーもいるんじゃないか?」
「あ」
俺はアネハの言葉で、いつまでも此処が俺達の独占状態になるわけではない事に思い至る。
しかるべき装備やアイテムを揃えたプレイヤーが来れば、すぐにでもモンスターを駆逐されることだろう。
「それにさ」
「それに?」
「俺達に……いや、俺には有るじゃねえか『コレが』」
そう言ってアネハは俺の目の前に手のひらを差し出す。いや、正確にはその手のひらの上でゆらゆらと動く『火』を。
「『コイツ』がさ」